第11話 血に狂う蟲毒の晩餐会 5
「【
しばらく柱に弾かれまくって、ようやくピンボール状態が終わった。マーク2は僕の初見の攻撃や予測不能な不可思議な動きを警戒したのか息をひそめて様子見をしていた。
なので「黒い霧は闇魔法の適性があれば効かないんじゃないの?」という予想の確認のためにスケルトンに変身した。
ちなみにピンボールやり続けてブットビの経験値を貯めるのは時間がかかりそうで飽きたのですぐにやめた。一つ星は経験値少ないからサックリと上がるけどそれ以降って魔石手に入らないと上げるのどんどんダルくなるんだよね。
さて検証の結果は?
「見える、見えるぞ」
黒い霧の中なのに視界バッチリ。マーク2の姿も見え――さっきまで見えていたんだけど見えなくなった。
気が付いたら柱に体を半分埋めていた。
とほほ、一つ星スケルトンではマーク2の動きにはついていけなかったよ。
ポトリ――と何かが落ちた。トゲにでも刺さって腰のポーチに穴が開いたようだ。転がり落ちるソレを見た瞬間に直感が告げる。これは残さないといけないと。変身が解けたらスケルトンの持ち物は消えるから。ソレだけはいったん持ち物から外さないと、と。
「【魂の同調:モンコモ】」
ゴーストに戻ってすぐに変身。残されたソレを足で掴むと魔力を込めた。
ソレは緊急時に使うようにと持たされた爆弾。魔力を込めたらあとは何かに当てれば起爆する。
こいつの破壊力だったらマーク2を倒せるんじゃないか?
そんな希望をもって攻撃してきたマーク2の足元へと爆弾を転がす。
「【魂の同調:ブットビ】」
光が世界を満たす。近くにいた僕自身も爆発のダメージを受けた。甲羅に籠ってもダメだったようだ。ゴーストの姿に戻っている。
「【魂の同調:モンコモ】」
すぐにコウモリの姿に戻り周囲を確認。
「霧が晴れてる!? マーク2はどうなった。ブットビをやったくらいだし流石に……」
爆風で吹き飛ばせたのか黒い霧は無くなっていた。マーク2の立ち姿。鎧は所々破壊され、兜は完全に消し飛んでいるが、まだ生きている。首の【魔封剣】の光は残り、まだ魔法の封印は継続中だ。
左手の防具は無くなり、右手の鉄球はまだ残っている。
鉄球が飛んでくる。
「【ストーンスピア】」
槍を鉄球にぶつけようとする。マーク2が左手で鎖を掴むと鉄球の動きを変える。
槍はそのまま地面に刺さった。
鎧は一部なくなったけど【ストーンスピア】ではマーク2の皮膚に刺さらなかった。でも、本当に【ストーンスピア】ではダメなのだろうか?
「【土壁】」
一ブロックだけのレンガで鉄球を受け止める。こうして【土壁】でレンガを生み出せるし、壁のはずなのに魔力を調整すれば空中にブロック一つだけを存在させる事も出来る。【岩石の鎧】もとても岩石とは呼べない軽くて丈夫な謎の青い金属で作れている。だったら【ストーンスピア】の素材や形だって変化させられるんじゃないかな?
「【ストーンスピア】」
出来た。銀色に輝くシンプルな槍にトライデント、ハルバート、青龍偃月刀など、スピアと言っているのに槍ではなく日本刀や斧、鎌にメイスにゴールデンなハンマー、草刈り機に付けそうな丸いノコギリなど試せるだけ色々と作ってみた二十四種の武器たち。盾を作ろうとしたら不可能だったし、木や動物の皮などは使えずすべてが金属で作られている以外は武器ならば自由に作れた。やれば出来るもんだ。ブットビとの戦いの時もこれを試していたらもっと楽に勝てたんじゃないか?
トライデントで鉄球の伸びた鎖を狙い、縫い留める。これで鉄球を使えなくすると同時にマーク2の動きを制限できるはず。トライデントと同時に別の武器は動けなくなったマーク2本体を狙う。
マーク2は鎖を消し去りすぐに状況の改善を図った。【魔封剣】の効果で魔法を使えないので右手に新しい鉄球を出すことは出来ないし、今ある鉄球との間に新しく鎖を繋ぐ事も出来ないはず。
あれ、でも魔法を封印した後でも鎖は伸び縮みしていたよな。だったら無限に鎖を出せる効果のある鎧なのかも?
そんなことを思っていると右手からジャラジャラと鎖が伸びて僕の武器たちがからめ取られていく。
そうは行くかとノコギリの刃を回転。鎖を切り裂き武器を解放。
さらに接近する武器を左手や蹴りで撃ち落とし砕いていく。
そんな防御の隙間を縫って日本刀がマーク2の頬をかすった。頬に赤いラインと流れる血。
やった、マーク2の皮膚を切る事が出来たぞ。もっと中心に攻撃を当てられたらダメージにも繋がるだろう。
さらにメイスが脇に当たる。そして鎧が壊れた。鎧にも効果を確認。
マーク2が防御をしながら鎖をムチのように使う。
僕に来る鎖、避けるとその鎖は動きを変えて落ちていた鉄球をはじいた。鉄球が柱にぶつかって反射、背後から僕を狙う。
「【ビックシールド】」
今までと違って軌道を変えないのならそんなに怖くない。
「【ストーンスピア】」
丸いノコギリは鎖を切れていたし殴ったり蹴ろうとしてもマーク2を傷付けられるだろう。そして――
「【毒の刃】」
これで傷付けた相手に毒を与えられる。それなら擦り傷でも致命傷へと変化させられるかもしれない。
毒々しい紫色のオーラに包まれたノコギリが飛んでいく。
これってアレだな、七つの玉を集めて神の龍に願いを叶えてもらうバトル漫画の仲間の技に似ている。そう気●斬だ。
狙い通りにノコギリが鎖をバラバラにする。もうちょっとでマーク2に当たる、と思ったその時
――ドックン――ドックン――
血ガ欲シイ
魔法の使い過ぎで魔力が切れかけている。このままではヤバイ。
血を望む感情に意識を奪われていく前に変身だ。
「【魂の、同、調:岩マ、ムシ】」
変身したら苦しみから解放された。困ったな、魔力が戻るまでモンコモになっても血を求める状態だぞ。
この攻撃で決めないと、本当に後がない。
「ンムォ~」
首が飛び、腕が飛び、胴は裂け落ち、切れた足だけ立っている。十六分割されたマーク2の姿がそこにあった。さすがにここまでになったら生きてはいないだろう。
お、二つ星だった岩マムシが四つ星になったぞ。まさか一つとばしてレベルアップするとは、トドメだけ刺して経験値総取りしたのかな?
強敵だったし、倒したことでかなりの経験値になったのか。
「あとは魔力回復しとくか。【魂の同調:モンコモ】」
マーク2の体から血を吸いながら魔石も回収。
僕とマーク2の戦いの影響で他のモンスターはもういない。なのでゆっくりと血を飲んでいても大丈夫だ。
残念なのはマーク2の黒い球体によって吸い込まれた魔石はもう手に入らないという事。
魔石を手に入れたことでマーク2――本当の名前は【
【カオスゲート】はアイテムをしまったり出したりできる魔法だけど、マーク2と僕は別人なのでマーク2がしまった物を取り出せるのはマーク2だけだ。そしてマーク2が死んでもアイテムが外に出る事は無かった。
あれだけ大量にいたモンスターだけど、その一割くらいの魔石しか手に入らなかった。残念なことだ。
「【カオスゲート】」
また今回みたいなモンスター大集合からの大乱闘がおきないように残ったモンスターの体や地面に落ちた血を全部回収。あとで酸ゼリーが回復したら全部溶かしてしまおう。
持っている他の魔法も確認しておこう。
【魔剣所持】――武器の形や能力を設定できる。一度設定したら設定を変更するまでその武器しか出せなくなる。設定を変更すると変更前の武器を出すことは出来ない。同じ武器を同時に複数出すことも出来る。
これがたぶん金棒を出していた能力だな。別に剣でなくてもいいみたいだ。
【闇の羽衣】――防具の形や能力を設定できる。以下略
これは【魔剣所持】の防具バージョンで能力は大体同じだった。マーク2の鎧を出していた能力だ。
【闇の霧】――感覚を狂わせる黒い霧を出す魔法。闇魔法の適性がある者には効果を及ぼさない。
闇魔法の適性があれば大丈夫なのは使用者が影響を受けないためか?
【伸びる刃】――体や武器に纏わした魔力を衝撃波として飛ばす無属性の魔法だ。魔力を武器に纏わせるのは人間の時から特に詠唱もなくやっていたから魔法ってイメージは無かったけどあれも無属性魔法だったのかな? そしてこの魔法も無詠唱でやれるようだ。
能力値は星なしで五つ星ニードルウルフと同じか少し上かな? これが五つ星モンスターになったらどんな強さになるんだろうか。育てるのが楽しみだ。
【カオスゲート】で回収したモンスターから魔石だけを取り出す。
手の中の魔石を回収していく。しかし回収できなかった魔石がある。
「あ、ニードルウルフは五つ星になったから回収できないのか」
レベルが最大までいったモンスターの魔石はもう回収出来ない。
「これ勿体ないよな、それに今は五つ星が二体いるし、同じくらいの強さの牛魔人もいる。だったらやってみるか、融合」
融合してニードルウルフとモンコモがいなくなればこの二体の魔石をまた回収出来るようになる。
このダンジョンでわりとたくさん遭遇出来るモンスターの魔石を無駄にしたらもったいないし、融合して変なモンスターになっても、またすぐに五つ星のニードルウルフ達を作ることが出来るだろう。リカバリー可能ならお試しにはもってこいだ。
ボックスを開き融合を開始する。
さて、いったいどんなモンスターになるだろうか。
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