第4話 もらった能力を確認だ 3

 透明化や壁抜けが出来るのは僕だけ。持っている物はその対象に選べない。それに戦場を行くとニードルウルフへのモンコモの超音波攻撃を僕も受けてしまう。

 だから爆弾を安全に戦闘の中心まで運ぶのは難しい。


「【落とし穴】」


 そんなわけで僕が選んだのは【超音波】の攻撃が届かない土の中を行く方法。

 荷物を置いてあった場所まで戻り爆弾を一つ回収。それから縦穴を浮き上がりさっきの戦場の上の土を掘り進んでいくわけだ。【落とし穴】の魔法は土を消し去るわけではないので掘った分だけ自分の後ろの穴は塞がっていく。

 進んでいる時に背後から襲われる危険が無いので道を塞ぎながら進めるのは助かる。


「そろそろかな?」


 魔法【足音】でニードルウルフの反応はわかる。そこから少しだけ進んだ場所まで来てみた。

 ここで顔を出すと天井にぶら下がるモンコモの群れの中に出てしまう可能性がある。こんな時に使える魔法がある。


「【罠探知】」


 この魔法は壁や床、天井の異変を探る魔法だけど、それを利用することで天井にぶら下がるモンコモを探ることが出来る。

 足元に何かがある場所はモンコモが止まっているという事。何も反応がないところから透明化と壁抜けを使って顔を出す。

 うん、いい感じにモンスターが多い。ここで爆発させれば大量に巻き込めそうだ。

 戻って爆弾に魔力を込める。


「【落とし穴】」


 爆弾の足元に穴を開けると僕は透明化して浮上。

 爆発は魔法攻撃なので僕も巻き込まれたらやられてしまう。


「ふへ!?」


 飛び出した上の階で骸骨と目が合った。鎧を着て剣を持ち動く骸骨、スケルトンだ。

 スケルトンもこちらに気づき、剣を振り上げた。

 その時、振動とともに地面が割れた。爆弾が爆発したようだ。

 爆発した穴から数体のモンコモが飛び出した。爆発の範囲から逃れたやつもいたようだ。

 僕に興味は無いようでどこかに飛んでいく。僕も生きている奴に興味ないので死体を確認。爆発で戦場の床も破壊したようだ。二階分の落下をしたスケルトンも倒せたようで動かない。まずはスケルトンの魔石を回収。

 体に触れれば魔石を取れるようだ。そして魔石をとってもスケルトンの体はそのままそこに残っている。


「せっかくなので変身してみるか」


 ボックスを開いてスケルトンの魔石を移動。画面にはドット絵で描かれたスケルトンの姿。そのスケルトンをタッチして使用欄へと移動してセットする。


「【魂の同調ソウルシンクロン:スケルトン】」


 僕の姿がスケルトンに変わる。武器や防具はつけていない裸の骸骨だ。

 この状態でなにかしらの行動すれば経験値がたまっていくんだよな。

 とりあえず魔石回収作業をしていこう。


「【罠探知】」


 埋まっているモンコモを探す。発動したけど、人間だった頃より反応が弱い。


「魔法の発動が悪いな。スケルトンは魔法より物理系のモンスターって事なんだな」


 反応があった場所の瓦礫を持ってどける。スケルトンだと魔法で穴を開けるよりこの方が早そうだ。

 モンコモの一体目を発見、魔石の回収。使用欄にセット。


「【魂の同調:モンコモ】」


【超音波】は魔法攻撃だとするとこっちの方が魔法が得意なはずだ。


「【罠探知】」


 思った通りモンコモの方が反応がいい。でもゴーストよりは下だな。


「【落とし穴】」


 二体目を発見、ここで経験値を確認する。

 ボックスからモンコモを選択すると名前の下に黒い星があり下が少しだけ黄色くなっている。経験値は数字でなく星で表現されているようだ。体力や魔力を示すバーや体力や魔力なんかの数値もあるけど今は確認しなくていいや。

 二体目の魔石を回収しながらどれくらい増えるか確認。八分の一くらい増えたかな?

 探知した反応はまだいくつかある。回収を続けよう。


 ◇◇◇◇◇


「お、レベルアップだ」


 九体目を回収したとき、モンコモの星が満タンになりレベルがり、全部の能力が少し上がった。

 レベルが上がっても失われた魔力は回復していない。体力は試していないけどたぶん同じ結果だと思う。

【魂の同調】の能力を検索してもレベルアップで回復するなんて知識が出てこないのでそういう事なのだろう。


「血が欲しい」


 血を飲めば魔力が回復する。モンコモの本能がそう言っている。

 ボックスからモンコモの吸血の効果を確認してみても空腹と魔力、体力を回復するとなっているので間違いない。

 同族であるせいかモンコモの血は吸いたいと思わない。スケルトンも血が流れていないので興味を引かない。今の僕が欲しているのは……ニードルウルフの死体へと体が動く。

 ニードルウルフの所まで飛んでいく。毛の生えている部分は鋼なので危険だから毛のない部分から血を吸う。

 あ、おいしい。魔力が回復していくのを感じる。


「よく見たらこの辺にもモンコモの死体が落ちてんな」


 ニードルウルフがいた地点は爆発は端の方だったために地面は崩れたが天井は落ちてきていない。そのため掘り起こさなくても回収できるモンコモもそこらへんに倒れていた。


「レベルが上がると必要経験値は増えるんだな」


 回収した魔石で二つ目の星に色がついたがさっきより少ない。だいたいさっきの倍、二十体分の魔石で二つ目の星が満タンになった。二つ星になったらゴーストより魔法の適性が上がったようで【罠探知】の範囲も上がり【落とし穴】も同時に三カ所の穴を開けられるようになり、どんどん効率が上がっていく。




「やっと終わったか」


 ニードルウルフの嗅覚や【罠探知】にもう反応はない。

 途中からどのモンスターから魔石を回収したのかわからなくなったので死体を一カ所に集めていた。死体の山以外で未回収のものはなさそうだ。疲労から空腹を感じるので積まれたモンコモを食べる。これも大事な経験値だ。

 作業を続けた結果、モンコモは四つ星までレベルを上げた。あと一個でレベル最大になる。

 ニードルウルフも星一になった。経験値の増え具合を見るに魔石十個で星一つ。その後は必要な魔石が十個づつ増えていく仕組みのようだ。星が五つで十づづ増えて、最初の一個も必要だから魔石だけで最大のレベルを目指すとしたら百五十一個の魔石が必要になる計算だ。それ以外にモンコモで魔法を使ったり、血を吸ったり、飛んでいても少しづつ経験値は増えていたので、変身して活動しているだけで経験値を貯められるようだ。

 モンコモのレベルアップで魔法の適性が上がった事で新たな土魔法が使えるようになった。

 魔力で岩の槍を作り出して打ち出す魔法【ストーンスピア】だ。土魔法はモンコモだけでなくゴーストの状態でも使えた。だがスケルトンでは発動しなかったし、ニードルウルフの場合は魔力で岩を作り出せないが、その場にある岩の形を穂先に変えて打ち出す方法でなら魔法は発動した。

 土魔法に関してはどのモンスターで覚えても他のモンスターで使える。ただし魔法の適性によって発動する、しないの違いがある。これはもともと人間だった時の僕に土の適性があったことに関係しているのだろう。魂の魔法適正が土だからどんな姿でも魂は変わらないから使えるみたいなものかな。


 食事を終え、ニードルウルフの姿で隠した荷物の回収に向かう。

 モンコモはあと星一つで最大レベルだし、見かけたら積極的に狙っていきたい。ニードルウルフとモンコモを育てて融合させたら何が産まれるのか。それが今は楽しみだ。

 実際に使ってみて女神様からもらった【魂の同調】の力もある程度わかった気がする。これなら新しい生もなんとかやっていけそうだ。

 当面の目標は「人間の姿を手に入れる」こと。僕の三度目の人生はまだ始まったばかりだ。

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