第3話 もらった能力を確認だ 2

「そういえば、土魔法使えたな」


 僕の落ちてきた穴を上に浮かんでいく。壁に隠れながら落ちた周囲のモンスターを確認しようと思ったら荷物があると透明になれないということが発覚したので弱いモンスターの多い入り口付近を目指すことにした。

 そんな移動の最中に自分が魔法を仕えていたことに疑問を感じた。

 人間だったときの僕には土魔法の適性があり、【落とし穴】【土壁】【足音】【罠探知】の四つの魔法が使えた。

【落とし穴】は穴をあけ、【土壁】は土を盛り上げ、【足音】は土の振動を把握して移動中の動物を把握する、【罠探知】は地面や壁、天井の異変を感知して罠や隠し扉を見つける魔法だ。

 正直魔法の才能が無いので穴も壁も僕の膝下程度の高さしかなく、足音も百メートル先までで魔法使うより視認した方が早いレベル。たいして訓練していない僕の力では正直あんまり意味がない魔法だった。せいぜいキャンプ中のカマド作りに役立った程度。


「ゴーストが土魔法を使ったなんて話を聞いた事ないよな。人間だった時の魔法は使えると。変身後も使えるかを後で確認しよう」

「ウゥ~」


 犬がうなっているような声が聞こえた。

 穴はまだ上に続いているけど、近くにモンスターがいるなら見ときたい。チャンスがあれば魔石も手に入れたい。

 そんなわけで寄り道だ。


「【落とし穴】」


 縦穴の近くに穴をあけて荷物を入れる。


「【土壁】」


 上を塞いで荷物を隠す。


「【足音】」


 声が聞こえたという事は近くにいるはずだ。魔法で反応を探る。

 反応なければ少し移動してまた魔法を使えばいいだろう。


「人間の時より効果の範囲が広い!?」


 前は【足音】の範囲は半径百メートルの球体のように展開されていたが、今はそれが三百メートルくらいまで広がっている。ゴーストの方が人間より魔法適正が高いって事?

 そんなゲームな考えをするが使えるようになったのならまあいいか。前は持続時間は一分程度だったけどそっちも伸びていそうだ。


「お、これか?」


 斜め上に反応あり。十六? いや動きの感じ的に四足歩行ぽいから八かな?


「犬のような鳴き声に四足歩行。このダンジョンだとニードルウルフ?」


 毛が鋼のように固い狼で群れで行動する。爪にかみつき、あと体毛を利用した体当たり攻撃をしてくる。


「そうだったら物理攻撃しかないから僕には無害な相手だ」


 相手の位置もわかったので透明になってこっそり見に行こう。


「こっちも倒せるだけの決め手はないんだけどね」


 ゴーストの攻撃方法は石を浮かべて投げるもの。鋼の体毛ではダメージは無いだろう。眠らせても何の意味もないし。


「てわけで様子見でーす」


 顔だけを地面から出す。

 ニードルウルフは戦闘中だった。相手は蝙蝠だ。


「モンコモと戦闘中か」


 モンスターコウモリ、略してモンコモ。【超音波】で平衡感覚を狂わせて気絶させて相手の血を吸うやつだ。

 ゴーストにはもちろん血は流れていないし、吸血行為は物理攻撃だから僕には効かない。


「モンコモじゃ飛んでいるから足音には反応ないもんな」


 地面を動いていない者の反応は【足音】では把握できない。それでニードルウルフが動いていることしかわからなかった。


「それにしても数が――」


 天井に大量のモンコモがぶら下がり、飛んだりしている。百匹いるんではなかろうか。

 数を見るにニードルウルフがモンコモの縄張りに入り込んでしまって戦闘になったのかな?


「視界がクラクラする。超音波は魔法系の攻撃だったのか」


 たまらず地面に潜る。下の階でしばらく休憩していると正常に戻ってきた。

【超音波】は僕にも効く。でも地面は貫通しないようだ、頭上ではまだ戦闘が続いているようだけどここにいてもクラクラする感覚はない。


「モンコモを倒せば魔石奪い放題なんだけどな……」


 さっきから【足音】で地面に何か落ちるような反応が伝わってくる。モンコモが何体かやられている。

 ニードルウルフの方も動きが鈍くなっている個体がある。

 数の多さを考えるとモンコモの方が勝ちそうだ。ここが彼らの巣だとするとどこかに行くこともないだろう。こっちが魔石をあさっている間に【超音波】で妨害されたら嫌だ。それに――。


「あれだけの数のモンコモを倒せば大量の経験値を手に入れられるんじゃないか?」


 同じモンスターは複数体持てないので同じ魔石は経験値として一体に集まっていく。百体以上いたらどれだけの経験値となるだろうか。


「いっきに範囲で巻き込むと言えばやっぱ爆発よな」


 爆弾を使うとして、効果を最大にするには戦闘の中心にこれを落としたい。さてどうやろうか。

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