第2話 もらった能力を確認だ
意識を取り戻したら洞窟の中だった。頭上には巨大な穴、ゴーストになったおかげで光源がないのにそれなりに周囲が見える。それなのに真っ暗で穴の先は見えない。結構な高さがありそうだ。
道は片方が崩落で塞がっていて、その岩に半分潰された服と血溜まりが見える。見慣れた服や剣、これはたぶん僕だ。死体を魔石にするって女神様が言っていたので、それで死体はなく、装備していたものだけが落ちているのだろう。
女神様に聞かされていたのと死体が無いのと僕自身がここに存在していることから死んだことに対するショックはそんなに無いようだ。少し心にしこりがあるような気がするだけ。
気分を切り替えよう、さてこれからどうしようかな。前の道は塞がっているので後ろにしか道はないように思えるけど、ゴーストな今なら壁抜けも出来るので道はあってないようなものだ。落ちてきた穴を上に浮かんでいくという方法もある。
「とりあえず女神様にもらった【
思った瞬間に知識が湧き出してくる。
「えっと、【魂の同調】は選択した魔石のモンスターに変身する能力で」
いっきにあふれ出てきた知識を言葉にしていくことで頭を整理する。
「変身すればそのモンスターと同等の能力となりそのモンスターの魔法とか特殊能力も使えると。ただし変身を解くと能力はゴーストのものに戻る。変身は自分の意志で解除できるし、一定のダメージを受けて体力ゲージがゼロになっても解除されると」
なんかゲームでもやっているみたいだ。
「体力がゼロになると完全に回復するまではそのモンスターには変身できない。変身して活動していると経験値がたまって能力が上がる、つまりレベルアップって事か。本当にゲームだな」
女神様が僕の感覚に合わせて能力を設定してくれたのかな?
「レベルは五段階で最大まで成長したモンスター同士を融合させてより強いモンスターの魔石に変化させる事も可能。同じモンスターの魔石を集める事でも経験値はたまっていく」
融合には二体から六体まで数を選ぶことが出来るようだ。身体能力は全部を足して半分にした数値、魔法とかは引継ぎらしい。
「あとは自分の魔石の中に他の魔石を保存しておくボックス能力。ボックスに入れると自動で封印状態になり、使いたい魔石は封印を解除して使用欄にセットしておく必要があると。魔石の封印を解除しすぎると他の魔石の影響を受けて自我を失ってモンスターの本能で暴れまわるので六体までしか封印解除出来ないように設定してあるのか」
ボックスを確認しようと思うと視界に画面が現れた。実際にそこにあるんじゃなくて、脳内の情報が僕の理解しやすいイメージで視覚的に再現されているようだ。
前世でやったモンスターを捕まえて育成しながら旅するゲームの預けてあるモンスターと手持ちを交換する画面と同じなのがその証拠だろう。
使用欄の枠は六体分用意されている。女神様がそれ以上の魔石の封印を解かないようにその数にしてくれたのだろう。ありがとう女神様。
「まぁ変身できるのは一度に一体だけだし、使用欄にセットしないと体力の回復や融合が出来ないから五体分はその目的以外では必要ないか」
ゲームの技のクールタイムみたいに体力回復するまで同じモンスターに変身できなくなるし、封印中だと体力は回復せずいつまでの再使用できなくなるから、回復したら封印して空きを作り、回復待ちをセットする。そんな使いまわしすればいいかな。
融合のためのレベル上げがどれくらい時間がかかるのか、体力はどれくらいで回復するのか、このへんは実際に魔石を手に入れてからでないと試すことが出来ないな。
「とりあえず【魂の同調】を実際に試すには魔石を手に入れないとどうしようもないかんな。魔石って魔道具の電池みたいな役割に使われていたよな……」
僕の服、左腕のあたりを探る。そこには腕時計みたいな形をした明かりを発する魔道具――簡単に言うと懐中電灯があるはずだ。あった。
「この魔道具の魔石を回収――出来ないな」
一度魔道具に加工されたら魔石だと判断できないって事かな。なんとなく「これでは足りない」と感じるから、もしかしたら魔道具の電池にしたときに必要な分だけ砕いたとか、加工したとか、別の何かと混ぜたとかしてんのかな?
魔道具の作り方とか知らないからよくわからないけど。
「こっちの剣はどうだろう?」
剣には精神生命体への対策として初心者でも魔力を込めやすい加工がしてある。その過程で少しの魔力を増殖するため柄に魔石が埋め込まれている。
「うん、ダメだね」
ボックスに回収しようとすると感覚的に「これは違う」と感じる。剣の魔石はそれなりの大きさがあり原型そのままだからいけるかと思ったけど、やっぱり魔道具に加工されてるとダメなのかな?
「モンスターを倒さないと魔石は手に入らなそうだな」
ゴーストでどこまで戦えるかわかんないけどやるしかないか。
「せっかく変身能力をもらったんだし、人間に近い形を手に入れよう。このダンジョンだとスケルトン、グール、牛巨人、馬巨人、ゴブリンか?」
牛巨人は三メートルから十メートルの巨体で人の体に牛の頭のモンスター。馬巨神はその頭が馬バージョン。
「巨人だと明らかにおかしいだろうし、スケルトンもな。そうなるとグールかゴブリンで全身を隠せばいけるかな」
ゴブリンだと子供サイズだから希望はグールだな。でも遭遇の可能性はゴブリンの方が高いよな。
どのダンジョンにでも出現するグールやスケルトンだが、それはそこで死んだ人間がいたり、墓場みたいに大量の死が集まる場所でないとならない。だから絶対にこのダンジョンで産まれるゴブリンの方が出会える。
「ゴブリンなら入り口付近に生息しているのがわかっているのも探す必要が無くていいな」
そこに行けばほぼ確実に見つけられるのは重要だ。
「ゴブリンを目指しつつ、融合で人型の何かが手に入ることを祈るか……」
だいぶフワフワした作戦だ。作戦とも言えな行き当たりばったりの出たとこ勝負な行動ともいえる。
「人間型になれたとして服を着ているとも限らないし。もっていくか」
服は半分が土砂の下に埋まっている。土をどけて掘り出さないと。
「【落とし穴】」
土砂に触れ土魔法を使う。すると土砂が動き出し服の周囲にドーム状に穴が出来た。無事に服とポーチを回収。
「あ、ポーションが割れている……」
ポーチに入っていた回復ポーションは落下したときに割れてしまったようだ。中身が全部流れ出てしまっている。
「水筒はへこんでいるけど漏れてはいないかな」
パーティーには荷物持ち担当がいて、ほとんどの荷物は彼が持っていた。僕が持っていたのは今みたいな緊急事態の時のための干し肉と水筒、爆弾二つとポーションとサバイバルナイフ、布。まぁポーションは割れて失われたんだけどね。
「爆弾は壊れてないかな?」
これは魔力を込めてから何かにぶつかると爆発する爆弾だ。見た感じはヒビとか入ってないし大丈夫だろう、きっと。
「ポーション以外は無事だったか。剣と防具は持っていけないけどそれ以外は持っていこうかな」
ポーチには服は入らないけど、服の中にズボンを折りたたんで突っ込んで、胴の穴は左右を持って結んで、首のところはどうしようもないから開けたまま。左右の袖を結んで背負う。
ポーチは首のとこから服の中の入れとく。
この時僕は気付かなかった。荷物を持ったことによって透明化すると荷物が落ちるし、荷物は壁抜け出来ないので能力が一部使えない状態になったということに。
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