第六章 女王の君臨

伝承6

カタナーの歴史書。その序文は以下の通り。


「我々の人間は遥か西の海からやって来た。彼らはトリタナス島に到着すると東端に進み、最古の都市国家カタナーを建国した」


 その際、祖先はある物を東側世界に持ちこんだらしい。


「祖先は『神の力が封じ込まれた宝具』を身に付けていたそうだ。それらは着用者に人智を超えた力と、それ以上に使用者を狂わせる副作用を与えたそうだ。だが、その詳細は不明」


 ここまでは歴史書の記述だ。


 以下は同じ著者によるメモ書き。歴史書作成の際に活用する資料にするつもりだったのだろう。


「最近、カタナー近郊でルビーの指輪が発見された。鉱山労働者の男が偶然発掘した。発見者は好奇心からそれを指に嵌めてみたらしい。すると不思議な現象が起こった。男の表皮から火花が散ったかと思えば、全身が自然発火した、とのことだ」


 以下、数行ほど著者は指輪について記したようだが読み取れない。そして最後はこう締めくくられている。


「まさか、我々は言い伝えにある宝具を見つけてしまったのか? 信じられない[以下判読不能]調べたところだと、宝具は神の血を引く王族しか着用できないと分かった。発見者の男の末路は当然というわけだ。となると、現カタナー国王、いや不当な権力を行使している独裁者をそそのかして嵌めさせれば、この国を救うことができるかもしれない。神の力が僭主せんしゅヒエロニムスに死をもたらしてくれること[メモが破られている]」


――カタナーの歴史家アルキュタス著 『カタナーの歴史』とメモより 

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