第一章 呪われた島

伝承2

 海賊女王の故郷は名をナクサス島という。

 それは我らが住まう半島の南端から見える位置にある。

 我が国との間に狭い海峡を形成し、そこを通る者に恐怖を与える。

 無数の岩礁が木々のように立ち並び、ムカデ共の隠れ家になっているからだ。


 我が国は長らく同島の王と交渉を続け、沿岸部への襲撃をやめるように懇願したが無駄だった。彼らはこちらが寛大な条件を提示しようとも承諾しなかった。


『なぜ、あなた方は海賊行為を続ける?』


 我が国の執政官が、ナクサス島の国イラクリスの王に問うたことがある。

 それに対する返事はこうだった。


『我々の祖先は、この地に流れ着いた瞬間からそれを生業なりわいとしているからだ。それは女王の死後も変わらない』


 我々は呪った。ならず者の国がすぐ近くにあるという現実を。


『アケイオス年代記』より一部抜粋

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る