第3話 メリーさんと影子(えいこ)さん♪

ここは島の沖合にある古い羊羹…

じゃなくて洋館…

人の気配等は感じられない…

そんな佇まいのなか…

錆び始めた門を潜り…

無造作に咲き誇る花壇を横目に…

屋敷のドアをゆっくりと開くと…

そこは…

豪華な螺旋階段に真紅のカーペット…

真っ白なカーテンに綺羅びやかな内装…

アンティークな家具や調度品に囲まれた中…


何故か中央に四畳半の畳(汗)

そこに裏がフェルト生地のコタツ!

卓の上には電気ポットと茶こしに寿司屋の湯呑み♡

更にどら焼きとミカンがこれでもかと置いてある(笑)


そしてそのコタツに上半身まで潜り込みながら…

「もしもし、私メリーちゃん♪」

今時珍しいガラケーで電話をしている彼女がいた。

そう、あのメリーさんだ♪

誰と話しているのか解らないが、熊さんのフード付きパジャマを着て、相手に見えないのにも関わらずわざとらしい位な営業スマイルを浮かべながら会話をしている。

 

そこへ…

「稲子ちゃんいる〜?」

誰かが訪ねてきた…みたいだ。

ちなみにみたいだと言う表現は、玄関扉が開いたのに声だけで誰の姿も見当たらないからである。

「今駅にいるの♪」

しかしそんな事等でお構い無しで会話を続けるメリー。

「お〜い稲子ちゃ〜ん」

そしてこちらも今だ声だけ聞こえるのみだった。

「……もしもし私メリーちゃん♪」

「稲子ちゃんてば〜」

「今近くのスーパーにいるの♪」

「あ〜稲子ちゃんやっぱりいるじゃない」

尚も続く不思議なやり取り…


すると…

【ガチャン!!】

屋敷内にそんな音が木霊した。

え〜と(汗)

ここでツッコミを入れるならだ…

《ガラケーの通話を終了する時そんな黒電話を切る様な音はせ〜へんわ!!》

で良いだろうか?


「影子ちゃん…今私が何をしてるのか解る?」

怒りのあまりワナワナと震えながら閉じた携帯を握りしめコタツから這い出てくるメリー(笑)

そして誰の姿も無い筈の向かい側を睨みながら、影子エイコと言う名を呼んだ。

「電話♡」

するとそんなセリフを言いながら、下から黒い影が湧いてくると次第に人の形を成して姿を現したのだ。


それは…

かぐや姫を彷彿させる様なお姫様カットをした黒髪に眉目秀麗の見た目…

巨乳とまではいかないが、綺麗な形をしたセンシティブな二つのロケット(笑)

只…

服装がヨレヨレになった男性のYシャツ一枚なのが残念で仕方がない。

イヤ!

それはそれでアリだと断言しよう〜♡

※オイオイ(汗)


「そうだけどそうじゃなーい!貴女が再起不能にしたパソコンを買い直す為にお馬鹿なロリコン変態オヤジを引っ掛けて貢がせようとしてるんじゃない!!」

あのね、それって犯罪だってば…


まぁ〜ここで事の詳細をお話しよう…

メリーさんの事は皆さんご存知だと思う。

巷でよく聞く捨てられたお人形の怪異である。

でも実際は、自分の特性を活かして世間知らずな成金お坊ちゃまやエロオヤジを電話でビビらせて脅かした後、気絶している隙にネットのオークションサイトに出品できそうな金目の物ををちょろまかしたり、財布から有り金全部拝借して懐に入れたりしているのであった。

要はメスガキ犯罪者だったりする(汗)

だが流石に今は引退しているみたいなのだが…

※でも家計が苦しくなると時々やってるらしい(汗)


それともう一人…

影女こと影子さん♪

こちらは人の影に住みつき、スキあらば相手を影の中に引きずり込んで闇に沈めると言われているが、諸説様々である。

しかし実際はちょっと…

イヤ、かなりの天然でおっとりしていて、マイペースな美人さんだったりする(笑)

彼女…

普段は日がな一日木陰で寝ているが、夜になったり雨の日はこのメリーさんの屋敷に転がり込んで過ごしているのだった。

要は無職である(汗)


今回、三日前に屋敷に遊びに来ていた影子が、メリーのノートパソコンを寝ぼけて素揚げし、再起不能にしたのが事の発端なのであった(汗)

只…

流石に寝ぼけていてもノートパソコンを油で揚げようとは誰も思わないと思うのだが(怖〜)


自分を睨んでくるメリーを気にもせず、彼女の目の前にペットのお出かけに使う様なお洒落なゲージを差し出すと…

「……ツチノコ捕まえたけど食べる〜?」

捕まえたんだ…ツチノコ(汗)

しかも食用?

「……蒲焼なら食べる……」

「ウン♡」

食べるんかい…ツチノコ(汗)

しかも蒲焼?


メリーのリクエストを聞いて嬉々としながら厨房へ向かう影子。

まだまだ彼女には文句を言いたいメリーなのたが、興が削がれてしまったのか、厨房へ向かう後姿を見ながら溜息一つ付いてお茶を飲み始めた。


一時間後…

「稲子ちゃんお金貯まったの?」

「貴女が邪魔しなかったら貯まったかもね」

「ウンウン♡」

ツチノコの蒲焼丼(肝吸い+お新香付き)を頬張りながら、そんな不毛な会話に華を咲かせる二人♪


「ウンウンじゃないの!それよりも影子ちゃん、つかぬことを聞くけど私の名前は?」

稲子いねこちゃん♡」

「違〜〜ウ!私の名前はメリーちゃんよ!解った?メリーちゃん!!」

「ウン解ったわ稲子ちゃん♡」

『あ〜あダメだわ……』

本当に不毛なやり取りである…(笑)

ちなみにメリーの本名は稲子だったりする。

何でもダサいという理由でメリーに改名したらしい…


するとそんな会話の中…

「あ、そうだコレ渡しとくね」

今度は大きめのアタッシュケースをコタツの横に置く影子。

先に食べ終わったメリーは、何気にそのアタッシュケースを手元に引き寄せ開けてみた。

すると!

「なによこれ…って貴女お札じゃない!しかもこんなに沢山!どうしたのよ?!」

「この間向こうで拾ったの♪後一ケースあるわよ♡」

「え…た、大金じゃない(汗)」

目の前に出されたアタッシュケースを開いたメリーは、その中に無造作に押し込まれていた一万円の束におもわず息を飲んでしまった。

すると影子曰く…

何でも向こうに遊びに行ってたら急に海を見たくなったそうだ。

それで深夜だったけど近く波止場まで足を運んでみたら、たまたまそこで銃撃戦に出くわしたらしい(怖)

※そうそう出くわすものではないと思うのだが…


その時このアタッシュケースを持って逃走をはかった(自分のタイプの)男性の目の前に、これまたたまたま姿を見せたものだからさぁ〜大変(笑)

いきなり逆光で出来た影の中から、熱い眼差しを向けながら彼女が現れたもんだから、その男は腰を抜かしてしまった。

その際男が手放したアタッシュケースが転がって、影子の身体に吸い込まれて行ったものだからそのまま持ち帰ってきたらしい。

つまり要は、表に出ちゃイケナイお金を偶然手に入れたという事である(笑)


「ナイスよ影子♪これで最新のパソコンが買い揃えられるわ♡」

「本当?良かった〜♪」

こちらも食べ終わった影子…

メリーのそんな歓喜の声に、口元にご飯粒を付けなから嬉しそうにそう答えるの彼女だった♡


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る