存在を忘れてましたわー

「これで終わりですわー!勝利ですわー!」

「司法大臣子息がずいぶんと動いてるようですね、みんなが知ってるくらいに」

「バカだしね(小声)」

「正直、見て見ぬふりしてると言うよりは勝手に落ちるから後ろに立って眺めてるって感じっす、大昔の剣闘士眺めてる感じっす!」

「ほな、会場でも作って金でも巻き上げるか」

「ワタクシの勝利に全財産かけますわー!」


 負けた時点で失うなら全財産をかけ続けたほうが大きく儲かりましてよー!勝てるギャンブルは大好きですわー!これで王子側近は丸裸!

 というより全然いませんわね……もう少し有象無象が群がるはずだったんですけど……有象無象からもダメだと思われてるのは王国の末期ですわー!さようなら王国、こんにちはワタクシの帝国。


「こう言うのも何なんだが……貴公ら、私の婚約者はいいのか?」

「えーと……あの……出来のよろしくない?」

「あれでも頑張っている!件はからっきしで軍略もダメで落第を入学1月ちょっとで囁かれる仲でコネでなんとかしているが!」

「人として……出来がよろしくない……」

「あれさー何ならできるの?武がからっきしなのはまだいいよー?でも軍務する脳みそないなんてどうにもできなくね?」


 ギャル地方出身はアホとか偏見で言われてただけあって、言いふらしていた側の軍人には冷たいですわねー。まぁマーグも昔から色々言われてましたし。


「いや、あいつはできるやつだ!」

「婚約破棄したいんですの?」

「いいや?」

「じゃあ、なんで脅威を訴えてるんですか……?」

「婚約者を軽視されるのはちょっと嫌だ、グリンド子息……元子息より下みたいじゃないか」

「……頭は下だと思う、正直、多分、勉学以外の知恵みたいなところは同レベル……」

「元婚約者だけあってキレがありますわね」


 言葉は刃物と言いますわー。まぁベスは刃物を使ったのではなくてふとした動作で相手を八つ裂きにしただけですけど。意図的に傷つける言葉よりエグいですわねぇ……。

 むしろこの言葉が八つ裂きに当たる相手がダメすぎるのかしら?ダメすぎますわね。


「とにかく、グリンド元子息以下だというのはちょっと嫌だ」

「ちょっと……?」

「それより評価したら全力で潰すと思うけどええんか?」

「潰さすに高評価してくれないか?」

「アンの知性が下がりましたわ……」

「そもそも今何をしておりますの?ポート令息は」

「アドマイン?さぁ……?忙しいと会ってくれないから知らんな」

「会いに行きましたの?」

「私も暇ではないのでな!わざわざ会いに行くほどでもない」

「意味がわからないっす……」


 アンが何をしたいかわかりませんわ……?婚約破棄はしたくない、婚約者を評価して欲しい、でも手は出さないで欲しい。なぜ話題に出したのかしら。ない胸を張ってさぁ褒めろと言わんばかりの態度にみんなちょっと困ってますわー。


「まぁ、その……人間ですわね!」

「ええ、そうですね……健康そうです!」

「……服装が……お金かかってる……」

「こう、あれよ、そこはかとなくいい感じじゃね?」

「…………」

「あれや、生きてるだけで丸儲けっていうやろ」

「留年しないためにもう裏金を送るほど実家がお金持ってるっす!」

「貴公ら!なんか他にないのか!」


 ないですわね……。みんなに目を合わせるけどみんなそっと下を見て目をそらしうつむいてますわ。あれ?今日誰かお亡くなりになられたのかしら?アンがイライラして早く出してくれと視線を向けてきますわ。ないですわ……本当に何も浮かびませんわ……ワタクシを追い詰めるのがアンとアドマインだったなんて……。


「いま、こんな危機に陥れたのはアドマインですわ、見事な手腕ですわね」

「そ、そうか?たとえば?」

「アンをめんどくさくしたことと、本人のいいところを言わせようとしてワタクシたちを黙らせたことですわ」

「おい」

「茶会の会話を弾ませなくさせるのは他に誰もいません、第2王子ですら盛り上がるのに」

「存在が……脅威……」

「茶菓子が不味くなるってやばくね?」

「……想像するだけで気分が落ちる(小声)」

「こう、商人としては一番相手したくないわ、いい意味で、いい意味でやで?」

「調査しなくても情報が入ってくるので助かるっす!」

「…………」


 ダメですわね、戦場で追撃受けてそうな感じですわ。褒めることがない方が悪いんじゃないですの!目が据わってきましたわね……生きてる以外褒める言葉がないですわ、キャス!あなたの力でなんとかしてくださいまし?


「……(チラッ)」

「……(スッ)」


 なんとかしてくださいまし!皆様!目をそらさず、現実と向き合う時ですわ!世の中は悲しいことがいっぱいありますの、それに比べたら大したことはないではありませんの!さ、誰か何かおっしゃって?


「一番いいのは……アンが婚約者だということ……他にはないもいいところはないわ」


 ベス!言葉は刃物だって言ったじゃありませんの!言ってませんでしたわね、ワタクシの心のなかで言ったことでしたわ。


「そうか!うーんそうかぁ……私が婚約者であることが一番いいことかぁ!」


 言葉は甘い毒でしたわね、結局相手を殺しにいきますけど。これで機嫌を良くするアンもちょっとおかしいですわね。と思ったけどコネ使っても怪しい人材ですものね……いろいろ溜まるものもあったのかしら?


「そうですわ、アンが本体!あれに価値はありませんわ!」

「そうですね、まったく羨ましい。婚約者の価値が全てと言われてみたいものです」

「アンは最高(小声)」

「やっぱアンは背も高くて美形だし誇らしいっしょ!王国武道会で勝った時、男たちが婚約者がいるってがっかりしてたし!」

「アンの価値はうちの商会では買えんわ!親父の商会合わせても買えるかわからんで!」

「むしろ婚約者がアンの価値を下げてるっす!婚約破棄してもっと高みに行くっす!」

「えっ、そ、そうかなぁ……へぇ……武道会で勝った時モテてたんだぁ……」


 褒め殺しに弱いのは軍人としてどうですの、いや確かにアドマインは褒めないでしょうね。別人が婚約者になっても気が付かなそうですし。にへらーって感じでデレデレしてますわ。夜会で女性に言い寄られる独身の金持ちにそっくりですわね。男女って変わらないのですわね。


「じゃ、じゃあ婚約破棄したら……」

「モテますわよ!誰が差し置くのかしら!」

「ええそうです!アンに声をかけないのは婚約者がいるか高嶺の花だからです!」

「いい女!」

「あーしもそんな体型になりたい!」

「王国より価値があるで!」

「婚約者から開放されて高きを望むっす!」


 そうかなぁそうかなぁとにやにや悩むアンを尻目に面倒くさいからこのまま婚約破棄に持って行かせようと一致団結するワタクシたち。たまに乙女モード状態。これ、ちょっとめんどくさいんですの!行け!押せ!差せ!


「婚約者見つかるかなぁ?」

「「「「「「もちろん!」」」」」」

「じゃあ……新しい婚約者……探そうかなぁ……?」

「「「「「「探そう!」」」」」」

「じゃあ……私頑張る!」


 よしっ!バカ息子は勝手に失脚するから裏金の情報流して終わりですわ!これで王子は丸裸!……アドマインって王子にも相手にされてなかった気がしますわね。無駄な……いや乙女モードのアンを相手にしなくなるだけマシですわ……。

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