ゲームで語られない話~断罪後~
サミュエル王国北方にあるライヒベルク公爵領、そこに蓋をするような形でバーゼル山脈がそびえ立っている。山脈の向こうには蛮族が各族長の元で内輪もめをしたり山脈の向こう側の国々を襲撃したりして生計を立てている。
バーゼル山脈は大陸をコの字になる形で連なっており一番南方の西端がサミュエル王国である。そのサミュエル王国ライヒデルク公爵領に接するバーゼル山脈を一つの団体が進んでいた。公爵令嬢エリーゼと取り巻き、そして護衛達である。
「ワタクシの勝ちでしたわね」
「ま、予想どーりじゃね?エリーの賭けって負けたことないし」
「あーらマーグ、そんなことありませんわよ?」
「噂の真偽……まともに確かめないとは思わなかった……」
「それくらいすると思いましたわ-!なんのためにわざわざお馬鹿さんたちに助言をしたと思ってるのかしら?ベスが手をかけるほどではなかったわね」
「まさかあんな理由で婚約破棄するとはな、決闘で殺すべきだったか?」
「アン、あのざまでは決闘で死んだほうがましでしょう?優しすぎますわー!」
「そうか……?(小声)」
「ジーナ、考えてもご覧なさい?あの支離滅裂な糾弾を……私が負けた形になったうえであの男の名誉が回復することはありませんわ、軍務省にも入れないでしょうね……」
心底憐れむように言うエリーに対して、周りもそれもそうかと納得しながら山を進む。
「まぁダメなのはベスの元婚約者とジーナの元婚約者ですわー」
「だから私も……破棄したかった……」
「父親の部屋から調査中の書類を持ってきたどころかあの場で公開する胆力は大したものですわー!これで近衛騎士団の横領の証拠は消えましたわね、まぁ父親もそこそこ抜けてる小物ですから頑張れば見つけるかもしれないですけども」
「無理っしょ、借り物の権威のマント見せびらかせる程度のやつだし」
「…………」
「ジーナはまぁ……そうですわね……その……」
「いいよ、あの程度の男だしね。結局俺が喋ったことを一回も聞き取れてなかったしね……お父上のイアン様は良い方だったけど息子があれではね」
「普通の声量でいうほど鬱憤が溜まってましたのね……」
頭の出来が不安な元婚約者2人の醜態に流石に呆れ果てたのか、なんともいえない雰囲気で会話を続ける。
「そういえばシャーリーは?」
「まだ王都ですわー、今回の件とは無関係ですし……まぁワタクシたちと無関係ではありませんけども」
「公爵家の偽造した購買の記録……表向き無関係の商会だけど……シャーリーのお父さんがお金を貸してるところ……」
「あっさり罠にかかりましたわね……」
「偽装まで突き止めればもう少し戦えただろうな」
「その知能があればああはならない(小声)」
山脈に隠してあるトンネルの入口で一度停車した一行はお茶を楽しみながら他愛もない話を続け、最後の一人の到着を待った。最悪の場合、遅いようであったらトンネルを抜けてしまおうと話しながら。
「そういえば……キャスはよかったのか?」
「キャスにも事情がありますわー、手を出さないように言ったんですけど頭に血が上ったんでしょうね。引き込まれたか、父親の宰相に逆らえなくなったか‥…」
「いいの?呼ばなくて(小声)」
「かまいませんわー!人には人の道があるものですわー!それに……すぐに会えますわ、たかだか2年程度ではありませんの。ワタクシはトップに立つのですわ。そこにはもちろんキャスもいますのよ?」
「あーしもキャスが友人であることに代わりはないからね」
「うむ」
「うん(小声)」
「そうね……リーゼロッテも……?」
少しだけキョトンとしたリーゼだったが意図を理解すると高笑いをしながらもちろんですわー!と元気に答えた。その雰囲気で周りも明るくなりいつもの雰囲気に戻ってきたようだった。待ち人が訪れたのはその時である。
「みんな待ったっすかー?」
「いいえ、クラウ。それほど待ってはおりませんことよ」
「ならよかったっす、報告っす!事前の計画通り部族の半数は手中に収めたっす!もう少し時間があれば8割はいけるっす!」
「問題ありませんわー、ワタクシ達が建国すれば数の差で屈しますわー」
「事前に聞かされて入るが本当にそんな計画でいいのか?」
「12年がかりの計画ですわよ?」
「エリーが……あの時期に建てた計画なら……問題ない……賭けも、一発殴らせる慢心タイムもない……」
「蛮族にはいっぱい殴られてるからノーカンは当たり前ですわー!さ、行きましょうみなさん。アーデルがワタクシたちの移動を見て見ぬふりをしてくれる時間は短くはありませんわ」
「でもあーしらギャル騎士団とオタク騎士団全員辞職して移動できるとは思わなかった、一応休暇提出したり謹慎とか理由つけた後辞職届が届くようにはしたけどさー」
「まぁ……アーデルでしょうね、近衛騎士団も騎士団を解体して近衛騎士団傘下として再編したがってたしいいんじゃないかしら?」
フリードリヒ王太子も噛んでそうだなとエリーゼは思ったがどうでもいいだろうと切り捨て茶会の終了合図を送った。
「さて、ここから始まりますわー!ワタクシの建国記が!ワタクシたちの物語が!ワタクシこそがトップに立つのですわー!」
友人たちはいつものエリーゼに笑いかけ、じゃあエリーゼをトップにしないとなと笑いながら馬車に乗っていった。
この2年後、蛮族を完全平定し、エリーゼ帝国として国を完成させたエリーゼ一党が一部山脈外の国を平定した後にサミュエル王国と戦争を始める。
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