本編ですわー

　学院ですわー！入学ですわー！ひれ伏すがいいですわー！

　我が公爵家は完・全・にして盤・石！我が世の春ですわー！もう第２王子の婚約破棄待ちですわー！もう利用価値はありませんわー！役立たずですわー！配慮する必要なぞ欠片もありませんわー！

　そういえば第２王子は何をしてるんでしたっけ？王太子の儀の話も上がってないからもうダメそうですわー！第１王子は婚約が決まったあとにすぐ決まったのに１年決まってませんわー！よほど問題があるのですわー！でも今や第２王子の血筋も立場もワタクシにとっては何も意味しませんわー！王太子でも第２王子でも変わりませんわー！一応婚約者ですが互いに何もしなくていいので放って置けばいいのですわー！

「おはようございます、エリー」

「おはようございます……エリー……」

「おはようエリー、いい天気だね（小声）」

「おはようっす！」

「エリー、学院でもよろしゅう頼みます」

「おはようですわー！」

　いつものメンツですわー！アンとマーグは軍事科と騎士科だから入学式が別ですわー……寂しいですわー……マーグを抱きまくらに出来ませんわー……

「聞いた話なのですが……」

「あら、こんなとこで話してもいいんですのー」

「どうせ明日には伝わってるから変わりません……ルーデンドルフ侯爵が第２王子教育係を辞任します」

「さじを投げましたわねー……」

「打つ手がないということですね……父に回ってこないといいですが……」

「これで警察長官に注力して復権を目指すってこと？（小声）」

「それはありませんわー、ルーデンドルフ侯爵は今日警察長官を辞任しますわ」

「どういうことですか！？」

「キャスー？落ち着きなさい」

「それホンマ？」

「ホンマですわー、先ほど聞きましたわー」

　激痩せして過労で倒れただけですわー！宰相に恨み言を言ってることが増えたようですわー、娘のアレクシアさんは内々に公爵派閥ではなくワタクシに付くと朝のうちに宣言しましたわ－！そこで聞きましたわー！正直もう派閥では宰相と数合わせ共くらいしか敵対してる人間がいませんわー。

　チェックメイトですわね、後は然るべきタイミングで勝利するだけですわねー。アーデルハイドがいたらどうしたかしら？パワーバランスを整えて有象無象がワタクシに宣戦布告をしないよううまくやりつつ制御下に置こうとしたかしら？

「おおきに！ちょっと始業式サボらせてもらうわ！」

「シャーリー、胃腸薬が売れますわー」

「私も急用です……父に伝えてきます……まだ王城に行く前なので……」

「学院で問題が起きるかもしれないと伝えれば逃げられますわー、ルーデンドルフ侯爵を捕まて詳しく聞けばいいですわー、それでわかりますわー」

　クラウは一切うろたえてませんわねー。知っていましたわねー、吐かせますわー言いなさい！ほら情報を吐き出すのですわー！

「それでクラウ？落ち着いてるけど他に知ってることは？」

「えっ！い、いや知らないっす！」

「知ってますわーこれは知ってますわー」

「クラウ、教えて下さいますね？」

「俺も聞きたい（小声）」

「えー……いやなにも……わからないっす……」

「どうせ後任の警察長官がルーデンドルフ侯爵の子飼いじゃなくて宰相派閥とかいう話ですわー」

「知ってたんっすか！」

　カマかけたら当たりましたわー、この手に弱いですわー！そうなるとルーデルドルフ派閥が弱体化しつつも宰相派閥は強化されますわー。

　あくまで表向きですわー実務はルーデンドルフ派閥貴族ではなくルーデンドルフ子飼いだから結局敵を作るだけですわー！焦りすぎて短絡的なことをしてますわー！よほど第２王子のことで不満を言われ続けたことが頭にきたんですわー、自業自得ですわー。

「エリー！知ってたんですか！」

「知りませんわークラウが知ってそうだけど黙ってることで当たりをつけただけですわー」

「しくじったっす……」

「へー……なりふりかまってないんだね（小声）」

「まぁ宰相がゴングを鳴らしたら相手をして差し上げますわー、そちらのルートでもいいですわー」

「流石に父もエリー相手は静観に出るかと……」

「ワタクシが全部引っ掻き回してやりましたわー！」

　勝利の凱旋ですわー！登校ですけどかまいませんわー！

　その割に人数が大分少ないですわね……？仕方ありませんわー明日は全員集合ですわー！

「噂をすれば……我が家の派閥が荒れた原因ですね」

「ワタクシはいつでもあなたの隣におりますわー！」

「エリー……違います、あれです」

「あのできの悪い鶏みたいな金髪はなんですのー？」

「あははは！」

「ジーナが大声を出しましたわ！」

「珍しいっす！」

「ごめん（小声）」

「いいんですのよーいつもそれくらいで喋ってもいいくらいですわーでも別にいつものでもいいですわーワタクシ達には好きな時に好きな音量で喋ればいいのですわー」

　でもなんか見覚えがありますわねー、でも思い出すことを拒否してるような嫌な感情が湧いてきますわー……Gが部屋にいたような感覚ですわー。

「…………第２王子です」

「ああ……思いだしてしまいましたわー……」

「そのレベルなんだ……（小声）」

「でも正直そんなもんっす、王城に用事がる時に胸をじっと見てくるし気持ち悪いっす」

「えぇ……やっべえですわー……」

　そのレベルでやべえとは思いませんでしたわー……そりゃあルーデンドルフ侯爵も突き上げを食らうわけですわー……ルーデンドルフ侯爵が宰相を恨むわけですわー……王族でそれがわかるような目運びをするようなやつ嫌ですわー……下級貴族程度なら許せますわー……でもクラウの胸って立派ですから仕方ないところはありますわー、私ならじっくり見ますわー！第１王子とアーデルハイドが王太子になったらアレは教育しておきたいと言った意味がちょっとわかりましたわー……

「ヴィリー！」

「おお！ララ！」

「久しぶり！１週間ぶりね！」

「俺様はもっと会いたいぞ！王城に住ませたいのだがな、うるさいのがいてな……」

　まだ俺様とか言ってますわー！珍獣ですわー！バカ様の間違いですわー！アレは誰だったかしら……？覚えてませんわー大抵は覚えているはずですわー……平民ってことはないと思いますわー、距離が近すぎるし、こんな場所で抱きつくなんてハチャメチャですわー、その程度の頭もないのに学院に入れるわけがありませんわー。婚約者がいるのに王城に住ませるはもうイカれすぎててわけわかりませんわー。

　うるさい教育係は今日辞めますわー良かったですわねー……もう二度と諫言してくれませんわねぇ……

　興味なさすぎて放置してましたけど少しは調べたほうがいいかもしれませんわねー、みんなも別段と第２王子のことを報告してませんでしたし……そういえばワタクシは興味がないと言ってましたわー！仕方ありませんわー！よほどの大事でなければ誰も言わないですわー、第２王子に愛人がいるとか言われても何もしなかったと思いますわー。

　ぶっちゃけ、本当にどうでもいいですわー、でも宰相派がなりふり構わず色々やってる中で婚約者が遊んでるのをスルーしたら舐められる可能性がありますわー、教育ですわー！でも本当にどうでもいいですわねぇ……せめて裏なら興味なくて気が付かなかったといえますけどああまでされると……もうアレの利用価値もないですし……。嫉妬と思われるのも嫌ですわね、どうしようかしら……。

　ﾄﾞﾀﾝ

「キャス！」

「しっかりするっす！」

　へ？なんでキャスが倒れましたの？