私がワタクシになった日~親友~(5歳)
「何をするんですか!」
「いえ、口を開けてたから食べたいのかと思って……」
ブチ切れですわー!淑女としてふさわしくありませんわー!これくらいで怒るなんて器が小さいですわー!
「それに鯉みたいでしたので」
「恋!?」
「ええ、そのものでしたわ」
「ええっ!私そんなにわかりやすかったの!?」
齟齬が生まれてますわー……でも別に訂正はいらなそうですわね。同じようなものですわー。でもなんでわざわざ宣戦布告してきたんでしょう?警戒されるのに?小物だから頭が回らないのかしら?珍妙な生物ですわー。
「宣戦布告なぞせずとも妾くらいにはなれたでしょうに」
「妾でもいいけど……一番愛されたかったの!」
「じゃあなおさら妾でいいでしょう、側室として適当にお過ごしなさい」
「側室と妾が同レベルなの!?」
あれ?この小物……めっちゃ面白いですわー!言葉を崩して戻してませんわー!ようやく人に会えた気分ですわー!ペットとして王城で飼いましょう!戦争と内政以外の楽しみができましたわー!暇からの開放ですわー!
「同じですわ、私の子供が継承1位、黙っていればそのまま妾になれたのに無駄なことをしましたのね?」
「それは違うわ!フェアじゃないじゃない!」
「フェア?政治に正々堂々も卑怯も何もありませんわ」
「違うわよ!私が第1王子殿下のことを好きだから婚約したいの!なのに好きでもないのに婚約するってのがムカつくから言いに来たの!裏でコソコソやるのは性に合わないの!殴ってやるって言った後なら殴られても殴っても……どっちもスッキリするじゃない!」
「えぇ……」
意味がわかりませんわ……本当に次期外務大臣の娘ですの……?部族か軍人ではなくて?好きで婚約したいからその相手の有力相手に対して宣戦布告するわ、これで殴れるね、気持ちいいでしょってこと?蛮族と同じ思考ですわー、蛮族のほうがストレートで分かりやすいまでありますわー……。
「イカれてますわー……」
「私は堂々と戦いたいの!裏でチクチク殴って勝っても仕方ないわ!嫌いな相手を本人が気づかないうちに倒すよりも前に出て、お前は今から私が殺すと言ったほうが気持ちがいいの!」
「それでわざわざ敵になっても……?」
「そんなものは賭けよ!外交も同じ!懐に入らなければわからないわ!殴ってきたらどんな手を使ってでも殴り返す!殴りたいなら殴らせろというのよ!」
いい感じなこと言ってますけど……殴る前に宣言する蛮族なだけですわね……このまま女性外務大臣になったら私の望む世界に勝手になりそうですわね……
「相手が相手なら一発ノックアウトされますわー……」
「いいじゃない!場合によっては今からお前の人生を滅茶苦茶にしてやるって言うのよ?一発くらい食らってやるのが礼儀じゃないの!」
「そんな礼儀はありませんわー……」
「第一ね!一発殴らせたうえで相手をぶん殴って勝つのよ?想像してみなさいよ……最高じゃない!それに宣言していきなり一方的に殴って勝利宣言とかダサいわ!」
「それは……そうかもしれませんけど……」
「ビビってんの?殴られても痛くないように鍛えるのよ!交渉は屁理屈が命よ!」
普通は誠意ですわー……この国の行く末が不安になってまいりましたわー……こんな化け物制御できるか不安ですわー……妾として王宮に閉じ込めたほうがいいかもしれませんわね……
でも一理あることは言ってますわね、この大陸の頂点に立つにはそれくらいの気概が必要ですわね……玉座に座って得る栄光よりも危険に身をおいた栄光のほうが華麗なのは確かですわ、そのために私は鍛えてたんじゃありませんの。
「いい?勝負は賭けなの!少なくとも私達はそう、外交担当が変わってひっくり返されるのも腐る程経験してるわ!5歳でも場数は踏まされるの、あなただって公爵領の差配を手伝ってるって聞いてるわよ。この婚約外したら外務官僚になって、外務大臣になるのよ、そこで功績を上げて第1王子殿下の妾になるわ、あなたが黙認するだけの功績を上げてね!」
「各国に係争地を作ってめちゃくちゃにしそうですわー……」
「それ、頂き!」
この大陸を破滅に導きましたわー……流石に申し訳無さを感じますわー……恋によって生まれた狂人ですわー……そんな物作ったら大陸征服しても問題しか残りませんわー……
「私は隠さない!思いの丈をあんたにぶつけたわ!これが本音!侯爵家?知らないわ!私の幸せの踏み台になりなさい!公爵家?知らないわ!私の幸せのために殴り合ってやるわ!これは賭け、私のこの話を聞いたうえで貴女の目的をいいなさい!潰してやるわ!」
めっちゃおもしれー逸材ですわー、この思いの丈を王子にぶつけてないところが最高に面白いですわ-!しかも他の侯爵家もさっきから聞いていますわー!王子も遠巻きで困ったように見てますわー!最高の喜劇ですわー!こんなのみんなに知ってもらうしかありませんの!
「ちなみに第1王子殿下の何処が好きなんですの?」
「話をそらさないで!」
「大事な話ですわ」
これから面白くなるから大事な話ですわ、嘘ではありませんわ、だから嘘だと見抜けないでしょう?ほらほら、かかっていらっしゃい!ジャブですわジャブ!
「…………優しいところ」
「第1王子殿下は誰にも優しいですわー」
「去年視察に来た時に私の花冠を受け取ってくれて……空いた時間で殿下が作った花冠をくれたの……」
へぇー……甘酸っぱい思い出ですわねー……王子もなかなか……あれ?照れてますわね……あの感じは……ふーん……そういうことですの、王子自ら呼びに来るなんてよく考えたら変ですものね、私に媚を売った感じもなかったですし……へー……ふーん……ほーお……。
「もういいでしょ!言いなさいよ!貴女の目的を!」
「いいですわー公爵家の、私の目的……」
公爵家?違いますわねー大陸の頂点に立つのは公爵家ではなくこの私、いいえ!公爵家の枠に飲まれた礼儀正しく品行方正の皮を被ったライヒベルク令嬢なんて人形が頂点に立つんじゃありませんわ!そんなもの絵画にして広間にでも飾っておきなさい!お偉方がみーんな聞いてますわ!そんなとこで宣言することめったにありませんわー!
ワタクシ、そうワタクシですわ!しっくりきましたわー!ワタクシ!エリーゼこそが頂点に立つのですわー!
やっぱなし!栄光の頂点に立つのはみんなで、そう、まずはアーデルハイド、あなたも……そしてまだ見ぬ面白い人たちですわ!派閥捨てて面白い人材を集めますわー!だから私が立つのは頂点ではありませんわ!
トップ!最高で最上の場所に立つのですわ!そこにはあなたもまだ見ぬ誰かもきっといますわー!
「ワタクシこそがトップに立つのですわー!」
これは賭けですわーあなたの土俵勝負、大好きな本音をぶつける話。ただそれだけのシンプルな話。
今から王家と大陸をぶん殴るぞ!そんなことを公言した令嬢を飲み込んで婚約者にできるか?王国の栄光を掴むために王家を破滅させ乗っ取るように見える私を制御していくか?それとも恋心で惹かれ合う2人を優先するか?王子は周りを説得して自分の心を優先するか?どちらの政治バランスが勝つか?ワタクシはこの判断に介入しませんわー!あなたの流儀に合わせてこの婚約を決めた奴らに一発殴らせてあげますわー。
だからあなたの流儀に則ってみんなぶん殴る宣言しましたわー!ワタクシをぶん殴ったら第1王子婚約者の座は全力で狙いに行きますわー!アーデルハイドとガチバトルですわー!殴られないでワタクシが婚約者ならアーデルハイドとガチバトルですわー!挑戦者が変わるだけですわー!
でももしも、もしもワタクシが王家から殴られずアーデルハイドそのままが婚約者になったらその時は……祝福して差し上げますわー!
危険を避けた王家の判断を称賛して差し上げますわー!でもどちらにせよ変わりませんわーワタクシこそがトップに立つのですわー!そしてあなたはワタクシの友人になるのですわー!
「正気?問題発言だよ?王家の乗っ取りに聞こえるよ?」
「知ったことではありませんわーそんなことより重要なことがありますわー」
「この発言より重要なことはないよ!こんなこと誰かに聞かれたら……」
「みーんな聞いてますわー、周りをご覧になって」
「えっ、ああ、あぁ……あっ!第1王子殿下……あ……あ……」
「そんなことよりお友達になってくださいますか?」
「えっ、何がどうなってそう判断したの?今の状況わかる?」
「あなたが公衆の面前で大陸に火種を巻く宣言をして王子に告白しただけですわー」
「そっちじゃなくて!」
「些細なことですわー」
「些細じゃないよ!肝が座りすぎて肝そのものだよ!」
玉座に座る肝ですか……生臭くて気持ち悪いですわね……肝だけに……意外とつまらない冗談も言えるんですわね、会話に事欠きませんわ!やっぱり令嬢の皮被るより引っ剥がしたほうが面白いのがいるんですわねー楽しくなってきましたわー!茶会とパーティで人材探しですわー!
「それでなってくださいますの?友達」
「……………………」
「な・っ・て・く・だ・さ・い・ま・す・の!」
「じゃあ……知り合いからで……」
「チキンになってるんじゃねぇですの!懐に入り込むんじゃなかったんですの!」
「わ、わかったわよ……」
「お友達になってくださいませんか?」
「よろこんで」
やりましたわー!あとは先程の発言の賭け次第ですわね!ドキドキ・ワクワクしますわー!勝ちが決まった勝負より遥かに面白いですわー!今後も試してみますわー!蛮族相手にやりますわ-!
「じゃ、今日の茶会来てくださる?」
「今日?予定はないけど……急すぎない?そんな引っ張らないで!」
「迂遠なのは嫌いですの、さ、いきましょう!婚約に関しての話は偉い人に任せますわ!みんなに噂されてますわー」
「えぅ……流石にいたほうが……」
「いてもいなくても同じですわー宣戦布告したんですからあとは待つだけですわー」
「お母様!親友ができましたわ」
「まぁ!エリー!人と友だちになれる心があったのね!」
「親友になるの早くない?それよりあなたの家での扱いやばくない?」
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