貴方がたがお好きな謀略ですわー!陰謀ですわー!

「マーガレット・バルカレス男爵令嬢、ジョージアナ・スペンサー男爵令嬢ご到着です」

「ようこそですわー!」


 2人同時ですわね。なんとなくそんな感じの順番で来ましたけど、やっぱり騎士団関係者ってなんか前を歩くイメージがありますわね。


「エリー、悪いんだけどさー。あーしの婚約者の実家潰してくんない?」

「オッケー!いいですわよ」

「えっ、ちょっとエリー!」

「キャスはもう少し落ち着くべきですわ。今までその話をしてたじゃありませんの」


 もしかして忘れてしまったのかしら?若くして記憶力が落ちるってあるみたいですわね……。

 まだ11歳なのに……若年性でもそういうことがあるみたいですしね、仕方ないですわ。クルミとかサーモンをお食べなさい!


「何を考えているかはわかりませんがイラッとしましたね」

「考えすぎですわ?」

「もう話戻してよさげ?」

「続けて構いませんわよ」


 脱線してないと思うんですけどなんで止めたんでしょう?マーグのことはよくわかりませんわー。

 ギャル地方の貴族は考え方と喋り方が独特だからそういうものかもしれませんわね。

 そういえばマーガレットでマーグって変な愛称ですわねー。マギーじゃ駄目なのかしら?おばあちゃんみたいですわね。


「あ-しもちょーっとイラっとしたかな?」

「婚約者の実家に?仕方ありませんわー、騎士としてはカスみたいな行いですからね。近衛騎士としての醜悪さは格別、処分待ったなしですわ、上がやらないなら私達が代わりにやって差し上げましょう」

「そうじゃないけど……まーそれでいーや。じゃあれの実家潰して~」

「話が早すぎてついていけない……」

「ベス、私もだ……」

「即断即決、さすがエリーだな!では殺るか!」


 持て囃されて気分がいいですわ!

 マルバッハ男爵を救出しますわよー!アーデルハイドの事故死の責任はありませんわー、責任を押し付けた近衛騎士団にはありますわー私がそう決めましたわー。

 だから死んでもらいますわ、さーよーなーらー。


「一応聞いておきますけど、お父上のカリウス騎士団長も婚約破棄とマルスン近衛騎士団長の失職には賛成ですの?」

「婚約破棄はこちらに多大に有利になる条件なら継続って感じー?ダメならバイバ~イ。近衛騎士団は貴族が腐りきってるから再編していいってー、あいつら金で冤罪でっち上げるらしーよ?今回のことで真実味が増したけどさー。元から外からは評判が良くないしねー近々メスが入る予定だったみたいだし……あくまで噂だけどさー今回の第1王子『暗殺』の嫌疑かかってるってさ、メスいれるのが第1王子だったから。まぁそんな事できる能力はないから噂でしかないし誰も信じてないけど」


 失脚した相手にそんなに利がありますの?

 どこかの貴族の三男から成り上がったからそこまでのいい条件があるとは思えませんけど?婚約者も近衛騎士団長子息であること以外に取り柄があるタイプとも思えませんわね……。何かあるのかしら?

 でも暗殺嫌疑は使えますわね、マーグがこんな言い方をしてるのなら本当に能力的に無理ではあるのでしょうけど。

 でも大事なのは信じ込ませること、既成事実ですからね。


「……使い道があるのですか?あの……バカ息子に?なさそうですけど」

「あーしもそう思うけど結構溜め込んでるらしいよ、あと軍人系に推薦状書いてるから影響力あるみたい。騎士もそうだけどさ、その座は勝てばあーし等にシフトさせるつもりだけど。詰んだ金と推薦した相手譲るなら継続でいんじゃない?命くらいは残しておいても、復権は不可能だろうしね」


 ろくに働かない近衛騎士団ってそんなに儲かるんですの?我が家も手を出すべきですわね。

 でも、やりすぎない程度にしたほうがいいですわね。公爵家は王家から警戒されてますし。

 でもお父様なら近衛騎士団に人を送り込むくらいは……もうやってそうですわね……。

 しかも再編するからもう咬めませんわね。でも未来に向けてお金はあればあるほど良いんですけども。

 推薦状の方もお父様がやってそうですわねぇ……。私が書けばいいんですわ。これで功績を上げますわよ!

 と思ったけど現状送り込みたい場所はないですわねぇ……。人手が足りないから推薦するくらいだったらこっちで働いてもらいたいくらいですし。


「あのボンボンが下手に出るとは思えませんわ」

「両家の職務上は立場が対等なのに近衛騎士団長子息だからって上から目線で接してるほうがおかしーんだよ、圧倒的にこっちが上になったし体で教えてやるつもりー」

「体で……!マーグ……!?」

「キャス、そういう意味じゃないと思うわ……」

「キャスは破廉恥だな!!それでも淑女か!」


 キャスは耳年増ですわねー、まぁお硬い人に限ってスケベってよくあることですしワタクシは気にしませんわよ?


「キャスのスケベさは置いといて進めますわよー」

「スケベ!?」

「そーゆー意味じゃなくて普通に手合わせでボコボコにするつもりだったんだけどねー……キャスはスケベだからなー……エロい本いっぱい持ってそう」

「も、ももも持ってません!ベス!そうですよね!?」

「「「…………」」」


 流れ弾がベスにあたってますわね……沈黙は金ですわー。アンも黙ってますわー。ジーナ?しゃべってませんわね?全員興味はあるんですのね。


「アン、王国軍の戦闘記録とマルバッハ男爵領への敗残兵の大まかな数、移動経路、マルバッハ男爵領兵の迎撃地点の記録と近衛騎士団の護衛場所を調べてくださいましー。もう報告は届いてるでしょう?」

「承知」

「いちばん大事なマーグ、お父上の騎士団長から近衛騎士団の活動記録をちょろまかすように頼んでくださいましー」

「りょ、抱きしめてないで離して?」


 抱き心地最高ですわー!5歳の子どものように小さくてもちもちですわー!名残惜しいけど見送りますわー……。

 まぁこれで男爵家の方はチェックメイト、救出成功ですわね。

 あれ?チェックメイトだと男爵家がとどめ刺されるみたいですわね。まぁ気にしなくていいですわね。


「ベス、ちょろまかした記録の不備を洗って財務大臣に提出してくださいまし」

「個人でも会うことがあるので……問題ありません……」

「ジーナ、喋ってくださいまし」

「さっきからずっと喋ってますが!?(小声)」


 気づきませんでしたわ……聞こえませんでしたわね。流石にこれは不覚ですわー!ジョージアナでジーナって愛称なのに名前っぽいですわね、むしろ名前が名字みたいですわー!アーデルハイドは必ず聞き取れてたんですけど……コツは心を傾けるとか言ってましたわね……ちょっと何言ってるかわかりませんわ。


「ジーナは観光地における事故の発生率をお父上のスペンサー農林大臣に聞いてくださいまし、後は婚約者のお父様であるモンタギュー司法大臣から前例と判例があったら借りてきてくださいまし!」

「わかった(小声)」

「キャス!すべての情報がまとまったら精査してまとめ上げてくださいまし!財務大臣に提出する分も入れたうえでお父上の宰相に提出しに行きますわよ!」


 これがワタクシたちの戦いですわー!クラウは距離的に無理そうですわね……。

 シャーリーには近衛騎士団の購買記録を提出してもらいますわー!

 別口で提出して追い詰めてやりますわー!


 初陣で大きな勝ちがあれば大抵は後で失敗しても許されるものですわ!

 まぁ王国内以外では初陣はリアルな方でも終わってますけど、近衛騎士団なんて蛮族よりは弱いでしょうし。

 政争では……初陣じゃないですわね?じゃあ弔い合戦ですわ!近衛騎士団が第1王子と婚約者を殺したという考えで行きますわよ!

 貴方がたが大好きな罪の捏造と押し付けですわ!

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