本編13
誇り高い猫族として、己の強さに自信を持っていたシロテとつくし。
彼らの動揺ぶりは、相当のものだった。
二匹は鳴き声を上げ、店主に助けを求めた。
「助けて! 助けてくれよ~、缶切り!」
「うわあ! 缶切り! 缶切り! 早く助けておくれ!」
頼りにしていた二人が取り乱したことで、不安になったグレイとしっぽ。
彼らも大きな鳴き声をあげ、店主に助けを求めた。
しかし、何の反応もなかった。
大ネズミは勝利を確信し、鋭い歯をむき出しにして恐ろしい笑い声を上げた。
勢いづいた敵が、動けないつくし目掛けて猛然と襲い掛かる。
鋭い歯が喉元の毛皮をかすめ、ガチンと音を立てて閉じられた。
危うく喉笛を食いちぎられるところだったが、勢い余って力を籠めすぎたのか、狙いが外れたようだ。
つくしは気合いで身体を動かし、追撃しようとする大ネズミの顎を力づくで押しやった。
大ネズミも負けじと掴みかかり、ガチガチと鋭い歯を鳴らしてつくしに噛みつこうとしている。
やがて大ネズミが、ジワジワと押され始めた。
その様子を固唾を飲んで見守っていた仲間の猫たちは、いつの間にか身体が動くことに気づいた。
つくしを除く3匹で、最も素早く動けるのはグレイだ。
しかし、学者猫の彼女は、騒音に弱く、戦闘が得意ではない。
仲間が食い殺されそうになっている光景は、彼女には衝撃的すぎた。
恐ろしさのあまり、グレイは真っ青な顔でその場に凍り付いている。
つくしはグレイを励ますように、力強く鳴いた。
「頼むよ学者先生! アンタならできる! 俺がこいつの牙を押さえるから! 横からそいつの腹を全力で引き裂けーッ!」
つくしの声に勇気づけられたグレイは、大ネズミに猛然と襲い掛かった。
後ろ足の、硬く鋭い爪による必殺攻撃。
猫の世界で「引き裂き」と呼ばれる、とっておきの攻撃だ。
その名のとおり、毛皮を越えて肉を引き裂く痛烈な攻撃が叩き込まれた。
内臓に到達するほど深々と刻まれた脇腹の傷から、大量の血が噴き出す。
あまりの痛みに大ネズミは絶叫した。
彼は出血によるショックに耐えきれなかったのか、口からあぶくを吹き、白目を剥いて気絶してしまった。
ピクピクと痙攣する手から、カランカランと音を立てて杖が転がり落ちる。
その瞬間、店主が声を上げた。
「いたたたたーッ! こ、ここは一体!?」
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