After2 もはや彼女が可愛すぎるんだが
「先輩のことが好きです……!付き合ってください……!」
「あ……えーっと……」
俺達が2年生になり既に9ヶ月ほどが過ぎた今日このごろ。
俺はなぜか校舎裏に呼び出され吹奏楽部の1年生の子に告白されていた。
なんでも夏の大会での俺がカッコよかったとかなんとか。
(な、なんで……?今までモテることなんてなかったのに……!)
今日は珍しく部活がオフだったのだが俺の机の中に『校舎裏に来てください』と名前が書かれた手紙が入っていたのだ。
その子が吹奏楽部に入っていることは知っていたのでてっきり力仕事系かと思っていたのだ。
……だって実際それで野球部が駆り出されたことがあるし
(告白なら詩織に先に伝えとくんだった……)
今日は仕事で呼ばれたと一緒に帰るのを断ってしまったのだ。
それで告白されてました、なんてやましさ以外の何物でもない。
「ごめん、俺は彼女いるから」
「……やっぱり、佐伯先輩ですか……?」
「うん、俺は詩織と付き合ってるから君の想いに応えることはできない。ごめん」
「い、いえ……それでは私はここで失礼します!」
そう言ってその子は走り去ってしまった。
はぁ……詩織にどう説明したものか……
◇◆◇
「それで?男手が必要なんだと思って行ってみたら告白されたと?」
「本当にごめん……詩織に隠すつもりはなかったんだ……まさか俺が告白されるなんて思いもしなくて……」
俺は今、俺の部屋で詩織に向かって正座していた。
詩織はベッドに座り呆れたように言う。
「名指しの手紙で校舎裏に呼び出しって告白以外にないじゃないですか……」
後から考えてみればまさにその通りなので俺は謝ることしかできない。
とにかく俺は頭を下げ続ける。
「はぁ……告白は断ったんですよね?」
「そんなの当たり前だろ」
「じゃあもういいですよ。顔を上げてください。徹くんが極端に鈍いのはわかりきってますから」
「うっ……」
自分の気持ちに気づいてからすぐに行動したものの自分が気持ちに気づくのが遅かったのは否めない。
俺は言葉を詰まらせたものの許しが出たので顔を上げた。
詩織の表情に怒っている様子はない。
「隣、座ってくれませんか?」
「えっ?うん、いいけど……」
詩織は自分の横を軽く叩き俺を呼ぶ。
俺が大人しく呼ばれた通り座ると詩織が俺の膝の上に横向きに座って俺を抱きしめてきた。
「すごく、モヤモヤしました……」
「俺が隠しちゃったこと?」
「違いますよ。徹くんが他の女の子に告白されたことです」
そう言って詩織は俺を抱きしめる腕を強める。
まるで絶対に離れず誰にも渡さないと言わんばかりに。
「俺が詩織以外の女の子を好きになるわけないだろ」
「頭ではわかってます。それでもモヤモヤするんですよ。徹くんは私が男子に告白されても何も思わないですか……?」
そう言われて俺はその場面を想像してみる。
夕焼けの中、詩織は校舎裏で男子に告白されるそんな情景を。
「……やだ。なんかやだ」
俺はそんな場面をかき消すように詩織を抱きしめる。
「……ふふっ。そう言ってくださってうれしいです」
「すごく心がモヤモヤした……」
「でしょう?でも徹くんは想像ですが私は現実となってしまいました……」
そう言いながら詩織は俺の頬に軽く頬ずりをしてくる。
そして抱きしめを解除して体を離し少し頬を膨らませる。
「今日はいっぱい甘やかしてください……」
「それくらいでいいならもちろん。いつでも大歓迎だよ」
俺は詩織の頭を軽く撫でながら言う。
可愛い彼女から可愛いおねだりをされて断るわけがない。
「じゃあまずは何してほしい?」
「キス……してください」
「お安い御用」
俺は詩織の唇にキスを落とす。
付き合い始めてから1年半も経ってるからキスなんてたくさんしたけど今でも少しドキドキする。
それから詩織を甘やかしまくったら無事に機嫌を直してくれた。
……女避けのために毎日首にキスマークを付けるのはどうかと詩織に提案されたのはまた別のお話。
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二人は付き合って一年以上経ってもラブラブです。
そして次がラストのアフターストーリーです。
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