第18話 もはやJKには不可能の味なんだが

翌日の昼休み。

俺と詩織は人がそこまで多くない中庭に来ていた。


「このベンチでいいんじゃないか?」


「そうですね。ここにしましょう」


俺たちは適当なベンチに座った。

適度に日光が当たり暖かいし風通しもよくて適度に涼しく意外と快適な場所だった。

なのに人が少ないのは昼休みの時間が意外と少ないからだろう。

ラノベでは空き教室とかに移動して食べている描写があるけど昼休みって意外と短いので移動していると食べる時間が大幅に減ってしまうのだ。


「はい。これ、約束のお弁当です」


「お!ありがとう!」


今日、ここに来たのは詩織が弁当を作ってきてくれたからだった。

教室で同じ弁当を広げていたら絶対に今度は弁明の余地がないほどの勘違いをされてしまう。

だったら多少時間が少なくなっても人が少ない中庭に移動するのは必須と言えた。

早速詩織から弁当を受け取り蓋を開ける。


「これ、すげぇな……」


「ふふ、初日なので頑張ってみました」


弁当の中には俺の好きなものが大量に詰まっていた。

更には栄養バランスも考えられていて野菜も入っている。


「いただきます」


「はい。どうぞ」


まずはハンバーグを一口。

肉汁がたっぷり入っていてソースも美味しい。

ご飯の進む味で白米も一緒に食えば最高の一言だった。


「めっちゃ美味い。最近の冷凍食品技術はすごいな……」


こんなに美味いものが食える現代の技術に感謝だ。

俺がしみじみと思っていると横で詩織が楽しそうに笑っていた。


「え?どうしたの?」


「それ、私の手作りですよ。私が徹くんへの弁当に冷凍食品なんて入れませんよ」


「え!まじで!?」


確かに言われてみれば詩織が得意な優しい味付けだった。

ていうか女子高生にこんな冷めてるのに美味すぎる料理を作ることができる人がいたんだな……

もはや料理人の道に進んだ方がいいんじゃないだろうか。

詩織が店を出したら週7で通う自信がある。


「詩織に才能がありすぎて鳥肌が立ってきた……本当にすごいな」


「ふふ、ありがとうございます」


「なんか俺がこうやって独り占めしてるのが悪い気がしてきた……料理人になって世に幸せを届けたほうが良いんじゃないの?」


「嫌です。私は一部の人にさえ喜んでくれればそれでいいので」


そういうものなのか。

まあ詩織にも自由はあるしやりたくないならやらなくていいだろう。

俺はご相伴に預からせていただけるみたいだし文句は無い。


「それじゃあ私も食べますね」


「おう。まじで絶品だぞ」


「私が作ったんですけどね」


詩織は苦笑した。

そして小さく可愛らしい口でサラダを食べ始める。

なんかこうして見てみると小動物みたいで庇護欲が湧いてくる。


「忘れてました。あーん」


「……またやるのか?」


当然です、と言わんばかりに詩織は頷いた。

まぁ……周りに人はいないしいいかな……

俺は恐る恐る詩織が差し出してきたハンバーグを食べる。

さっきと同じく美味しいはずだったのになぜか味がしなかった。


「うん……美味い」


「ではお返しお願いします」


詩織はこちらを見上げて口を開ける。

俺は渋々自分の弁当に入っていたポテトサラダを詩織の口に持っていった。

昨日もやらされたから割とスムーズにできた。

食べるより食べさせるほうが得意だ。

あーんが得意とかどんな珍しい人だよ。


「美味しいです」


「そりゃあ俺の自慢の幼馴染が作ったからな」


「徹くんが食べさせてくれたから美味しいんですよ」


そう言って詩織は笑った。

そんなもんなのかね……

まあ俺もなぜか味しなかったし何かしら味覚に影響があるんだろうか。


「よし、そろそろ帰ろうか」


「そうですね」


弁当を持った俺達は立ち上がって歩き出した。

そして俺は知らなかった。


この中庭は四面を校舎に囲まれていてほとんど全ての教室から見下ろせてしまうことに。

そして詩織の知名度は学校でも有名であり、学校にいた人のほとんどが目撃していたことに……


────────────────────────

感謝!


蒲生 竜哉 様


おすすめレビューありがとうございました!




勘違いされたくないって言ってるけど勘違いしてるのは徹だけ。


砂乃「……早く気づいたほうがいいよ?」


徹「なんのことだよ?」


砂乃「………」


徹「………」


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『どうやら僕はラノベ世界の聖女の幼馴染らしい、学園で数年ぶりに再会したらなんかヤンデレになってるんだけど?』


https://kakuyomu.jp/works/16818093074752962029


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