第13話 もはや別人なんだが

体育が終わり教室へ戻ろうとしているとき。

俺はストーカーに付きまとわれていた。


「徹!お前すっげぇバスケ上手いじゃん!よかったらバスケ部入らね?」


「やだ。俺は残念ながら野球をやる。というわけでバスケ部入部はお断りだ」


こいつは小坂井こさかい純平じゅんぺい

お調子者で身長が高くバスケ部員らしい。

バスケの試合が終わってからずっとこの調子だ。

俺にバスケの才能なんてあるはず無いのに。


「そういわずにさ!お前初心者なんだろ?それであれはずげーって!」


「そう言われても嫌だ。俺は野球部なんでな」


と、こんな調子でしつこい。

そんなことよりもこいつの身長分けて欲しいんだが。

身長があればその分筋肉量が増えて打球が飛びやすくなるからな。

もちろん筋肉だけが全てというわけではないけど。


「お前今別のこと考えてただろ。真剣に考えてくれよ〜!」


「考えるまでもなく却下」


「ぐっ……じゃあわかった!」


「何が分かったんだよ?」


「俺がお前を口説き落とす!それで絶対に俺と一緒に青春を送ってもらう」


めっちゃ馬鹿なこと言い出したな、こいつ。

男から口説かれるとか普通に嫌なんだが。

でも小坂井は俺がどんだけ断ろうと屈しない鋼の精神を持つ奴だった。


「だから友達になろうぜ!」


「まぁそれくらいならいいけど……」


「じゃあお互い名前呼びってことで!な?徹」


「はいはい、純平。これでいいか?」


「ばっちりだ!」


純平はそう言っていきなり肩を組んでくる。

馴れ馴れしいが運動部なんてみんなこんなものだ。

俺は別に嫌いじゃない。

それにしつこいけど純平は悪いやつではなさそうだしいい友達になれそうだ。


「そんなわけで親友。次の授業の宿題を見せてもらえないだろうか?」


「宿題くらい自分でやれよ……そもそも休み時間なんてほとんど無いし間に合うのか

?」


「そこはまあ気合でなんとかする」


「はぁ……今回だけだぞ?」


「やっぱ持つべきものは大親友だな!」


ほんと、調子のいいやつだ。

さっき友達になろうとか言ってきたくせにもう大親友かよ。

今度何か奢って貰うとしよう。


「あ、わり。俺ちょっとトイレ行ってくるから先戻っててくれ」


「おう」


トイレに行ってたらそれこそ宿題が終わらないだろうと思ったが素直に送り出した。

生理現象だしな。

純平を見送ると聞き慣れた声に話しかけられた。


「徹くん、さっきの方はお友達ですか?」


「詩織か。そうだな。さっき友達になった小坂井だ」


「ふふ、とても楽しそうに話してましたね」


詩織は俺の隣を歩きながら笑う。

その表情はとても柔らかく、さっきまでバスケで無双しまくっていた凛々しい顔と比べるとまるで別人のようだ。


「まあね。話は変わるけど詩織大活躍だったな。周りの男子たちも感心していたよ」


「えへへ、徹くんに応援されたので頑張っちゃいました。徹くんもかっこよかったですよ」


「はは、ありがとう。詩織が見てるのが分かったからヘマ出来ないなって思ってたんだよ」


「それは私だからですか……?クラスの女子とかじゃなくて?」


「……?当たり前だろ?まだ女子とはそこまで仲良くないし一番仲の良い詩織によくは思われたいさ」


そう言って詩織を見ると顔を赤くしていた。

運動後だし熱いのだろうか。

でもさっきはこんなに赤くなかったような……


「顔赤いけど大丈夫か?」


「だ、大丈夫ですっ!」


「ちょっ!?おいっ!」


そう言って詩織は俺の腕に抱きついてきた。

俺の腕で赤くなった顔を隠している。

俺が頭を撫でたときはあんなに恥ずかしがってたのに……


「腕を組むのは恥ずかしくないのか?それに俺汗臭いぞ?」


「自分からやる分には大丈夫なんです。それに前にも言いましたが徹くんは汗臭くありません」


どうやら頑として譲らないらしい。

どう考えても臭うと思うんだが……

でも詩織もかなり運動していたはずなのに全然汗臭くないんだよな。

この差はなんなんだろう。


「詩織は汗臭くないよね。なにか使ってるの?」


「あ、あまり嗅がないでください……徹くんに臭いと思われたら私、生きていけません……」


「それならくっつかなければいいのに……」


「乙女心は複雑なんです」


「そうか。でも汗の匂いどころか少し甘い匂いがする」


俺は乙女心とやらを理解することを諦めとりあえずフォローを入れることにした。

詩織はホッとしたようにため息をつく。


「汗ふきシートを使ってるんです。いい匂いなので結構お気に入りなんですよ」


「へぇ……」


「よかったら徹くんも使いますか?」


「いいのか?くれるなら喜んで使わせてもらうけど」


「いいですよ」


そう言って詩織は持っていたポーチを漁り始めた。

そして汗ふきシートを取り出した。

お気に入りというのは本当のようで確かに詩織が使っているのを見たことがある。

詩織は何枚か取り出し俺にくれた。


「ありがとう」


「ふふ。これで同じ匂い、ですね」


「……?ああ、そうだな」


詩織は何故か上機嫌だった。

理由はよくわからないけど詩織が笑顔なら何でもいいか。



────────────────

徹を狙う詩織のライバル?の小坂井純平が登場です!

いやぁ……モテモテですなぁ……(BL要素は今後一切こざいません)


砂乃も徹の宿題を写したい……

そう思って出来上がったのが小坂井純平です。



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