第11話 もはやクラスメイトのチームワークが良すぎるんだが
「なあおい!どういうことなんだよ小杉!」
「なんで手を繋いで登校してきたんだ!?まさか付き合ってるとか?」
「え、えーそれはだな……」
俺は今、絶賛取り調べられ中である。
なにせ学校でも美少女だと有名で告白を断りまくってる詩織と手を繋いで教室に入ったのを現行犯で目撃されてしまったのだから。
後ろの席では詩織も女子たちに囲まれ質問されまくっていた。
「佐伯さんって小杉くんと付き合ってるの?」
「手を繋いですごく仲が良さそうだったけど……」
「ふふ、皆さんのご想像にお任せします」
余計なことを言うんじゃない!
そんな言い方したらまず間違いなく誤解されるだろうが!
だが詩織はどんな質問をされても想像に任せるとしか言わない。
もう女子陣営は付き合ってる方向で結論が決まりかけていた。
まずい……まずいぞ……!
「おい!どこ見てるんだ小杉!」
「質問に答えろよ!」
女子の方の誤解を解きに行こうとするも目の前の男子たちに阻まれる。
くっ……まずはこいつらからだ!
「まずは説明させてくれ!俺と詩織は付き合ってない」
「下の名前呼び!?」
「いよいよ怪しくなってきたな……」
しかし逆効果だったようだ……
一部の男子は目を血走らせ殺気がほとばしる。
背筋が凍り本気で命の危険を感じる。
「ち、違うんだって!俺と詩織は幼馴染なんだ!」
「え〜!幼馴染でカップルってこと!?」
「なにそれ素敵!」
なんと詩織を取り囲んでいた女子たちが戦いに参戦してきた。
完全包囲されネズミ一匹すら通さないほどがっちり固められている。
なんでみんな高校に入学してこのクラスになったばかりなのにこんなにチームワークがいいんだよ!?
「だから俺と詩織は付き合ってないんだって!なあ詩織?」
「私にとって徹くんは大切な(幼馴染)人ですよ」
「キャー!」
「そんな馬鹿な……」
今『幼馴染』という大事な部分を伏せやがったな!?
男子たちが血涙を流し女子たちが黄色い声を上げてるじゃないか……
教室はもう大騒ぎになり始め収拾がつかなくなってきた。
仕方ない……
「みんなストーォォォォォォップ!」
野球部で鍛えられた喉と腹式呼吸をフル活用し全力で静止させた。
さっきまでの喧騒が嘘のように静まりかえる。
「いいか、みんな。俺と詩織は本当に付き合っていないんだ。手を繋いできたのだって俺達が兄妹のようだからこそだ。そこに恋愛的な意味はなくあるのは家族愛のようなものなんだよ」
「兄妹……」
「なーんだ。そういうことだったのか」
「じゃあまだ私にもチャンスがあるってことなのかな……?」
「佐伯さんが相手なら無理かもしれないって思ってたけど意外といけるかも……」
「うおぉぉぉぉ!佐伯さんはまだフリーだ!」
先ほどとはまた違った喧騒が起こる。
男子だけでなく何故か一部の女子も喜んでいた。
でもどうにか誤解は解けたようだ……
それと同時に予鈴が鳴りみな各々の席に戻っていく。
俺は出席番号順的に真後ろに座っている詩織へ話しかける。
「ちゃんと誤解を解いたぞ。いやー上手くいってよかったぁ」
「なんでこうなっちゃうんですか……上手くいったと思ったのに……」
「え?上手くいっただろ。これ以上ないくらい大成功だ」
「私はこれ以上無いくらい大失敗です……」
よくわからないけど詩織はうつむいて少し落ち込んでしまった。
い、一体どうすれば……!?
あ、そうだ……!
俺は優しく詩織の頭を撫で始める。
「〜〜っ!?ど、どうしたんですか?」
「いや、なんか落ち込んでるみたいだしさ。昨日撫でて欲しいって言ってたから元気出るかなって」
「外でなんて恥ずかしいです……」
自分は人前で腕を組んだり手を繋いだりしてたくせに。
変なところで恥ずかしがる詩織が可愛くて面白くてつい笑ってしまう。
俺も少し恥ずかしいが詩織の頭を撫でる手は止めない。
「嫌かな?嫌ならすぐにやめるけど」
「それは………嫌じゃないです……」
「ん。じゃあ先生が来るまでこうしておいてやるよ」
詩織は恥ずかしそうに耳まで赤くしながらも止めるようには言わなかった。
やはりなんだかんだ甘えん坊なのだ。
こういう部分があるからしっかりしていても姉じゃなくて妹のように思ってしまうんだよな。
可愛い妹の頼みなら多少恥ずかしくても我慢しようじゃないか。
「どう?」
「おかげさまで元気出ました」
「それならよかったよ」
このやりとりと詩織の乙女の表情を見たクラスメイトの大半は察してしまった。
(((あ、これ希望ないやつだ……)))
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この作品はフィクションですので野球部員が全力で叫んでもクラスメイトの鼓膜は無事です。
野球部が実際にやったらおそらく耳が壊れるので絶対にまねしないでください by元野球部員の砂乃
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