第9話 もはや俺のズボラを見抜かれてるんだが

朝、アラームの音と共に目が覚める。

今の時間は朝の5時半ほど。

まだ眠い目を擦り洗面台で顔を洗い完全に覚醒する。


「はぁ……さっぱりした……」


タオルで顔を拭くと一日が始まった感覚がする。

俺はパジャマを着替え動きやすい服に着替え始めた。

ランニングに行くためである。

うちの学校は大して強くない公立校なので朝練がないのだ。

なので自分で練習する必要がある。


「うぅ……寒い……」


今はまだ4月だ。

少しずつ暖かくなってるものの朝はまだ少し寒い。

あとで汗をかくこと見越して薄着を着ているのが主な原因だが。


俺は念入りにストレッチをする。

こんなことで怪我をしたらアホらしすぎて監督に報告できないからな。

俺がストレッチをしていると昨日翻弄させられまくった声が聞こえてきた。


「ふふ、おはようございます。徹くん」


「詩織?おはよう。なんでまたこんな時間に?」


後ろにラフで動きやすい格好をして立っていた。

普段の落ち着いた印象と異なり活発的なイメージを抱く。


俺は詩織がそんなに朝に強くないことを知っている。

だからこんな時間に起きているのが意外だった。

もちろん朝弱いからといって詩織が遅刻している姿など見たことないが。


「徹くんがこの時間にランニングをなさっていると昨日おばさまから聞きました。ですのでマネージャーとしてお手伝いしようかと」


どうやらまだ俺の知らないマネージャー業務があったようだ。

絶対そんな仕事無いと思うんだけどなぁ……

まあ手伝おうとしてくれる気持ちがありがたいし嬉しいから文句なんてあるはずもないけど。


「手伝ってくれるのは嬉しいけどまさか一緒に走るの?女子からしたら結構長い距離走るけど……」


「流石に徹くんと一緒に走るのは無理です。なので自転車でついていかせてください」


「ああ、そういうことなら俺としては構わない。ついてきてくれるなら大歓迎だ」


詩織は運動神経がいいから意外と走っても大丈夫かもしれない。

でもこれが終わると学校があるわけだしあまり詩織に無理してほしくない。

詩織はニッコリ笑って自転車を持ってきた。


「それじゃあ行くか」


「はい。後ろから応援してますね」


俺は最初はゆっくりと走り出す。

後ろから自転車のチェーンの音が聞こえてくる。

そのまま15分ほど徐々に速度を上げつつ走る。


「頑張ってください!あと半分ですよ〜!」


詩織にあらかじめルートを伝えておいたので残りの距離の報告が来た。

もちろんいつも走ってるのだから距離くらい分かってるのだけど詩織の応援が届いて普通に嬉しい。

女の子に応援されるとやる気が出るのは大多数の男子高校生に当てはまるだろう。

俺はそのままペースを上げ行きよりも早く帰ってきた。


「はぁ……はぁ……」


「お疲れ様です。すごく速かったですね。びっくりしちゃいました」


詩織が水筒とタオルを手渡してくれる。

俺がずぼらで用意していないのをあらかじめ見抜いていたのだろう。

俺は詩織の心遣いに感謝して水筒に入っていたお茶を飲んだ。


「ふぅ……生き返るな……水筒とタオル貸してくれてありがとな。洗って返すよ」


「別にそのまま返して頂いて構いませんよ。気にしないでください」


「親しき仲にも礼儀ありって言うだろ?洗って返させてくれ」


「そうですか。ではよろしくお願いします」


しばらく二人で並んで座り雑談をする。

風が火照った体に心地よくて汗が引いていく。

だが風に当たりすぎると体が冷えすぎて逆に風邪を引いてしまうのでそろそろ戻らなくては。


「俺、そろそろシャワー浴びてくるよ。また学校でな」


「あ、その……一緒に学校に行きませんか?」


「おーいいぞ。じゃあ準備が終わったらピンポン押しに行くよ」


「ありがとうございます……!お待ちしていますね!」


詩織はいい笑顔で答えてくれた。

一緒に登校するだけでここまで喜んでくれるならお安い御用だ。

一旦別れの挨拶をしてそれぞれ自分の家に戻った。


それからシャワーを浴びて朝食を取り学校へ行く支度をする。

学校に家が近いと朝練をしても時間に余裕があっていいよな。


「よし……じゃあ行くか。いってきます」


忘れ物の確認だけサッとして家を出る。

そして目的地の隣の詩織の家のインターホンを押す。


「はーい、あら!徹くんじゃない!おはよう!」


「おはようございます。おばさん」


扉を開けて出迎えてくれたのは詩織のお母さんだった。

フレンドリーな人で俺の母さんとも仲が良く俺のこともよくかわいがってくれた。

母さんと仲がいいのは類友というやつだろう。


「詩織はいますか?」


「いるわよ!ついに娘をくださいってこと!?いいわよー!徹くんなら喜んで娘を任せられるわ」


「違いますよ……ただ一緒に学校に行くだけですから」


「ちょっとお母さん!?徹くんに何言ってるんですか!?」


どうやら会話が聞こえていたらしく詩織が慌てて奥から出てきた。

珍しく結構怒っているがおばさんはどこ吹く風だ。

この光景は昔から変わらないのでもはや見慣れている。


「そろそろ行くよ、詩織」


「あっ!はい!」


「二人共いってらっしゃーい」


パタパタと小走りで詩織が慌てて隣に来る。

詩織と共に学校に歩き出した。



────────────────

最近家から出なさすぎて昨日が土曜だと気づかず7時に投稿してました(汗)

春休みは人を狂わせる……


もう面倒くさいので全部7時投稿にします。

新作を投稿するときは今までと変わらず土曜の9時投稿のままです。


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