第6話 もはやスク水はビキニよりやばいんだが
「どうしてこうなったんだ……」
「ここまで来たらもう諦めてください」
俺は脱衣所で呟き詩織にツッコまれる。
頭の中は色んな感情でぐちゃぐちゃだった。
その理由としては両親だ。
現実的に親に知られず混浴するのは不可能だ。
だったらいっそのこと親に一言知らせれば混浴を止められるんじゃないかと
しかしあろうことか俺の両親は止めるどころか生暖かい目で進んで俺達を風呂に送り出した。
今日ほど両親の頭がおかしいと思ったことはない。
「徹くん。水着を二着持ってきたんですがどちらがいいですか?せっかくなので徹くんの好みの方を着ます」
「ん?」
聞かれたので詩織の方を見ると右手にビキニ、左手にスク水を持っていた。
うん、なんでスク水?
詩織がなぜスク水を持ってきたのか疑問に思いながらもビキニを指差そうと思った瞬間俺の頭にいい考えがひらめく。
ここはあえて露出が少ないスク水のほうがいいのではないか?
考えれば考えれるほどスク水のほうがいい気がしてきた。
「それじゃあスク水で頼むよ」
「徹くんにそんな趣味があったんですね。安心して下さい。ちゃんとスクール水着を着ますから」
俺にそういう趣味が思われるのは釈然としないがこの際仕方ない。
「では先に入って待っていてください。私も着替えたら行きますので」
「わ、分かった……」
俺は先に風呂場に行きうずくまり頭を抱えた。
どこか夢のような話だと思っていたのにここまで来ると一気に現実味をマシてくる。
「うぅ……頼むから耐えてくれよ……俺」
扉には詩織の影がゴソゴソと動いているのが見える。
今はおそらく水着に着替えているのだろう。
そして影が止まり扉が開いた。
「お、お邪魔します……」
恐る恐る、といった様子で詩織が入ってきた。
俺がリクエスト?した通りスク水を着ていた。
そしてここで俺はあることに気づく。
(あれ……!?スク水ってなんかビキニよりやばくね……!?)
詩織の水着姿は端的に言ってやばかった。
スク水はぴっちりと詩織の体に張り付きボディラインが浮き彫りになってしまっている。
改めて詩織のスタイルの良さを痛感させられビキニよりやばい気がする。
俺は詩織のビキニ姿を見たことないけど。
「徹くんは夕飯前に体洗ったんですよね?もう一度洗いますか?」
「もうなんでもいいよ……」
「それじゃあ洗いましょうか。髪、失礼しますね」
「え!?」
そして俺は自分の発言を後悔することとなった。
詩織が言っていた洗うというのは詩織が洗うということだったらしい。
てっきり自分で洗うか?という意味の質問だと思ってたのに!
「ちょっ待──」
「ほら、洗いますから目を閉じていてください」
俺が止める間もなく詩織は俺の髪を洗い始める。
俺が自分で洗うときよりも何倍も丁寧で優しい手つきだ。
正直気持ちがいい。
「どこかかゆいところはございませんか?」
「あ、ああ、大丈夫だよ」
「ふふ、それはよかったです。それでは今から泡を流すので目をつぶっていてくださいね」
俺は言われた通りに目をつぶる。
すると上からシャワーで湯をかけられ泡が流れていく感覚がする。
「はい、もう目を開けていいですよ」
「ありがとう」
はぁ……ようやく終わったか……
俺が立ち上がってお礼を言い風呂場を出ていこうとすると詩織に手を掴まれ止められた。
「まだ終わってませんよ。次はお背中を流しますから」
「え!?い、いや、もういいよ。これ以上詩織に迷惑をかけるのはよくないし……」
「私は全く迷惑だなんて思ってません。ですので問題ありませんね」
「俺ちょっとお腹が痛いなぁ……なんて」
「嘘をつかないでください。徹くんの嘘はすぐわかるんですから」
「はい……」
俺は一瞬で嘘を見破られ大人しく再び座る。
保ってくれよ……俺の理性……
「それでは洗っていきますね」
詩織は俺に一言告げ泡まみれの手で背中を洗い始めた。
なんで手なの!?ボディタオルもすぐそこにあるのに!?
詩織のスベスベの手の感覚が伝わってきて心臓が跳ねる。
「詩織さん!?タオルは!?」
「ふふ、今日は手で洗いますね」
全く答えになってない!?
何故か詩織は上機嫌で俺の背中を隅々まで洗う。
「昔はあんなに小さかったのに徹くんの背中はすっかり男の子ですね。はぁ……ゴツゴツしてて固くて大きい……♡」
んっん……!
耐えろ……俺……詩織は天然で言ってるだけだ……!
決してわざと言ってるわけじゃないんだ……!
俺は自分に必死に言い聞かせる。
舌を噛み痛みを得ることでなんとか俺は理性を保っている。
「はい、おしまいです」
詩織は俺の体についた泡を流し俺にそう伝える。
耐えきった……俺は耐えきったんだ……!
俺はガッツポーツをする勢いだった。
耐えきった自分を褒め称えたい!
「それでは次は徹くんが私の髪を洗ってくださいね?」
「………………え?」
どうやら俺の試練はまだ終わっていないようだった。
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