第3話 もはややりすぎてしまったんだが

米粒事件がようやく落ち着き今は午後7時ほど。

なぜか詩織は俺のベッドに腰掛けて漫画を読んでいた。

既に制服から着替えていてモコモコの可愛らしい白い服を着ている。


「なぁ、そろそろ帰らなくて大丈夫か?」


「家も隣ですし大丈夫ですよ。おばさまからは泊まってくれと言われましたが流石にそれはお断りさせていただきましたけど」


母さんは何言ってるんだ……

うちに空いてる部屋は無いしそもそも明日は学校だ。

それを差し引いても女子高生が男子高校生のいる家に泊まるのは無しだろう。

というか男子の部屋にやってきてベッドに座ってるのも無防備すぎるのだが。


「全く母さんは……ていうか詩織……俺は男だぞ?」


「はい。知ってますよ?」


詩織はそれがどうしたのかと首をかしげる。

なんで美少女は仕草一つ一つが画になるんでしょうかね?

俺は詩織に男の危険性を説き始める。


「男ってのは欲に忠実な生き物なんだ。あまり無防備な姿を見せないほうがいい」


「ふふ、大丈夫ですよ。私は徹くんのことを信頼していますから」


そう言って詩織は微笑む。

その笑みは16歳が放つ色気には見えなくて頭がクラクラした。

これは詩織に男の恐怖を知ってもらうしかないか……

俺は半分おかしくなった頭でそう考える。


「はぁ……詩織、ちょっとだけ我慢してくれ」


「へ?ひゃあ……」


俺は詩織をベッドへ優しく押し倒す。

そして詩織が痛くないように手を固定して俺は詩織を見下ろす形になった。


「こうやっていつ襲われるかわからないんだぞ?体格差だってあるから簡単に逃げられない」


「ひゃ、ひゃい…………」


見ると耳まで赤くなった詩織が目をつぶって顔をそむけていた。

それを見て俺の頭が一気に冷静になる。

俺は慌てて手を離し詩織の上からどいた。


「す、すまん……」


「い、いえ……大丈夫です」


俺達の間にしばらくの沈黙が流れる。

ああ……やってしまった……

あの時は気がどうかしてついこんなことをしてしまった……

俺が自己嫌悪に陥っているとずっと寝転がっていた詩織が起き上がり俺の横に座る。

その顔はまだ少し赤いままだ。


「本当にごめん」


「そ、そのことはもう気にしてませんから。それよりも一つお尋ねしてもよろしいですか?」


「いくらでも聞いてくれ。俺に答えられることだったらなんでも答えるよ」


詩織の質問ならなんでも答えよう。

……さっき押し倒したのが申し訳ないからじゃないからな?

質問されたらいつだって答えるさ。


「ありがとうございます。それでは……徹くんにとって私は異性ですか?家族ですか?」


「え……?」


質問の内容は意外なものだった。

冗談で聞いてるのかと思ったが詩織の表情は真剣だった。


「徹くんは私に手を出したいと思わないんですか?」


「ストップ!どうしてそんな話になったんだ!?」


「だって……私が無防備でいても徹くんは押し倒しただけでそのあとは何もしなかったじゃないですか……」


つまり何かしてほしかったということか?

いやいやそんなわけがない。

詩織のことだから自分に魅力は無いと思ってしまっただけだろう。

詩織は自己評価が少し低いところがあるからな。


「俺は詩織のことを家族のような存在だと思ってる。だけど詩織は間違いなく魅力的な女の子だと思っているよ」


「……本当ですか?」


「もちろん。美人だし、笑顔が可愛いし、努力家だし、優しい。他にもたくさん詩織のいいところを俺は知ってるよ。だから自信を持っ───」


偉そうに熱弁していると詩織が固まっていた。

そして詩織は復活したかと思うと俺の枕に顔をうずめてしまった。

ちらりと覗く詩織の耳が真っ赤に染まっていてやりすぎてしまったことに気付く。


「徹くんはずるいです……」


「え、えーっと……ごめん?」


なんて返すのが正解か分からなくて疑問形になってしまう。

詩織は枕から顔を上げる。

その表情はさっきより少しだけ明るくなっていた。


「許してあげます。徹くんにとって私は女の子であることが分かりましたから」


「あー……まぁそれはそうだな。魅力的であることは保証しよう」


「そ、そんなふうに余裕でいられるのも今のうちです。望みがあると分かったので私は今までよりも頑張るって決めましたから」


急に詩織は張り切り始めた。

今の話の流れでどこに何を頑張る要素があったのだろうか。

ともかく本人がやる気になってるならそれでいいかと半ば思考を放棄する。


「お、おう……何を頑張るのかわからんが頑張れよ。応援してる」


「はい。覚悟しておいてくださいね?」


その笑顔はとても眩しかった。

あまりの美しさに目を離すことができない。

数秒ほど経ち自分が詩織に見惚れていたことに気付く。

……いかんいかん


「まぁ覚悟?しとくよ」


「ふふ、そうしてください」


詩織は楽しそうに笑い立ち上がる。

そしてドア付近まで移動してこちらを振り返った。


「それじゃあ早速……い、一緒にお風呂に入りませんか?」


「……………………え?」




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