第2話 もはや米粒と幼馴染の組み合わせは破壊力抜群なんだが

「……ただいま」


「お邪魔します!」


詩織と一緒に家に入る。

久しぶりに詩織がいるのでなんだか変な感じだ。


「あら、おかえり。詩織ちゃんも久しぶりに来てくれてありがとね〜」


母さんが奥からやってきた。

俺への出迎えはそこそこにしてすぐに詩織の方へ話しかける。

母さんは昔から詩織のことをかわいがっていたからなぁ。

今日は詩織が来て本当に嬉しいのだろう。


「こんにちはおばさま。今日はありがとうございます」


「いいのよ気にしないで。詩織ちゃんは娘同然なんだから」


「うふふ、嬉しいです」


目の前で詩織と母さんの仲睦まじい会話が交わされる。

俺のことは完全に蚊帳の外だ。

母さんと話したいことは特にないので別に構わないけどな。


「シャワー浴びてくるよ」


「いってらっしゃい。じゃあ私はリビングで詩織ちゃんの話でも聞かせてもらおうかしら」


「わ、私の話ですか……!?」


そういって母さんは詩織を連行していった。

まぁ詩織が嫌がるようなことは聞かないだろうし大丈夫だろう。

俺は風呂場に行き部活の汗を流す。

そろそろご飯もできる頃だろうし湯には浸からず風呂場を出た。

髪を拭きながらリビングへ行くと父さんも交えて詩織と両親が楽しそうに話をしていた。


「ただいま。今シャワー浴びてきた」


「おかえり。それじゃあ徹も出てきたことだし夕ご飯にしましょうかね。今持ってくるわ」


「あ、私も手伝います」


母さんと詩織がキッチンの方へ消えていく。

リビングには俺と父さんだけが残された。

父さんは機嫌良さそうに話しかけてくる。


「詩織ちゃんは本当にいい子だねぇ。うちの娘になってほしいくらいだ」


「残念ながら俺と詩織はそういう関係じゃないぞ。詩織だって俺のことは恋愛対象外だろうしな」


父さんの意図を汲み取ってあらかじめ言っておく。

詩織のことが好きか嫌いかで聞かれればもちろん好きだ。

だが人として好きなのであって付き合うとかそういう話じゃないし詩織もそんなことは望んでいないはずだ。


「はぁ……お前ってやつは……」


「なんだよ。俺変なこと言ったか?」


「いや、もういいよ……ごめんな詩織ちゃん、うちの息子をこんな鈍感に育ててしまって……」


なぜか父さんはこの場にいない詩織に謝り始めた。

誰が鈍感だ。余計なお世話だよ!

鈍感じゃないと反論したいところだが詩織にもよく似たようなことを言われているので黙っておく。


「はーいできたよ〜!今日の夕ご飯は唐揚げで〜す!」


「おまたせしました」


母さんがやけにハイテンションで唐揚げを持ってくる。

後ろから詩織もサラダの皿を持ってやってきた。

俺達は会話を中断し皿を受け取って並べる。

そして俺と詩織が隣に、両親が俺達に向き合う形で席についた。


「「「「いただきます」」」」


早速唐揚げを一つ頬張り白米をかきこむ。

空腹だった体にはたまらないおいしさだ。

詩織もなんだかんだお腹が空いていたようでニコニコしながら上品に唐揚げを食べている。


「本当におばさまの料理は美味しいです。よろしければ教えていただけませんか?」


「あら?誰か振る舞いたい人でもいるのかしら?」


「そ、それは……」


母さんが意地悪く聞く。

あれは完全に面白がって冗談で言ってるな。

それにしても詩織が真っ赤になって固まってるけどどうしたのだろうか?


「冗談よ。私で良ければいくらでも教えるわ」


「……!ありがとうございます……!」


詩織の顔が一気にパッと輝いた。

今のままでも相当料理は上手いと思うけど……向上心の塊だな。

詩織のそういうところは本当に尊敬できる。


このような調子で雑談を交わしながら終始和やかな雰囲気で食事は進んでいく。

俺は何回かおかわりをしてしっかりと腹を満たすことができた。


「ふぅ……たくさん食べたな……」


「ふふ、流石男の子って感じでしたね」


隣で詩織が上品に笑う。

詩織は元々少食なので一人前を食べたあとは食べる俺を楽しそうに見ていた。

見ていて面白いものでもないと思うけどな。


「あ、徹くん。口元にご飯つぶ付いてますよ」


「え?どこ?」


全く気づかなかった。

慌てて探すがどこに付いてるか見つからない。


「ふふ、ここですよ」


詩織が俺の口元に手を伸ばし米粒を取ってくれる。

そしてそのご飯粒を自分で食べた。


「え?」


「やだ〜詩織ちゃんってば大胆〜!」


俺はつい言葉が漏れてしまい母さんはきゃあきゃあと声を上げる。

詩織は意識せずにやったようでどんどん顔が真っ赤に染まっていった。

俺も頬が熱くなって赤くなってしまっているのが自分でもわかる。


「ち、違うんです!今のはわざとではないといいますか……」


「照れなくていいのよ詩織ちゃん!あ〜もう本当に可愛いんだから」


詩織は首や耳までも真っ赤にして必死に弁明をしている。

俺はそれを固まってしまって見ていることしかできなかった。



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