部活のマネージャーをしてくれてる幼馴染、サポートのレベルがもはや奥さんなんだが

砂乃一希

第1話 もはや幼馴染が家に来ることになってるんだが

「なあ詩織。本当に野球部を選んでよかったのか?」


「なぜですか?」


俺──小杉こすぎとおるは隣を歩く幼馴染の佐伯さえき詩織しおりに問いかける。

俺達はこの春に高校生になったばかりで今日は入部初日だったのだ。

今は詩織と下校の途中というわけである。


「サッカー部やバスケ部の勧誘もあっただろ?そっちにはいかなくていいのかなと思っただけだ」


端的に言えば詩織はすごく可愛い。

長くてよく手入れされたサラサラでストレートの黒髪、整った目鼻、瑞々しく可愛らしい唇、モデルのようなスタイル、その姿はまさに大和撫子やまとなでしこのように美しく誰が見ても美少女だと言うだろう。

そのため自分に自信がある先輩たちが詩織の勧誘に殺到したのだ。


「先輩たちに興味無いですし別にいいんです。私は野球部のマネージャーになりたかったので」


詩織は躊躇なく首を横に振る。

どんなにカッコいい先輩であっても興味無い、というのが詩織らしい。

というのも詩織は今まで全ての告白に首を横に振っているのだ。


「恋愛に興味が無い詩織らしいね」


「別に興味がないわけじゃないですよ」


「あれ、そうなんだ」


てっきり恋愛はしたくないのだと思っていた。

詩織のタイプの人ってどんな人だろう?

やっぱり金持ちハイスペックイケメンとかかな?

それくらいでないと釣り合わないと思わせてしまうのが詩織のすごいところだ。


「いつかきっといい出会いがあるさ」


「むぅ……なんでそうなるのですか……私がどうして野球部を選んだか分かってないんですか?」


「……?野球が好きだからだろ?」


俺がそう言うと完全に呆れた顔をされた。

イケメン達の誘いを断るほど野球が好きなわけじゃないのか?

……解せぬ。


「もちろんそれも理由の一つではあります。でも本当の理由は……」


「本当の理由は?」


「………自分で考えてみて下さい」


「えぇ………」


どうやら少し拗ねてしまったようだ。

しかしいくら考えてみても理由が思いつかない。

幼馴染といえど知らないことはたくさんあるのだ。


「うーん……分からない。教えてくれないか?」


「そんなに知りたいですか?」


詩織はいたずらっ子のような笑みを見せる。

普段は大人っぽくてもこういう一面はあってとても可愛らしい。


「ああ。気になるから教えてくれ」


「ふふ、それは……まだ内緒です。えいっ」


「ちょっと!?」


可愛らしいかけ声と共に詩織がいきなり左腕に抱きついてくる。

まだ冬服とはいえ詩織の双丘の弾力が伝わってくる。

それに俺は部活終わりで間違いなく汗臭い……!


「危ないからいきなり抱きつくなよ。それに俺臭いだろ?嗅がれるのは恥ずかしいというか……」


「とてもいい匂いですよ?仮に汗の匂いがしてもそれは徹くんが頑張った証ですから臭いだなんて思いません」


詩織は俺の腕をホールドしたままニッコリ笑う。

そうは言われても恥ずかしさは変わらないし腕に当たっている柔らかい感触は続いている。

だが振り払うわけにもいかないし詩織が諦めると思えないので好きにさせることにした。


「……匂いが移る前に離れろよ」


「私は気にしませんけどね」


俺の許可を得たことで詩織はより強くホールドしてくる。

見るからに上機嫌になり鼻唄を歌っている。

俺の腕なんか掴んで楽しいのだろうか?

疑問を抱きつつも特に聞いたりせず並んで歩く。

すると……


ぐうぅぅ


お腹の音がなってしまった。

部活前に軽食を食べてから何も食べてなかったからな。

……腹減った。


「ふふ、今日も頑張ってましたもんね。もうすぐ家に着きますからあと少しの辛抱です」


「そうだな。今日の夕飯は何かなぁ……!」


今日の夕飯に思いを馳せる。

運動後の飯はとにかく美味い。

自然とテンションも上がるというものだ。

部活で疲れが溜まって重くなっていた足取りも軽くなる。


「見るからに元気になりましたね。おばさまのお料理は美味しいですから気持ちは分かりますが」


「確かにそうだな。でも詩織の料理も本当に美味しいと思うぞ」


「そ、そうですか?えへへ……」


詩織は自分が褒められるとは思っていなかったらしく少し頬を染めて微笑む。

だがこれはお世辞ではなく本心だ。

たまに食べさせてもらうのだがどの料理も美味しいのだ。

店のような味ではなく家庭的でホッとする味付けが個人的に素晴らしいと思う。


「お、到着だな」


「あら、そうですね」


気づけば家の前に到着していた。

俺達の家は隣なのでここで解散である。

だが詩織は俺の腕を抱いたまま離そうとしない。


「どうした?家帰らないのか?」


「はい。今日は徹くんのお家にお邪魔させてもらうので」


「え!?」


もちろん詩織が家に来たことは何度もある。

だがそれは小さい時までで大きくなって異性というのを意識しだすと同時に減っていった。

俺の野球が忙しかったのもあるが。

ってそんなことよりも、だ!


「今から来るのか!?」


「はい。ちゃんとおばさまに許可はいただきました」


なんで教えてくれなかったんだよ母さん……!

俺が驚くの分かってて隠してやがったな……!


「それではお邪魔しますね」


「………おう」


そんなこんなで詩織が数年ぶりに家に来ることになった。



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