第11話レイの訓練の話題とユウカの戦い方
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下層を進みながらにぎやかに会話を続ける。
「自分たちのこと棚に上げてSランクはおかしいとかいろいろ言ってるがお前らも大概おかしいからな!」
キメラを倒した後に3人にいろいろ言われたトウヤが文句を言う。
【それはそう】
【ネクサス全員おかしいんだよなあ】
【アルコール入った状態でダンジョンに行くことに反対するやつが一人もいない時点でお察し】
【まあ、でも正直Sランクが狂っているっていうのはカエデの魔法見て納得できたわ】
「私たちは普通ですよ。ねえ?」
「そうそうちょっと回復するのが得意だったり攻撃を受けるのが得意だったりするだけだから」
自分たちはあくまで常識的な範囲内だと主張するユウカとリキヤ。
「いやいや、死んでさえいなければ大抵治せるヒーラーとSランクの俺たちの攻撃をある程度受けられるタンクが普通であってたまるか!」
「でも私ができるのって回復することだけで私自身は弱いですから、仲間が強くないと意味ないですし」
「僕もSランクの攻撃受けられるって言っても自分を守るのに精一杯でタンクとしての役割を果たせなくなるし、自分を守るのも持って5分ぐらいだからなあ」
やっぱり私たちは普通だと主張するユウカとリキヤにレイが割って入る。
「まあまあ、俺からしたらユウカとリキヤ含めてみんなおかしいから争うなって」
あたかも普通なのは自分だけだというように主張するレイ。そんなレイに対し
「「お前が言うな!!」」
話に入らず聞いていたヒカリとカエデ含めた全員から突っ込みが入る。
「あるえー?」
予想だにしていなかった全員からの総スカンを食らい困惑するレイ。
「お前のあの死ぬ一歩手前まで行くあの訓練、クランの若い奴ドン引きしてるからな?」
「私たちは見慣れていますけどそれでもちょっとどうかと思うレベルですもんね...」
「ん、さすがにあれはやりすぎだと思う」
「アタシなんてこの前、クランの若い子に僕たちもあんなのやらなきゃいけないんですかって涙目になりながら聞かれたよ...」
「僕もまじめなところはレイの美徳だと思うけど、さすがにアレはね...」
【狂ってるネクサスメンバーからここまで言われる訓練って】
【死ぬ一歩手前? それって訓練というより拷問では】
【一体どんな内容なんだ】
【聞きたいような聞きたくないような】
【やっぱりレイも頭おかしいのか...】
「いやそんな変な訓練してなくない? ただ自分より強い相手と逃げることが不可能な状況でできるだけ時間稼ぐっていうそこまで珍しいものではないやつだよ?」
「本来探索者はそんな状況になったら既に詰んでるからわざわざその訓練はしねえよ」
「でもネクサスの場合時間稼げば助けに来てくれる可能性高いじゃん」
うちには圧倒的な速さを持つヒカリがいるし、と訓練の意義を伝えるレイ。
「そりゃあアタシはレイに限らずネクサスのみんなにピンチが来たら何もかも置き去りにするぐらいのスピードで駆けつけるけどさあ、何も死ぬ手前までやる必要ないじゃん」
「いや傷つけばつくほど動きは悪くなっていくんだからぎりぎりまで粘る練習はしといた方がいいじゃん。うちにはユウカがいるから訓練の後の傷は全部治してくれるし」
「レイの言ってることは間違ってはないし、理にかなっているとは思うんだけどだからと言って実際にやるのは僕から見ても頭狂ってるとしか思えないな」
「ん、私もレイの訓練相手はしたくない」
「いやでも俺はみんなと違って誰にも負けない武器みたいなものないからせめて生き残るためのしぶとさは身に着けとかないと!」
そうでもしないと簡単に死んじゃうよ、と自分の訓練の正当性を主張するレイ。
【なんか理屈は分かるんだけど...】
【実際にやるのは違うでしょ...】
【そもそもAランクの時点で全然弱くないはずでは?】
【まあそれに関しては他のメンバーが強すぎるってのがあるから(震え声)】
「別に今更私たちは訓練やめろとかは言わないですけど若い子の前でやるのはやめてあげてくださいね」
可哀想なんで呆れたような表情で忠告をするユウカ。
「は、はい」
クランの子に恐怖を与えていたという事実を知らされ落ち込むレイをおいて、一行は更に下層を進んでいくと新たなモンスターに接敵する。
ドラゴンのような姿をした立派な翼をもち全長5mを超える体躯をしたモンスターが空を飛びながらこちらを睨み鋭い牙を覗かせている。
【お、次のモンスターか!】
【まだ見たことない奴だな】
【ドラゴンか?】
「これは、ワイバーンですね」
落ち込みから気を取り直したレイが視聴者にモンスターの解説をする。
「ワイバーンはドラゴンに似た姿をしているけどその実大したことないです。ドラゴンと違って大した魔法も使えないですし耐久力もドラゴンに比べたらあってないようなもんです。知能も低いので言ってしまえば空飛ぶトカゲですね」
【空飛ぶトカゲw】
【さっきまで強そうに見えてたのに急に大したことなさそうに見えてきた】
【これ見てるやつ勘違いすんなよ! たしかにドラゴンに比べると弱いかもしれないけど、そもそも空飛んでるってだけで大抵の探索者からしたら厄介だしあの牙で噛まれたら簡単に致命傷だぞ!】
【出たw探索者の注意喚起】
【内容的に詳しいからこの人も下層に行けるレベルなのかな】
【視聴者探索者すらレベル高いのかこのチャンネルは】
「じゃあ次はだれがやる?」
「まだあんま戦ってないのはそこ3人だよな?」
まだ戦っていないリキヤ、ユウカ、レイの3人で話し合いユウカが戦うことに決まった。
「じゃあ私が行きますね」
【お、ユウカちゃんだ!】
【なんでパーティーなのにヒーラー1人で戦おうとしているんだ?】
【ネクサスだから】
【空飛んでる相手にどうやって戦うんだろ?】
ユウカが杖を握ってワイバーンの下に近づいていく。ワイバーンもユウカに狙いを定めて空中から炎の球を飛ばしていく。ユウカは表情を一切変えずただひたすらに炎の球を避け続ける。
その様子にコメント欄では
【炎の球は当たりそうにないけどこのままじゃ防戦一方じゃない?】
【ユウカちゃん対空手段持ってないのかな?】
【ジリ貧じゃない、大丈夫?】
攻撃を与える手段がないのではと心配の声が増え始める。それをみたレイが解説を始める。
「いえ、あれで大丈夫です。確かにあのままずっと空中にいられると攻撃するのが大変なんですけど、ワイバーンは魔力量もそこまで多くないし何より短気なので...ほら! 降りて直接攻撃しに来ましたよ」
ずっと躱され続けたことにいら立ったワイバーンがしびれを切らしてその牙で直接食いちぎらんとユウカ目掛けて急降下してくる。ユウカはそれを待ってましたとばかりにタイミングを合わせて持っている杖をワイバーンの翼に思い切り叩きつける。
「こうなったらあとはこれを繰り返すだけですね。ワイバーンは頭がそこまでよくないので打開策は見つけられないし、ここまで怒っていると逃げることもないです」
ワイバーンはたまらずうめき声をあげて空中に避難するがどう見ても先ほどより空中姿勢が安定していない。再び空中から炎の球を吐くがやはりユウカは危なげなくかわす。やがて魔力が切れたのか炎の球を吐けなくなり、覚悟を決めたような顔で再びユウカ目掛けて急降下する。
先ほどと同じようにユウカがタイミングよく今度はさっきと反対側の翼に杖を叩きつける。両方の翼にダメージを食らったワイバーンはぼろぼろな翼で何とか空中に退避しようとするが上手く飛べない。地に伏したワイバーンにユウカがゆっくりと近づいていきまだ反抗の意志を持っているワイバーンの頭目掛けて何度も杖を振り下ろす。
最初は大きな声で叫んでいたワイバーンの声が次第に声が小さくなっていきついに完全に動かなくなって光になって消えていく。
「何かあれだな。やっぱりユウカの戦い方はえげつないな...」
「戦い方の残酷さはユウカが一番だよね...」
「ん、さすが撲殺天使」
「もう! だからその呼び方やめてくださいって。私は攻撃力がみなさんと比べて低いから何度も殴ることになるのは仕方ないんですってば!」
不本意な二つ名を呼ばれて怒るユウカ。
コメント欄では
【ひえっ】
【これが撲殺天使の由来...】
【もはやワイバーンが可哀想だった】
【最後の断末魔なんてもう...】
【えげつなすぎるだろ】
ユウカに恐れおののく声が多く上がるのだった。
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