第10話酩酊状態でのダンジョン攻略配信

☆3000&300000PV突破しました! ありがとうございます。


それでは本編へどうぞ


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配信を切った後アオイに片付けはしなくていいと一言告げて彼女をクランタワーに残してレイたち一行は渋谷ダンジョンに足を運んだ。上層、中層を爆速で駆け抜け下層に到着してからレイが再び配信を開始する。


「あ、始まったかな。皆さん改めてこんばんわー。今渋谷ダンジョンの下層に到着しましたー。これから下層攻略していきまーす」


【来た!!】

【もう下層!? 一時間も経ってないんだが!?】

【早すぎて草】


「あ、一応これ言っておかないと。えー、本来お酒を飲んだ状態でダンジョン探索に行くことは大変危険な行為です。この配信を見て下層にいってケガしただの死んだだのの被害にあっても当チャンネルは一切の責任を負いません。あくまで探索者は自己責任なので悪しからず」


【それはそう】

【注意喚起大事】

【理不尽な言いがかりつける頭おかしい奴っているからなあ】

【酒飲んでダンジョン行くネクサスもたいがい頭おかしいんだよなあ】


「じゃ、注意喚起も済んだし、渋谷ダンジョン下層攻略に出発進行!」


「「おー!」」


【遠足かよw】

【緊張感ねえな】

【今までのダンジョン配信で一番安心して見れるわ】


お酒が回っているせいもあって普段よりテンションが高く危険なはずの下層を進んでいるとは思えないほどの和気あいあいとした雰囲気で下層を進んでいく。


しかし腐っても最強とうたわれるパーティーある。その後すぐにモンスターの気配をメンバー全員が感じ取り、和気あいあいとした雰囲気は壊れずともどこかピリッとした空気を漂わせる。


「モンスター来ますね」


レイが視聴者に会敵を知らせるとすぐに配信画面に牛の頭を持った筋骨隆々の怪物が現れる。


【ミノタウロスだー!!】

【でけえ】

【3m以上あるんじゃないか】

【大丈夫とわかってても不安になる】


視聴者がミノタウロスを視認してコメント欄が盛り上がったのも束の間。僅か数秒後にはミノタウロスが大きな音を立てて倒れているのだった。


【え、ミノタウロスもう倒れてない?】

【え、いつの間に!?】

【早すぎる】


「ファーストアタックはいただきー!」


犯人は当然のことながら光速の二つ名を持ち世界でも並び立つ者がいないスピードを誇るヒカリ。


「おーさすがにヒカリは早えな」


「ヒカリちゃんのスピードはいつ見ても凄いですねえ」


「ん、でも最初は私が倒したかった」


騒ぐコメント欄とは対照的にネクサスの面々は淡々とヒカリをほめながら歩を進める。


その後も数度モンスターと接敵するも、オークが画面に映る、ヒカリが目にもとまらぬスピードで倒す。オーガが現れる、ヒカリが倒す。シルバーウルフが現れる。ヒカリが倒す。最初はみんなにこにこしていたが三度目でトウヤがついに切れる。


「おい、ヒカリお前ばっか倒してんじゃねえ! ちょっとは自重しろ」


「えー、みんなが遅いからじゃん」


「お前が一番早いんだから仕方ねえだろ、大体俺よりカエデの方がヤバいぞ」


非を認めず相手のせいにするヒカリはトウヤの言葉で黙っていたカエデの方を見る。するとカエデは杖を両手で握りしめわなわなと震えていた。


「あ、えっとカエデ? ごめんね、ちょっとテンション上がっちゃって。ほ、ほら!  次はカエデに譲るから」


「別に譲ってもらわなくていい。次はヒカリごとまとめて魔法で粉砕するから」


「いやマジで本当にごめんなさい」


「まあまあカエデ落ち着いて。ヒカリもテンション上がっちゃっただけだしさ」


「そうですよ、次はカエデちゃんの番ですから。ね?」


恐ろしいことを言うカエデをリキヤとユウカが宥めて事なきを得る。


【カエデちゃん、恐ろしい子!】

【殲滅姫の片鱗が見えたな】

【張り切っちゃうヒカリちゃん可愛い!】


その後少し進むとある気配をヒカリが感じ取る。


「ほ、ほらカエデ。少し先にモンスターハウスがあるみたいだからやっちゃっていいよ」


【モンスターハウス!?】

【それって何ぞや?】

【一度で最低でも10匹以上のモンスターが同時に現れる探索者が死ぬ要因の上位を占める悪魔の罠】

【下層のモンスターが10匹以上!?】

【ひえっ】


数ある罠の中でもダントツで危険度が高く意図せず起動させてしまい、あえなくその命を落とす探索者が後を絶たないモンスターハウス。

そんな本来探索者が避けるはずのモンスターハウスをあえて起動させるヒカリ。すると大量のシルバーウルフが湧き出てくる。


【おい、どこが10匹だよ! 絶対倍以上いるだろこれ】

【あくまで最低10匹だから】

【それにしてもこれちょっと多すぎないか】

【大丈夫かな】


あまりの数に不安になり始める視聴者が現れるがネクサスの空気は変わらずのほほんとしている。


「おー結構多いな」


「珍しいねこんなに多いのは」


「まあカエデちゃんのストレス発散相手が多いのはいいことです」


湧き出た大量のシルバーウルフがネクサスを見つけ連携をとりながら迫ってくる。しかし残り数mというところでカエデが持っている杖が光り輝き魔法が発動する。


「星花火」


するとあちこちで爆発音が鳴り響き大広間が煙に覆われ配信画面に何も映らなくなる。数秒後煙が晴れるとそこにはぼろぼろになって地に倒れる大量のシルバーウルフの姿があった。


「やっぱカエデの範囲魔法は壮観だな!」


「ん、すっきりした」


【す、すげえええええええ!!】

【あの数がまとめて!?】

【カエデ最強カエデ最強!】

【かっこよすぎんよ】

【映画じゃん】


コメント欄が今日一の盛り上がりを見せる。


興奮冷めやらぬまま次のモンスターが現れる。


「おっと次は...キメラだね」


獅子の頭、山羊の胴体、蛇のしっぽを持つ全長10mはあるかと思われる化け物が火を吹きながら近づいてくる。


「じゃあ、次は俺の番だな」


トウヤがそう宣言してゆっくりとキメラに近づいていく。


キメラもトウヤに狙いを定め叫ぶと同時に地面を蹴った。


「ルオオオオオオオオオッ!」


巨体に似合わぬ俊敏な動きでトウヤにとびかかりナタのような巨大な爪を振り回し切り裂かんとする。しかしトウヤはよける素振りも見せず剣を構えて一歩踏み込んで爪による攻撃を当たり前かのように受け流す。キメラ視点で見ればそれは水を掴もうとしたような感覚であろうか。そして無防備になったキメラの首めがけてトウヤが剣を振り下ろす。最後のあがきかあるいは死んでなるものかという執念かキメラはその尻尾でトウヤを側面から叩こうとするが、それがトウヤに命中するより数舜早くトウヤの剣が一切の抵抗なくキメラの首を切り落とした。


「やっぱ下層のモンスターじゃろくな相手になんねえな」


【すげえええええええ!!】

【あんなでかいのを簡単に】

【俺には爪に切り裂かれたように見えたんだけど!?】

【あまりにも自然な動きだった】


「下層のモンスターを、それも下層では強い方のモンスターを相手に一撃で終わらせるような化け物はお前らSランクだけだよ」


「私たちならもっと時間が必要になりますよね」


「そうだね、やっぱりSランクの強さっていうのは常軌を逸しているよ」


不満げな表情をするトウヤにAランクのレイ、ユウカ、リキヤが呆れた表情を見せる。


【倒せることは否定しないんだw】

【改めてネクサスの強さってバグってるんだなって】

【Sランクを化け物扱いしてるこの人たちも俺らからしたらたいがい化け物なんだよなあ】

【レイ、リキヤは100歩譲っていいとしてなんでヒーラー担当のユウカも下層最強クラスのモンスターを倒せる前提なんだよ。おかしいだろ】

【ネクサスだからなんだよなあ】

【大概のことはネクサスだからで説明できる風潮、あると思います】


Sランクの異常な強さにコメント欄が戦々恐々しながらもレイたちは淡々とさらに足を進めるのだった。

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