第2話:馬鹿な獲物
私は、まず張り込みを行う上でのマンションを借りた。
マンションは獲物が住む一室の玄関とベランダを両方を見ることができる好位置にあった。
家具はほとんど必要ないため、引っ越しの準備はなく、管理人から鍵をもらいさっそく張り込みを始めた。
初めて2時間程たったころ獲物が動き始めた。
こういう場合には自分も部屋を出て後をつける。そしてしばらくすると獲物は公民館に入っていった。
「組織の組員が公民館に何の用がある?」
そう思って覗いてみると、そこには地域の爺さん婆さんが集まっており、先ほどの管理人の姿も見えた。
「見慣れない顔だなー。あなたも一緒に打ちますか」
急に後ろから話しかけられ驚いたが、
「この場所は何をするところなんですか?」
と、聞いた。
「打つっていっちゃ麻雀でしょうが、どうします?」
「すみません今日はやめときます」
「あのー、あの方の名前ってご存じですか?」
このまま帰るのは、もったいないのでせめて獲物の名前を聞いた。
「あの人ね、えーっとね、、そうだ高埜さんだ。ここに来たのは最近なのだが、期先でいい人だよ。それで何か用事が?」
「いえいえ、少し気になっただけです」
そういって苦笑いでその場をやり過ごした。
依頼主からの情報は少なく、住んでいるマンションと顔写真のみであった。名前を知ったところで、何に役立つわけでもないが、知らないよりはましだろう。
名前を教えてくれた爺さんには礼を済ませ、その場を立ち去った。
「しかし、裏社会の人間がなに表の社会で活発に交流してんだ。あいつは馬鹿か。」
と思うと同時に、
「何のために、あいつはこんなことをしているんだ」
と考えた。
裏社会の人間として、昼間から周りの住民に顔を知られていいことはない。しかし、いくら考えてもその答えが出ることはなかった。
その夜、高埜の家では、同業者のような見た目のやつ数人とパーティーが開かれていた。
「あいつまた馬鹿なことをやっている。カーテンも開けっ放しで中も丸見えだ。獲物がこれだけ警戒心がないと狩りも楽だ」
「しかしもう夜か、今日は私もUberを頼むとするか」
高埜の家を出るとき一瞬見えた、Uberの兄ちゃんがドアの外に立っていた。
食べ物を受け取りドアを閉めようとした瞬間、宅配業者が部屋のなかを見渡すような目で見ていた気がした。
私は仕事柄、いろいろな人を観察癖があるが、今の宅配業者は少し違和感があった。
「なんか嫌な予感がしたな、まあしかし高埜は家の中にいる。あんだけバカ騒ぎしているのだし問題はないだろう。気にしすぎだな」
そうしてこの日の張り込みも終わった。
喜劇 空羽はれ @harenohi03
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