喜劇
空羽はれ
第1話:退屈な殺し屋
私が殺し屋になってからもう10年は経つ。
とはいえ、今まで殺した人の数といえばたったの4人だ。
ドラマや映画での殺し屋のイメージでは「殺すタイミングを見計らって、チャンスがあると一発で仕留める」こんなところであろうか。
しかし、私のスタイルはそれとは異なっている。私は、刑事の張り込みのように、まず相手の生活スタイルや人間関係を知ることから始まる。その作業が終わって初めて、相手を仕留めるという手順に入る。
そのため、私の殺しには時間がかかる。しかし、今まで殺しを失敗したことはないし、尻尾を捕まれそうになったこともない。
私は殺し屋として、安全な殺しを続け、安定した生活を送っている。
ある日、一件の仕事が入った。
それは、ある富豪からの依頼で、「あるライバル組織の組員を殺してほしい」という。さらにその依頼には続きがあり、「もし、この殺しに成功したならば、今度はその組織のボスの殺しを依頼したい」というものであった。
組員の殺しのみでは報酬が50万と、決して良いといえるほどの見返りではなかった。しかし、ボスの殺しにも成功すると報酬は10億と、2000倍にふくれ上がる。この依頼を受けない理由はなかった。
私の殺しの理由は、生活のためただ一つだ。私の生きる世界には、殺しを楽しむ殺し屋は五万といるが、私は生憎そういった狂った思想を持ち合わせていない。
今回の殺しが成功すれば、これから生活していくための金が十分手に入る。
「そう、これが最後の殺しだ」
「俺の最後にふさわしい、滑稽で狂気的な殺しだ...」
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