37話婚約決定?

扉が開くと中は派手な装飾品が多い割に案外あっけらかんとしていた。


だが奥の方には国王であるグラント・ランドールが異彩を放ちながら玉座に腰掛けていた。


金ピカの王冠に沢山の指輪をつけ、正しく王が羽織るような赤いマントをたなびかせている。


だが体型と放つ圧から歴戦の猛者といった印象を受ける。


ヒゲは蓄えているが、所々から若々しさが感じられる。


「エリカよ、よくぞ戻った。

して、そちが幼き日に我が娘を助けてくれたランサー殿じゃな」


僕は緊張から声が出ず、頷くことしかできなかった。


「よいよい、そう緊張せずとも。

今回の謁見は非公開のものであるし、いつも控えておる大臣達も退席させた故ラフにしてもらって構わないぞ。

それに娘の命の恩人に無理はさせたくないからのお」


「私や護衛の騎士達はいるのであまり緩んでもらっても困りますがね」


突然後ろから声をかけられる。


緊張していたのもあって後ろの方に全く気づかなかった。


「あぁ、驚かせてしまいましたね。

私は王様のお目付け役のジェイク・トレークと申します。

以後お見知り置きを」


「おいおい、お主は宰相であろうが。

我のお目付け役とはどういうことじゃ?」


「皆さんもそう思っていますよ。

貴方の無茶振りや失言などのせいで私がどれだけ苦労したことか」


「そ、それはすまなんだ」


どうやら王様よりも宰相様の方がつよいらしい。


「お父様! それよりも本題を早く!」


「おお、そうであったな。

えっへん、お前達の婚約のことであったな」


えっと、これってどういうこと?

今日はあのときの説明をしにきたんじゃ…。


「ちょっと待っ…」


「結論から言えば婚約についてはなんとかなりそうじゃ」


「本当ですかお父様!」


エリカちゃんは嬉しさの余り大きな声を上げる。


「えっ、いや僕はまだ婚約なんて…」


「お前の日頃の活躍やひた隠しにしていた魔族の撃退などの功績を表に出して推し進めて行けばなんとかなりそうじゃ。

だがあくまでワシらができるのはそこまで。

そこから先はランサー君がエリカに寄ってくる奴らを撃退していかなければならん」


なぜか僕達が婚約することは決定済みのようだ。


「ランサー殿にその実力があればいいが…」

ギーイー、ガチャンッ


扉の方で控えめに音がなる。


見てみるとあのときの老人が弱々しく扉にもたれかかっていた。


「ヒー、ヒー、若造が。

老人をこき使いよって。

転送魔法は魔力の消費が激しいのに連発させよって」


「すまなかったな、してどうであった?」


どうやら王様が呼んだらしい。


「姫様は流石の一言ですな。

そしてそなたがあのときの……、むむむ! はっはっは〜。

お主がそうであったか! いゃ〜姫様には先見の明があったとは驚きですな」


老人は先程とは打って変わって元気よく言い放った。


「おお、お主がそこまで言うということは」


「ああ、こやつは凄かったぞ!

試験官をやったのは此奴だけだったぞ。

相当な実力を持っておるぞ。

もしかするとわしより強いかも知らんしな」


「おお〜!それは頼もしい。

それならば娘の婿としても安心じゃわい」


どうやら僕の意思は反映してもらえないらしい。


「それではお父様、早く婚約についての書類を書きませんと♡」


「そうであるな、ではこれにて謁見は終了と…」


突然扉の開く音が鳴り響く。


「ちょっと待ったー!」


➖次回は修羅場が巻き起こります。

楽しみにしていてください。


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