35話 約束事は絶対!

ー魔族side

真っ暗な沼のようなところを引きずられながら進んで行くと魔界のとある小屋に辿り着いた。


「はぁー、つまんないなー。

ほら着いたよ」


男は首根っこを掴むのをやめて魔族を壁に放り捨てた。


「助けていただき恐悦至極にございます。

この度ははお手間をおかけして申し訳ございません。」


「いいよ別に。 面白い発見があったしね」


男はフードを脱ぎ、魔法を解除する。


するとみるみるうちに声色が男性から女性に変化していき、身長も少しづつ短くなっていく。


しばらくすると額に黒色のツノが一本生えていき、肌も灰色に変化し、背中からは魔族の男よりも大きくより濃い色の翼が生えていく。


そうして本来の姿である魔族に変化した。


「それにしても君は運がよかったね。

彼が本気で魔法を使ってきていたらもっと早くに負けていただろうし、後ろに控えていた奴が出てきていたら手も足も出なかっただろうね」


「面目しだいもございません」


「しかし僕の記憶が正しいなら彼女は誰とも契約したことはなかったはずだけどどういう風の吹き回しだろう?」


ー主人公side

眩い光が目覚ましの代わりとなって僕は目を覚ました。


周りを見渡すと高そうなシャンデリアがぶら下がる天井にカーテンの隙間から朝日と思われる光が差し、机の上には沢山の本や書類が乱雑に置かれて何枚か椅子の上にも落ちている。


なぜか服からはエミリちゃんからいつも漂っていた香水の香りがしており、腹や腕には包帯が何重にも巻かれていた。


確か僕は魔族と戦って意識を失ってそれから…。


そういえばエミリちゃんはあれからどうなった?

そしてここはどこだ?


僕は少しの不安にかられながらも現状把握のため部屋を物色し始める。


部屋の扉には鍵がしまっていて部屋から出ることはできないが、痛みが引いていたり傷口に包帯が巻かれていることからも恐らくはこの部屋の住人が助けてくれたのだろうことがわかる。


外を見てみるとよく整理されて形が美しく造形された木々が姿を表し、カーテンが開いたのに驚いたのか木々から鳥達が飛び去っていく。


そのとき部屋の扉からガチャっと音が鳴り、扉が開く。


「…ラ、ランサー君!」


入ってきたのはエミリちゃんで僕を見つけるなり飛びついてきた。


「エミリちゃん⁉︎ よかった、無事なんだね」


「よかった丸一日眠ってらしたから心配だったよ。

でも、よかったぁー、死んじゃうかと思ったぁ」


彼女は涙ながらに話してくれる。


「もう大丈夫だよ」


僕も彼女を抱き返す。


しばらくして彼女も落ち着きを取り戻していく。


「動いて大丈夫なんですか? まだ安静にしてた方が…」


「大丈夫だよ。 それよりも一日経ったてどういうこと?」


「?そのままですよ。あれからランサー君は一日中目を覚さなかったんですよ」


「そうだったのか、 …って早く家に帰らないと!」


「ああ、それなら大丈夫ですよ。

これから私が一生ランサー君の面倒を見てあげますから」


「えっ?」


「ランサー君もこの前、家に帰りたくないって言ってたじゃないですか」


「いや、ダメだよ。母さんも待ってくれてるだろうし、帰らないと」


僕が彼女の静止を無視して帰ろうとすると腕を掴まれる。


「待って! 実は私この前のこともあって、あの森は危険だってことでお父様とお母様から止められてるの。

だからもうこれで本当にお別れなんだよ」


彼女の声に驚きと困惑の感情が湧いてくる。


「そうだったのか。

ごめん、でも帰らないと」


彼女は涙を袖で拭いた後、顔を上げる。


「ごめんなさい、無理に引き止めちゃって。そうだよね。 子供は家に帰らないと」


彼女は一生懸命に笑顔を作ってくれる。


「寂しいけどこれでお別れだね。

じゃあ、約束して!

私と次に会う時は婚約して結婚してもらうから!」


突然の結婚や婚約という言葉に僕は戸惑ってしまう。


「婚約とか結婚ってどういうこと?

わからないことは約束しちゃダメだって母さんが…」


「“と、に、か、く、約束ね”♡」

「約束は破れないからね! 変更も一切認めないから!」


僕は彼女の圧に押し切られて約束して部屋を後にして家に向かって走っていく。


後にこれが波乱の幕開けだったことをこのときの僕は知らなかった。


➖なんかやばそうな約束してますね。

さてこれにて過去編は終了いたします。


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