34話謎の男
「アレだけ自信に満ち溢れていた君がまさか子供に負けるとは」
「面目のしようもございません」
「まぁいいさ君のおかげで面白いものも見れたしね」
男はフードの下から僕を見つめてくる。
その瞳は全てが真っ黒で吸い込まれていつまでも落ちていく深淵の闇を思わせる瞳孔に僕は目を逸らす。
「少年に姫、精霊の剣に四大精霊ねぇ」
何やらぶつぶつ言っているが離れていてよく聞こえない。
「うーん、アレは無理だね。
撤退するよー」
どうやら帰ってくれるようだと安堵していると魔族が不満げな声を上げる。
「お待ちください! 貴方様なら手負いの奴等など一瞬で…」
その時、男は魔族の口元を掴み上げた。
「黙ってろよ。
負けた奴が指図んなや!」
『ショックパルス』
男は怒りのままに魔族に向かって魔法を放つ。
「ぐあぁー」
「それにさ、アレはもう、3、2、1、バーン〜」
「バキバキバキ、グシャ」
突然、腕から鳴ってはいけない音が鳴り響き、強烈な激痛と共に口から血が溢れ出してくる。
「ゴフッ、ブッハ、ぐ、ぐあぁ、ああがっ」
彼女が駆け寄ってくる音が聞こえる。
「ランサー君! ランサー君! しっかりして‼︎」
状況が理解できず、鈍る思考で考えている最中に剣から声をかけてくる。
『あやつは何もしておらんよ。
いくら妾を力尽くで抜けたといっても緊急事態とはいえ、契約もしないで妾の力を無理矢理使ったんじゃから反動が来たんじゃろ』
僕がボロボロになりながらもなんとか意識を繋ぎ止めているとぼんやりとだが、男がフードの奥で笑っているのが見える。
「あははぁ〜♡ いいないいね。
すごくいいよ! 僕大好きなんだよね。
そうやってお姫様を守ってる騎士様がぼろぼろになってる姿。
それにその騎士を姫さんの前でいたぶり殺すのはもっと好きさ。
ど、う、せ、な、ら、足くらいがなくなってた方がいいよね〜♡」
男は一瞬にして距離を詰めて足を蹴り飛ばそうとしたが、ランサーの真後ろで強大な気配が現れると後ろに退いた。
「ちっ、わかったよ。 今日はここいらで帰るよ。
それじゃあね、王女様。
ほら行くぞ!」
『ワープ』
男が魔法を発動すると魔族を引っ張りながら黒いゲートの中へと姿を消して去っていった。
僕はそれを見届けると同時に意識が途絶えた。
ー姫side
やばい、やばい、やばい!
このままじゃランサー君が!
ランサー君は息が弱々しくなりながら顔色が青白く変化していく。
「お願い!死なないで!
まだちゃんと好きって伝えれてないのに!
お願い目を開けて‼︎」
私は気が動転しながらも魔法を唱える。
『キュアヒール』
魔法は発動したが、すぐに消えてしまう。
戦いで魔力を使いすぎてもうほとんど残ってはいなかったのだ。
私はそれでもなお魔法を発動する。
『キュアヒール』 『キュアヒール』 『キュアヒール』…。
もっと回復魔法を練習しておけば良かったと後悔しながら魔法を発動していく。
しばらくして魔力欠乏症という魔力がない状態が長く続くことによって発生する症状が出始める。
激しい耳鳴りともに鼻血が垂れてくるが、今の私には関係ない。
数分後、私を迎えに叔父様が転移してこられた。
「姫様、これは一体どういう状況ですか⁉︎」
「叔父様!私よりも先に彼を‼︎」
「なっ、これほどの怪我を!?
承知いたしました。」
叔父様は彼を抱えて魔法を発動する。
『ワープスペース』
➖フォロー登録や⭐︎⭐︎⭐︎で評価などなどよろしくお願いします🙇
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます