21話因縁の相手

試験後の職員会議にて


「今年は逸材揃いですな」


「今年は聖女様や姫様達、侯爵家の子息に騎士団長殿の息子さんまで多くの武勇を持った者が揃っておりますな」


教師の一人が書類に目を通していると手が止まった。


「これはこれは皆さま、受験者番号2439を見てもらえますか」


その場にいた教師全員がランサーについての資料に目を通す。


「グレイス・ランサー、グレイス家に男児はおられなかったはずでは?」


そのとき受験者資料を担当した者が手を上げる。

「そちらは締め切りを過ぎた後にグレイス家より申請された物です」


「そういえばラムズ家領地の新聞でラムズ・ランサー殿が精霊に付かれていないという記事を見ましたぞ」


「なぜそのような者をグレイス家が養子に迎えられたのでしょう。

現当主であるガルガン殿は聡明なお方だったはずでは?」


そのとき一番奥の豪華な席に座っている老人が口を開く。


「その者は採用するぞ」


「学園長、幾ら何でも精霊から付かれていないとなると採用はできかねます」


「その者は試験において唯一試験官を倒しておるのだぞ。

さらには筆記試験においても優秀な成績を残しておる。

そのような者が精霊から付かれていないなど何かの間違いであろう」


その言葉に神官であり、聖魔法の使い手であるサリーナ先生が声を上げる。


「学園長殿、それは教会に対する侮辱ということですかな?」


「なに、そこまで言うつもりはない。

ただ書類審査の段階で手違いが発生したのではないかと思っただけじゃ」

「だが彼を採用する、これは確定事項じゃよ」


「まぁ試験官を倒したということなら採用すべきですな」


皆が同意の意思表示をする。


「他に何かある者はいるかな?

いないということならば今回の入学者はこれで決まりじゃな」


教師全員が頷き合う。


「ではこれにて協議を終了とする」


教師達は各々で入学の日のための準備に取り掛かるために部屋を出ていく一方で、ある教師は一人ランサーについての資料を手に取って眺めていた。


「これはこれは、まさかこのようなところで見つけるとは。

あのときの忌々しいガキがまさかバルガンのところの息子だったとはな。

あそこは弱々しいガキと世界の広さを理解していないバカなガキしかいないはずではなかったのか」


その男は苛立ちを隠すことなく歯を噛み締めながら言った。


「だがこれであのときの借りを返すことができるなぁ」


魔法を解いて目の上についた痛々しい傷をかく。


「待っていろよあのときの屈辱を何千倍にして返してやるよ‼︎」


その男は怒りに震えながらランサーについての資料を握りしめて燃やす。


その怒りが入浴中のランサーに届くことはなかった。


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今回はラブコメ要素なしになってしまいました。

楽しみしていた皆様申し訳ありません😭

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