第11話聖女side
「エリカ?」
「帰って、」
「え?」
「お願い一人にして」
そのまま私は部屋を追い出されてしまう。
彼女の最後に見せた戸惑いの表情を思い浮かべ、何かあったのだろうかと考える。
だが、帰りの馬車に乗る頃には昨日助けてくれた彼のことで思考はいっぱいになっていた。
ーーーーー
昨日の私は珍しく一人で起きた。
いつもなら決まった時間に使用人のエミリーが起こしに来てくれてそれから朝食を持って来てくれるのに今日は遅いし、起こしにも来てくれていなかった
不思議に思いながら一人で身支度を整えていると部屋がノックされる。
「朝食をお待ちしました」
「あら今日は部屋で食べるの?珍しいわね」
私が部屋を開けると見慣れない人がクローシュを乗せたトローリを運びながら入ってくる。
その時私は精霊が見えないこと、聖魔法が使えないことに気がつく。
聖魔法は精霊の祝福を受けた聖女か、精霊と契約したものしか使うことができない。
そしてその魔力は精霊に依存している。
「今日の料理は… 聖女様のお命です」
使用人に扮した敵が切り掛かってくるが、それに対して私は魔法をくり出す。
『ファイヤーランス』
「ち、意外と早いな『ファイヤーエッジ』」
敵が後退しながら出した魔法と私の魔法がぶつかり合い霧散した。
「聖女ならてっきり聖魔法を封じれば終わりかと思ったんだがな、」
「ならばやはりあの中にあるのは精霊封じの灯火ですか」
「ご名答、聖女様は博識だねぇ」
「精霊封じの灯火」は魔道具の一種で一定範囲内の人間と精霊の繋がりを断つことができる。
「どうやら相当舐められていたようですね」
「いいや想定は超えているが、想像は超えていないさ」
その後も撃ち合いは続いたが、有効打は与えられず、時間と魔力だけが削られていく。
私は焦りに駆られ始める。
このままでは負けてしまうのではないか、
殺されてしまうのではないか。
昔から私は魔法の中でも強力な聖魔法が使えたので同世代では敵なしだった。
恐らく無意識のうちに慢心していたのだろう。
もっと魔法を訓練していればこんなことにはならなかったのに。
しばらくして互いに魔力が底をついてしまう。
「手こずらせやがって、だがそれもここまでだな」
相手が警戒しながら剣を構えてにじり寄ってくる。
恐怖で後退りしていたが、途中で躓いてしまう。
死にたくない、誰か助けて‼︎
私の願いは架空に消えていくはずだった。
敵が刻一刻と近寄って来ていたその時、廊下の方で戦闘音が聞こえてくる。
「あいつら何やってやがんだ?」
敵が廊下の様子を見に行ってチャンスが生まれたが、恐怖で足に力が入らない。
「なんだアイツは⁉︎」
「くっそなんであんなにいて負けてんだよ」
敵は血相を変えて私を拘束して首元に剣を突きつけてくる。
「テメェ死にたくなかったら大人しくしてろよ」
私は死にたくなくてただうなづくことしか出来かった。
しばらくして戦闘音が止んだあと、彼が入ってきた。
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