第50話

(やったぁ! やっと受かった…。やっと…)



4月1日。

俺は早矢仕さんと別れてから一週間後、遂に江東区の試験場センターで学科に合格した。

しかし、俺は合格するまでに、何と合計三回も試験に落ちたのだ。



試験は90点以上採らなくてはならないのだが、俺はあと一歩の処で何回も落ちていた。

免許証センターまで行くのに一回でもめんどくさいのに毎日のように行く羽目になって、ほんとに遅々として進まない状況に苛立ってた。



本来の予定では3月半ばには免許を取得して、4月からは車の運転の仕事をするつもりだったのに…。


何回も落ちる自分の不甲斐なさに、まさか一生受からないんじゃあるまいな? と不安になっていた。

が、しかし!

四回目の試験で奇跡が起きた!



何と一番最初に落ちた時の問題集と、全く同じものが出たのである!

これなら受かる!

そう思ったのだが、肝心な事を忘れていた。


そう。

俺は一回目の試験の復習をしてなかったのである。

なので、再び同じ問題が出たと言っても、一体どの問題でつまづいたのかが分からない。

下手すると再び同じ点数で不合格!

なんて事にもなりかねない。


俺は慎重に慎重を期して問題を解いた。

そして、やっと合格にこぎつけた。



交付された免許を受けとると、喜び勇んで東西線に飛び乗った。

やっとこれで俺の合宿免許は終わったんだ!



いやいや、交付された免許を受け取って、家に帰るまでが合宿だ!

とは言うものの、俺は気持ちがゆるみっ放しのまま帰宅の途に着いた。




その後、ザキからも連絡が入り、


「おうキブ。俺も免許取ったぜ!」


自慢気に電話してきた。


(みんな、頑張ってるなぁ…。そう言えば、あの人はどうしたんだろう? あの人は…)







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4月も10日程経ったある晩、一本の電話が鳴った。

声の主は、宮下(みや)ちゃんだった。


「おーう。みやちゃん元気?」


「元気元気。俺も辛島(から)も、昨日やっと免許取ったよォ」


声が弾んでいた。

エースは? 重政(シゲ)は? と問う俺に、



「ウン。エースもシゲも、メガネも兄貴も、みんな俺より先に卒業して行ったよォ」



「ふーん、そうなんだ。じゃあみんな、卒業したんだね?」




「──それがさ…」



「えっ!?」





みやちゃんの言葉は、耳を疑うものだった。









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