第49話
数日後。
俺と早矢仕さんの姿は新宿にあった。
約束通り俺達はメガネを作るため、新宿のメガネドラッグで待ち合わせた。
「おう。久し振り」
早矢仕さんは鮮やかなオレンジのセーターで現れた。
この色を着こなせるのは早矢仕さんしかいないだろう。
更に腕輪をして膨らみを押さえてた。
「久し振りって、まだ四日しか経ってないッスよ?」
そうだっけかと早矢仕さんが笑う。
確かに一ヶ月もともに暮らした間柄、僅かに離れていてもそう感じてしまうのは俺も少しは解る。
店内で視力検査やフレームを選んだりしてメガネを注文すると、完成まで二時間かかると言う。
俺達はその間新宿から中野に移動してレコード店巡りをした。
実は早矢仕さんは、インディーズ系ミュージシャンに詳しくて、今は大手レコード会社から作品を発表してるアーティスト達の、インディーズ時代のレーベルのソノシートやらミュージックテープ等を販売している店を多数知っていたのだ。
俺はそこで幾つかの作品を購入して、再び新宿に戻った。
メガネを手にしてから、早矢仕さんが「ウチに来ない?」と誘ってくれたのでお言葉に甘える事とした。
早矢仕さんの家は蓮根駅のすぐ近くだったが、表札に「錦織」と「早矢仕」の二つがあり、複雑な家庭環境を物語っていた。
部屋に入ると早矢仕さんは、お気に入りのハウンドドドッグや米米CLUBのレーザー等を見せてくれた。
小一時間ほどして俺は早矢仕さんの家を後にした。
いよいよ翌日は試験場で学科のテストだ。
これをパスすれば遂に念願の免許が手に入るのだ。
俺は早矢仕さんと会い、心の充電をはかった…、のだが…。
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