第47話

岩倉先生が卒検の担当…。


内心、俺はヤバいなと思った。

昨日の天井事件の取り調べの事があったから…。


岩倉先生の雰囲気からは、俺が真実を知ってて隠している事を見抜いてる感じが伝わった。

それだけに、俺はもしかしたら卒検の採点に影響が出るのではないかと思った。

また、試験後再び取り調べがあるかも知れないと…。



岩倉先生は最初に俺達生徒を後部に乗せ、試験で走るルートを手本で走ってみせた。

コースを一周して、今度は生徒の番。

いきなりトップバッターが俺だった。


心を落ち着かせる間もなく、俺は緊張状態MAXのまま運転席に乗り込んだ。



シートベルトを装着しミラーを確かめる。

岩倉先生の合図とともに俺はゆっくりとアクセルを踏み込んだ。


俺は岩倉先生が走ったコース通り、教習所を山とは逆の右に出て、菅野川(すげのがわ)を右に見ながら道なりに進んだ。

この道こそが俺の栄光への道だ! (知らんが)



2キロ位先の、左にファミリーマートがある突き当たりの交差点を今度は右だ。

ここで信号待ちとなったが緊張をほぐす余裕もない。

集中を切らさぬよう、失敗しないよう、それだけを考えた。



右に出てから最初の交差点を左折。

そのままT市駅方面に走る。

だがここでひとつ目のミスを犯した。



横断歩道ヨシ! の確認を怠ってしまった。

自分でも、あっ! と思ったのだが時既に遅し…。

減点対象になった。


もう失敗は許されない。



車はそのままT市駅方面へ…。

その道沿いには俺と早矢仕さんとクボが買った缶詰めのお店がある。

当然、あの焼き鳥屋も…。


やがて道は左にカーブし、大通りを左へ…。

そう。クボのやらかした、魔の突き当たりだ。


そのまま走ると、やがて右には最初に出てきたファミリーマートの交差点が見える。

今度はファミマを右に見ながら右折。

教習所へと戻るのだ。


しかし、教習所手前200メートルの所で思わぬハプニングが起きた。

俺の前を走る一般車両が突然停止したのだ。


しかもその一般車両はハザードランプを出す訳でもなく、左に寄る訳でもない。

ただ普通に停止したのだ。

まるで渋滞最後尾のように…。


更にその道は片側一車線の道路で追い越し禁止の標識が立っている。

左に寄せてハザードランプを出すならともかく、ただ停車しているだけじゃ、追い越していいかどうかも判らない。


かと言ってこのまま俺も停まっていたのではどうしようもない。

俺は岩倉先生が何も言わないと言う事は追い越していいのだなと思い、右にウィンカーを出して追い越そうとした。



すると、停車していた車が突如として動き出した。

俺は慌ててハンドルを左に切りウィンカーを戻し、その車の後に続いた。


だが、たった10メートル走っただけで、またその車が停車してしまったのだ!


再び反対車線の動向を確認し、ウィンカーを右に出し追い越しにかかる。

しかし、またまた前の車が再び走り出したのだ!



結局何度も何度もウィンカーを出したり、ハンドルを右へ左へ切ったりで、その瞬間、


(ああ…、俺は試験に落ちたな…)


と確信した。







──────────────────────────────────────────────────────







だが、信じられない事が起きた。

何と俺は、85点と言う高得点で合格したのである!


何故だろう…。

あのハプニングは致命的だったはずなのに…。



とにかく受かった。

これでサイコーにハッピーな気分で帰宅出来る。



そう思ったのだが…。

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