第45話

(やっぱり、例の天井穴開け事件の、犯人捜しか…)


呼び出された理由を俺はこう考えていた。

しかし、俺達を呼び出した猫田と言う若い先生から出た言葉は、それを上回るモノだった。


「君達今から大至急荷物をまとめて寮を出て行って!」


マジかよ…。

いくらなんでもあまりに厳しすぎる。

しかも俺達全員、明日が卒検だと言うのに…。


ショックで立ち尽くしている俺達に、猫田が催促した。


「ホラ、何をぐずぐずしてる! もうバスがやって来ちゃうんだから」


そんなに急かよ…。手際がいいな…。

そう思っていると、猫田が意外な言葉を口にした。


「もうね、寮がシーズンで一杯なんだよ。君達長期滞在コースの生徒には部屋を明け渡してもらうから。

代わりに今から法能温泉で一泊してもらう」


何と!

俺達は温泉宿で一泊出来る事となった。


法能温泉とは、教習所から更に山の方に登って行った所にある温泉で、車で10分足らずの場所だ。


寮が満室になったからと言う理由ではあったが、とにもかくにも俺達は温泉旅館で一泊出来る。

ついでに犯人捜しでなくてよかった。



俺達は急ぎ身支度を整え、

「頭でっかちの前野」と言うアダ名の先生が運転するマイクロバスに揺られ、法能温泉に着いた。









実は、この法能温泉での記憶はここまでしかない。

他の事はノートに書きとめておいたのだが、この部分の記述だけないのだ。


頑張って記憶を手繰ったのだが思い出せない。

思い出せないのでこれにて終了するが、確か食事もなかったような気がする。

ついでに、温泉に浸かった記憶も…。






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