第38話
「これほんとにヤバくない!?」
インテリ鶴川が館内放送で、再びクボを呼び出した。
だが、まだ到着した様子はない。
俺の問いかけに、早矢仕さんはある仮説を話し出した。
「まさかよォ、道を間違えたんじゃねぇだろうなぁ…」
「道?」
「ああ。さっきの焼き鳥屋の前の道…」
「真っ直ぐ行って突き当たり?」
「ああ。キー何て言った? そん時」
「だから、フツーに真っ直ぐ行って突き当たりを左って…」
「それだよ!」
最初は、早矢仕さんの言ってる意味が解らなかった。
「えっ? だって、突き当たりを左だよ?」
早矢仕さんはポケットティッシュの広告の紙の裏に地図を書きながら説明を始めた。
「あの場所ってさぁ、焼き鳥屋のある細い道がこう大通りに向かって一直線に進むじゃん?」
「うん…」
「でもよ? あの突き当たりって、完璧Tの字の突き当たりじゃねぇじゃん?」
「確かに…。極端に言うとカタカナのイの字をしてたね」
「そう! その突き当たりを、もしイの字のように勘違いしてたら、クボちゃん大通りをそのまま突っ切っちゃうんじゃねぇの?
したら丸っ切り逆方向だぜ?」
「でも、そんなバカほんとに居んですかねぇ?」
俺は早矢仕さんの仮説に半信半疑だった。
確かに理屈は分かる。
だがあの小さな路地から大通りに出たら、いくら突き当たりがイの字に見えたからって、そのまま直進するヤツなんていない。
でも、それ以外にこの遅刻の理由が見つからないのも確かだ。
「そうだよ! それしかないよ! アハハ。クボちゃんスゲェ…、とんでもないバカだ」
クボは更に名前を呼ばれたが、遂に姿を現さなかった。
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7時30分過ぎ。
みやちゃんとからちゃんが教習を終え帰ってきた。
クボさんは? と尋ねるみやちゃんに首を振る早矢仕さん。
からちゃんは心配そうにカーテンを開けて外を覗き、クボの帰りを心配している。
すると、からちゃんが突然叫んだ。
「あ! 何かタクシーが…」
俺達は一斉に窓越しに外を見た。
すると、寮の敷地に一台のタクシーが…。
誰か降りてきた。
顔を見る。
クボだった。
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