第28話
「なんだお前らそのアタマ! 全員ジュニアカットじゃねーか!」
102の学が叫んだ。
ボヤ騒ぎのあった翌朝、俺と、クボと102号室のニシの三人は、はしづめやの先にある辺鄙な床屋に散髪に出掛けた。
この頃の俺は今みたいに髪は長くなく、2センチ位のツンツンヘアーだった。
だが、短くキープしてるとちょっと伸びただけで切りたくなる。
そんな伸びてないよと早矢仕さんに言われたのだが、俺はどうしても切りたくなって件の床屋に行く事にした。
その時、同じく髪を切りたがってたマッシュルームカットのニシと、分け目もなく寝癖のついた、ただ頭皮から髪が生えてるだけと言う真性無造作ヘアーのクボマカアキも一緒に行くと言い、俺達は朝っぱらから出掛けた訳だが…。
何と全員が同じ髪型にされてしまった!
ツンツンヘアーの俺とマッシュルームのニシと寝癖アタマのクボが揃ってえなりカットに…。
俺はいつも短目だから良いが、比較的髪の長いニシはマッシュルームどころか人工芝カットにされてかなり落ち込んでた。
しかし、それ以上に落ち込んでたのが…。
「せやろ? まるでジュニアやろ?」
クボだった。
特にニシとクボはサイドと襟足を青々と刈り上げられ、夜霧のハウスマヌカンみたいだった。(知らんが)
クボは何度も鏡を見つめ、この刈り上げかなわんなぁ…とボヤいてた。
からちゃんが親切に、自分の使っているハードジェルを渡し、これでスタイリングしたら? とクボに貸してあげた。
クボは早速洗面所に行き、鏡の前でスタイリングして来たのだが…。
「クボちゃんよぉ、ジェルって水で溶いて使うんだぜ!?」
クボのアタマを見て、思わず早矢仕さんが突っ込んだ。
何とクボは、水色したジェルをそのまま絞り出し、アタマに塗りたくっていたのだ。
当然そのアタマには水色したゼリー状のものが付着し、 遠目から見るとおばあちゃんのメッシュのように輝いてた。
それを見てみんなが笑い転げるとクボは不機嫌そうに
「わざとじゃ!」
と吐き捨てた。
クボはその水色したゼリーをアタマに乗せたまま、再び水道場に行きジェルを洗い流した。
しかしこの後、とんでもない事実が発覚する!
その日の夜。
俺と早矢仕さん、ザキ、クボの四人はいつものように料理の本を見ていた。
16日が過ぎなかたやで食事が出来なくなった俺達は、毎日料理本の写真を見ながら、俺はこれが食いたいだのと指を差しては食ったつもりで飢えを凌いでいた。
その時みんなで寝転びながら本を見ていたのだが、おかしな事に気づいた。
クボの髪型だ。
クボの耳周辺の刈り上げられたサイドに違和感がある。
刈り上げられたはずなのに、部分的に黒々としてる…。
よーく見てみると、それは髪の毛ではなかった。
マジックだった。
クボは刈り上げられて薄くなった部分に、マジックで毛を書いていたのだ。
俺はもう気づいた瞬間ガマンが出来なくなって身をよじって笑った。
その様子を見てザキや早矢仕さんも
「どうしたんだよ?」
とつられて笑った。
俺がクボの髪の毛の事を泣きながら話すと、二人も腹を抱えて笑った。
笑い過ぎておしっこ漏らしそうだった。
しかし、地肌にマジックで髪の毛書くなんて…。
その髪の毛はしばらく消えなかった。
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