第27話
その晩、寮内はいつにも増して冷え込んでいた。
ここY県T市は朝の冷え込みがメッチャキツい。
県内全域かは知らぬが水道は夜から出しっ放しである。
そうしないと翌朝水道管が凍結して、水が使えないのだ。
それ位冷え込みが厳しい。
実際気温が何度あったのか分からないが、お隣の県でもマイナス10度なんてのはよく有ったので、似たような温度なのかも知れない。
それ位夜は寒かった。
しかし、何故だか急に冷え込みが弱まった。いや、弱まったどころか逆に暑い位だった。
(ああ…、こりゃ助かる。まるで焚き火にでも当たってるみたいだ…)
そう思った途端、パチパチと音がする。
俺はムクリと上半身を起こした。
すると、やっぱり焚き火だった。
(なぁんだ…、どうりであったかいはずだ)
…って待てよ!?
部屋の中で焚き火なんてやるか!?
ゴミ箱が燃えている。パチパチと音を立てて!
「火事だ! 火事だよ! 早矢仕さん火事だ!」
俺は隣のベッドで寝ていた早矢仕さんを起こした。
早矢仕さんは即座に
「キー、水汲んで来い!」
と怒鳴った。
だが、燃えてるゴミ箱はドアの横にあり、水道場には行けない。
「無理だよ早矢仕さん!」
全員パニクった。
そこへすかさずザキが
「早矢仕さん夕べヤカンに水汲んだでしょ!? テーブルの上にヤカンあるよ!」
と叫んだ。
早矢仕さんはすぐにヤカンの水をバケツにぶっかけた。
火は弱まり、火事は何とかゴミ箱を燃やす程度で済んだ。
原因は…
クボだった。
タバコの火の不始末らしい。
この部屋では、俺と早矢仕さん、みやとからはタバコをやらず、ザキはタバコを切らしていて、吸う事が出来なかった。
前の晩、ただ一人タバコを吸っていたのがクボだった。
聞けば、ちゃんと消したか憶えてないと言う。
「まったくよぉ、いい加減にしろよクボちゃんよぉ…」
さすがの早矢仕さんも怒り心頭だった。
「ゴメン…」
一言クボは謝ったが、このボヤ騒ぎに何一つ手伝おうとはしなかった。
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