第22話

俺達の寮生活も二週間が過ぎようとしていた。


この頃になると大半は二段階を終え、ぼちぼち路上に出てる者もいた。


実は合宿免許は、16日で取れるなんて謳っているが、それは全てパーフェクトで行った場合であって、一度でも試験に落ちると16日ではなくなる。


今まで寮生で一番早かったのは102号室の住人、女たらしの三沢の17日だ。


また、試験に落ちたからと言って翌日すぐに試験を受けれる訳ではない。

試験日と言うのは決まっていて、更に三月のシーズンに入るとそう簡単に予約も取れなくなる。


101号室の住人もパーフェクトでここまで来た人はいなかったから、みんな16日オーバー確定だ。

それはまだいい。


それよりももっと重大なのは追加料金だ。

合宿免許の代金は、全て16日分しかない。

従って、寮での宿泊代も日割り計算で追加納付しなければならない。

教習もそうだ。


一回につき二千円だか四千円だかを納めなければならず、卒業間近になるとみんな頭を抱えていた。


そんな中、101で一番進みが早かったのが阿倍野さんと圭ちゃんだった。

二人は、俺や早矢仕さんやザキが、まだ二段階を走ってる時に、さっさと路上に出ていた。


俺は、ザキや早矢仕さんとつるむ事が多かったが、ある夜圭ちゃんと一緒に

『はしづめや』にジュースを買いに行った。


圭ちゃんとはそんなに話が合う訳でもなく、お互い何となく本当の自分を出してない部分もあり、嫌いな訳ではないのだが少しぎこちなかったりしたので、サシで話したりする事はあまりなかった。

だが、この日は珍しく二人きりで出掛けた。


歩きながら俺達は共通の話題である高校野球の話しに興じた。


「そう言えばさ、俺の友達で一人甲子園行ったヤツが居てさ…」


そう言うと圭ちゃんは食いついてきた。


「へぇ…、何てヤツ?」


「K高の○黒ってんだけど…」


「あ、○黒かぁー! センバツの◯◯学園戦でエラーしたヤツでしょ!? アイツいいヤツだよね?」


「アレ? 圭ちゃん○黒の事知ってんの?」


「うん。一度試合した事あるんだよ。俺も○黒と同じセカンドだから、試合終わった後、少し話したんだよ」


「へぇー。そうなんだ!?」


俺達ははしづめやまでの道を、色んな高校の応援マーチを口ずさみながら歩いた。

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