第20話
俺はイライラしながらクボの帰りを待った。
早矢仕さんは俺のシャツを広げ、ひでぇな…、と呟いた。
「キーがやらなくていいって言ってんのにクボちゃんもしつこいよな。
一週間も経って、まだ一段階やってんのって寮生じゃクボちゃんだけだぜ?
ひとの洗濯物の心配するヒマあんなら自分の心配しろよな!?」
怒りは早矢仕さんにまで飛び火し、シャツを裂いた事とは関係のない話にまでなった。
でも、俺も早矢仕さんと同じ心境だった。
思い出し怒りじゃないが、日頃の不満も一気に噴出してしまった。
俺はクボをどやしつけてやろうと、ヤツの帰りを待った。
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そして一時間後。
窓の外にクボが現れた。
クボは合宿所の庭を通り、玄関へと向かった。
俺は間もなく開けられる部屋のドアに集中した。
程なく廊下を歩くスリッパの音。
足音で判る。聞き慣れた独特の足音。
間違いなくクボだ。
ガチャッ…
ドアが開いた。
「ただいま…」
クボだった。
俺はクボに素早く近づくと、ヤツに体当たりをして突き飛ばした。
ちんちくりんのクボはドアに頭をぶつけひっくり返った。
「何すんじゃいワレ!!」
クボがつばきを飛ばして怒鳴ってきた。
その態度に俺も頭に来て怒鳴り返した。
「何すんじゃいじゃねーよクボ! テメェ俺がやらなくていいって散々言ったのに勝手に干してひとの服破りやがって!」
クボは黙り込んだ。
分りやすいリアクションだった。
「このシャツいくらも着てねーんだぞ!? どうしてくれんだよ! テメェがいつも大事にしている5000円の綿のジャケット俺が破ったらどんな気がするんだよ! あ!?」
俺が5000円の綿のジャケットとか要らん事言うから、早矢仕さんが吹いてしまった。
そこへ帰ってきたザキもその言葉を聞いて、ニヤニヤ笑っていた。
「もう二度と俺に構うな!」
俺がとどめにどやしつけると、クボは入り口付近に座ったままうなだれていた。
よっぽどクッキーの事も言ってやろうかとも思ったけど、言わなかった。
この日以来、俺とクボは犬猿の仲になり、毎日飛び交う幼稚な口論がこの部屋の名物となっていく…。
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