第19話

「キブっちゃん、ワシがその洗濯物干したるわ」


一体どう言う風の吹き回しだ?

自分の洗濯すら面倒くさがる男が、なにゆえ俺の洗濯物を干しとくと言うのか…。

狙いがよく解らないので俺は断る事にした。


「いいッスよ、俺帰って来てから自分でやりますんで」


「遠慮すんなて。ワシ暇やから」


一緒に洗濯した礼をするとでも言うのか!?

だが後々恩着せがましく言われるのも何だし、俺はやっぱり自分で干すからと断った。

だがクボはしつこく


「いいからいいから、遠慮すんなて。ワシやっとくから」


と言ってきた。

鬱陶しいなと思ったが、俺は館内放送で呼ばれていて、もうクボを構ってる暇などなかった。


「本当、やらなくていいから」


俺はクボにそう言い残し、急いで教習所へ向かった。





───────────────────────────────────────────────────────




一時間後。

俺と早矢仕さんは教習を終えて寮へと向かった。


「おい、キー。アレ見ろよ!」


見ると、ベランダに俺の服が干してある。


「あれほど干さなくていいって言ったのに…」


思わず俺はボヤいたが、まぁいいじゃねぇかと早矢仕さんに言われ、俺達は部屋に戻った。


部屋に帰るとクボは教習所に呼ばれたのか姿はなかった。

阿倍野さんと圭ちゃんもいなかったので、彼らもまた呼ばれたのだろう。


ベランダを開けると、干してくれた割りには全てやってくれてた訳ではなく、何枚かが残っていた。

早矢仕さんの洗濯物に関しては手付かずだった。


「やったらやりっ放し…」


呆れながら早矢仕さんが再び洗濯物を干し出した、その時だった。


「おい、キー。この服破けてんぞ!?」


見ると、クボが干したとされる俺のシャツが無惨に破けていた。

この合宿に合わせて買ったダンガリーシャツだが、買ってまだいくらも着てない服なのに…。


それで分かった!

クボの野郎、どっかにシャツを引っ掛け破いちまって、バツが悪くなって途中で干すのをやめたんだ!


そして名前を呼ばれたのをいいことにさっさとトンズラしやがったんだな!?


俺はこないだのクッキー泥棒の犯人にさせられた事と相まって、ブチ切れてしまった。




クボの野郎ッ…!





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