第18話
朝食が終わり部屋に戻ると、館内放送で阿倍野さん、圭ちゃん、ザキの三人が名前を呼ばれた。
部屋の中には俺と早矢仕さん、そしてクボの三人が残された。
「しかしええ天気やな。洗濯日和やで」
実は寮生は最初の一週間で、講習を受けれるだけ受けさせられるので、それが済むと一日二回の実地(自動車教習)しかやる事がなくなる。
朝から晩まで二回、ひたすら名前を呼ばれるのを待つのだ。
一番気楽なのは8時からと9時の教習が連チャンで入る時。
あとはもうフリータイムなので、メシの時間にさえ帰ってくれば自由だ。
いや、なかたやのメシなんか要らんって人は夜の10時前に戻ってくれば言い訳だ。
尤も、この都留自動車教習所は山の中で、何処かへ遊びに行くとなると他の街にでも出向かないと何もないのだが…。
最悪なのは朝イチの教習の後、次に名前を呼ばれるのが夜の7時のパターン。
一日中ずーっと部屋の中で待ってなきゃならない。
ま、後日教官と仲良くなった早矢仕さんが1号室のみんなのスケジュールを見せてもらっていたので、自分の空き時間が把握出来た事は大いに助かった。
そんなこんなで、クボに洗濯を促されなくとも、俺と早矢仕さんはやる事がなかったので早速洗濯を始める事とした。
衣服を袋から取り出し洗濯機の中に放り込む。
すると、待ってましたとばかりにクボがやって来てこう言った。
「あちゃー、洗濯機二台しかないやん。これじゃワシ洗濯でけへんやん。かなわんなぁー。キブっちゃん、ワシのも洗濯機ん中入れてもらえへん?」
「ああ…、いいスよ」
そう来るだろうなとは思っていたから特に何も感じなかったし、この頃の俺達は家族意識も強かったからみんなで助け合うみたいな美しい精神を持っていた(笑)
なので一緒に洗濯する事に関しては構わなかったのだが…。
だけど、今思い返して見れば、クボは入寮から一週間、パンティを替えたのが二回しかないと言う事実だ。
と言うのもクボが洗濯したのはこの時が初めてだし、洗濯した物がパンティ二枚と靴下二足だったから。
洗濯機が止まり、洗い物を干そうとすると、館内放送で俺と早矢仕さんが名前を呼ばれた。
「洗濯物干してる場合じゃねぇな、キー」
「そうッスね、一発走って来てから干しますか?」
その時、クボが口を開いた。
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