第17話

「おはようさん。今日も朝から爽快やー」


この男、クボタカアキは朝からメチャクチャ元気がいい。

起きていきなり朝御飯をバリバリ食えるのだ。


この日も館内放送で微睡みの中、強制的に叩き起こされた俺達は二月のY県の寒さと相まって、すぐにはベッドから出れずにいた。


だがこのクボだけは違う。

館内放送とともに長門裕之そっくりな目をパチリと開け、ガバッと布団から這い出るや、テーブルの上にあるやかんの水を自分専用の透明のプラコップに注ぐと豪快に飲み干す。


「アーッ!」


起き方までうるさい。 そしてみんなの枕元に行き、こう催促するのだ。


「阿倍野ちゃん、朝御飯の時間やで!?」


「ホラ早っちゃん、朝飯やで!?」


「キブっちゃん、食わんのならワシ食うで!?」


うっせぇなぁ…。

起きて早々メシの話かよ…。

そんなに食いたきゃ一人でさっさとなかたやに食いに行きゃいいものを、こう言う時だけチキンなクボは団体行動を取りたがる。


確かにさっさと起きて朝飯を食いに行かないと、ここの食堂は時間が過ぎると一切飯を出してくれない。

7時15分から40分までの間に行かないと朝飯にありつけないのだ。


だからと行って、俺達は着替えをしたり洗顔したりトイレを済ませてから行きたいのだが、何せクボは寝たまんまの服装で教習に行くから着替える必要はなし。


洗顔も歯磨きもしないから身仕度ゼロなのだ。

ま、せいぜいメガネのレンズにくっさい息をハーッと吹きかけ、着ていた白のトレーナーで拭く位なもんだ。

だからみんなが支度をするのを待てないのだ。



15分後。

ようやく俺達がボーッとした意識の中、なかたやに向かってダラダラと歩いていると、いつものようにクボが言った。


「今日のメニューは何やろか?」


知らんわ!


クボはほんとに食いもんの事しか頭にない。既にみんなは二段階に進んでんだから、さっさと一段階クリアする事でも考えりゃいいのに…。


なかたやに入るとクボはおかずにウインナーが食いたいだの散々文句を言っていたものの、全てペロリと平らげた。


「アーッ!」


そして食堂を出るやいなや、空を見上げてこう言った。


「今日は絶好の洗濯日和やなぁー」





第二の事件の幕開けだった。

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