第15話

「あーっ!  クッキーがなくなってるー!」



翌朝、いきなり早矢仕さんが叫んだ。

昨晩、みんなで阿倍野さんと圭ちゃんの誕生会をした時に買った、丸い缶に入った1つ千円もするクッキーが半分になっていた。


八種類のクッキーが、エアキャップのプッチンシートで二段になってる、ご贈答用の高価なやつ。

残りはみんなでまた暇が出来た時、トランプしながら食べようって言ってたのに…。


「テメェが食ったんだろ? キブ!」


ザキが突然俺に向かって言った。


「食ってねーよ! 食うワケねーだろ!」


「だってオメェ夜中に起きてたじゃん。窓の外見てよぉ、俺がキブ、何やってんだ!? って声掛けたら、寝ぼけてんだかなんだか知んねーけど、ソコにあぐらかいてヤカンの水飲んでたじゃねーか。そん時にでも食ったんだろ!」


「だから食わねーっつってんだろ!」


俺は怒って反論した。


「そんな事言って、みんなが寝静まってからこっそり食ったんじゃねぇの…?」


「お前な、言っていい事と悪い事があんぞ!?」


早矢仕さんが仲裁に入った。


「オイオイいいって、たかがクッキー位。他の部屋のヤツが入って来たって可能性もあんだろ!?」


久保正明も入ってきた。


「せやでキブちゃん。クッキー位で二人とも喧嘩すなや」


「まぁ…、そうッスけど」


「誰もキー君を疑ってないって」


圭ちゃんも入ってきてそう言ってくれた。


「うん…」


「ま、俺はコイツだと思うけどね…」


「ザキ、混ぜっ返すなって」


早矢仕さんの一言でその場は終わったが、身に覚えのない事で疑われて何だかスッキリしなかった。



────────────────────────────────────────────────────────────────


そんな事もあって、俺はその晩中々寝つけずにいた。

既に他のみんなは鼾をかいて爆睡していた。

俺は眠れなくても一応目だけは瞑っていようと、横向きの姿勢になっていた。


すると、俺の背中の方からミシミシと音がする。


(何だろう…)


俺はゆっくりと仰向けに姿勢を起こすと、見知らぬ誰かがベッドの前に立っていた。

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