第8話
「イヤー、しっかし奇遇やなー。まっさか阿倍野ちゃんがワシと同じT大学やなんて!」
この男、クボマサアキは最初から馴れ馴れしかった。
「ワシと阿倍野ちゃん、前世兄弟やったんちゃうん? カッカッカッ」
いくら同じ大学だからって、一応阿倍野さんはクボより二才年上だ。
仲良くなってからならまだしも、イキナリちゃん付け呼ばわりはどうかと思った。
これに対し、阿倍野さんはあまり大きなリアクションは見せなかった。
ノリノリハイテンションのクボと、誰とでもすぐに仲良くなれる早矢仕さんは、当初は非常に気が合ってるように見えた。
「シーハー、シーハー」
クボは歯に挟まった夕食の残飯を指でせせっていた。
後述するが、クボはとんでもない不潔だ。
俺は一緒に寮生活を送る中で、こやつが歯磨きしてるのを見た事がない。
クボはこの部屋に一番最後に来た分際で、とにかくこの部屋の主のように振る舞っていた。
初日の夜の時もそうだった。
「あー、アレな、ワシ真ん中の一番上にしてな?」
みんなで二段ベッドの何処で眠るかを決める時も、一人で勝手に場所を指定して談話室にさっさと消えてしまった。
一応その時はみんなで希望を出し、重複したらジャンケンって決めてたのに…。
「まぁいいや。じゃ、みんなはどうする?」
いつの間にかこの101号室のまとめ役となった早矢仕さんがみんなに訊ねた。
年は阿倍野さんが一番上だが、この人はあまり前に出たがらないので、必然早矢仕さんがリーダーの座に就いた。
俺とザキと圭ちゃんは最年少だし、あとはクボしかいないから…。
結局ベッドの割り振りは、部屋の扉を開けて手前から俺が下、ザキが上。
真ん中の下が早矢仕さんで上がクボ。
一番奥の窓際の上が圭ちゃんで下が阿倍野さんとなったが、クボはいっつも決め事の時になると談話室でテレビを観ていた。
そして必ず
「アーッ!」
と言いながら談話室にあるカップラーメンの自販機で、カップヌードルを食べていた。
そのスープを飲み干す音が、いつも廊下に響いていた。
「アーッ!」
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