第2話 ユウトと少年の出会い
ユウトは自分の今の状況が分からず、困惑した。とりあえず、覚えている限り頭の中を整理することにした。(部活帰りに道端で猫を拾ってそれからその猫の飼い主と話をしたよな。その後に…そうだよ。猫が車に轢かれそうになったところを俺が助け…あれ?俺、もしかして死んだ?ここは死後の世界?そうだとしたら、なんか思ったより楽しめそう?!)そして、ポジティブにも考えることにしたユウト。服装が病服から和服に変わっていることに気付いた。上下共に漆黒の色、麻の素材で軽く動きやすい服であった。立ち止まっていても仕方がなかったので、森の中を散歩することにした。歩いていると時折、木漏れ日の光が差し木々の間からは空が薄っすら見え、学校の友達や家族を思い出す。彼らもこの空の下で今も過ごしているのだろうかと。鳥の鳴き声が耳に入ってきて、その思いふけっているユウトを覚まさせる。そして遠くから滝の音が微かに聞こえてることに気が付いた。その方向に歩みを進めることにした。しばらく歩いていくと滝が見え、そこの脇には小さな箱型のボロ小屋が一軒あった。小屋の前まで行き「すみませーん、誰かいますか?」と声を掛けてみたが誰もいないようだった。入り口は引き戸で、手をかけてみると少し開いた。中を覗いてみると以前に人が住んでいた雰囲気を感じさせた。小屋の中にはサバイバルナイフ一本、薪割り斧一本、薪が数本、藁でできた寝床、竹で作られた水入れ、木の桶、火を焚く四角い炉があった。しかし今は空き小屋である感じでもあった。ここで一夜を過ごそうと決めたところで、お腹が空いてきた。幸いにも川が近くに流れているので魚を捕まえることにした。森の中で魚を捕まえる木を調達することにして長めの木を見つけた。その道中に食べれそうな木の実も手に入れた。木の先をナイフで削り木製のやりのようなものを一本作って、それで魚を捕まえようと試みた。川では魚が気持ちよさそうにスイスイと泳いでいる。自家製のやりを突き刺し魚を二匹捕まえ、水も少し飲んだところ意外と美味しい、竹の入れ物に水を汲み小屋に戻った。もうその頃には日が沈み始め空は薄暗く星も見え始めていた。火を起こすために薪の破片を使い木くずをすり潰すように火を起こした。時間は掛ったが何とか火を起こせた。(川で捕った魚を焼き串をどうするか?)、空腹は満腹とはいかないものの抑えることはでき、眠くなってきた。藁でできた寝床であろう所に寝そべり、気付かないうちにユウトはぐっすり寝ていた。
翌朝。
ユウトは起き上がり、日の光と水を浴びに外に出た。朝日の光は気持ちよく風も心地いいくらいに流れていた。水の中は昨日と比べ少し冷たく飲むのには適しているように思えるが、浴びるのには少し冷たいように思えた。水浴びを終え、森の中を散策することにした。ユウトは川の流れに沿って歩みを進めることにした。歩いていると川の水を飲みに来ている動物たちを見ることが多かった。鹿、兎、時には熊などもいた。そんな風に周りを見渡しているとリンゴの木を発見した。3つ取り一個はかじりながらまた、川に沿って歩き始める。鹿が水を飲んでいると結斗に気が付き、近づいてきた。どうやらお腹を空かせているようでリンゴが欲しいらしい。一つ差し出すと美味しそうに食べる。その姿が可愛くてもう一個のリンゴも上げることにした。鹿の頭を撫でたあと、歩みを先へと進めるとその鹿が後をつけてくる。どうやらユウトに懐いてしまったらしい。そんなことも合って一緒に先へ進んで行くと遠くには結斗が一夜を過ごした小屋とは違って綺麗な小屋が見え、その小屋の近くには木刀のような物で素振りをしている角刈りの少年がいた。ここに来て初めて人の人間だ。心の底から嬉しく思い猛ダッシュで小屋の方へ行った。そして少年に声を掛けた。「こんにちは。昼間から素振りですか?頑張っていますね。」少年は素振りをするのを止めて、ユウトの言葉に次のように返した。「僕、熊をこの木刀で倒すの」ユウトは少年の言葉に驚いた。「熊を倒して食べるのか?熊って美味しいのか?」少年は呆れた顔をして「違うよ、父さんの仇だよ。一週間前に父さんと一緒に川で魚を捕まえていたら突然熊が出てきて、僕を逃がすために父さんは熊と戦った。父さんは家に帰って来たけど重傷で、多量出血をしていたから数時間後にはもう…」話を聞いたユウトは悲しい顔になりそっと少年を抱きしめてこう言った。「俺もお前の父ちゃんの仇を討つ手伝いをしてやる。一人じゃ危ないから」その言葉を聞いた少年は泣きながら「お兄ちゃん、ありがとう」と答えた。
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