間話 夜の語り部、酒場の声 2

 ここはラビスの冒険者組合ギルドに併設された酒場。


 窓際のテーブル席にスキンヘッドの強面の男と痩せた人相の悪い男が酒を飲み交わしている。


「おう、最近街をへんちくりんな格好をした男がうろついてるらしいぜ?」


「あん?そういえば、道具屋のババァに全身黒いローブ姿の奴が話しかけてたな」


「そうそう、そいつだ。やたらタッパのあるやつらしくてよ」


「ああ、かなりデカかったな。そいつがどうしたんだ?」


「どうも街のこととか、迷宮ダンジョンのことを聞き回ってるらしいぜ?」


「ほーん。まあこの街もどんどん有名になってデカくなってるからな。色んなやつがいんだろ」


「だな。そういえば色んなやつで思い出したんだけどよ」


「あん?」


「あの二属性使いツヴァイいただろ?」


「ああ、あのモテ男な」


「ちょっと前に組合ギルドの前でよ。例の二人組と抱き合っていちゃついてたらしいぞ?」


「ああん?ハーレム野郎がよ。羨ましくなんてないぞ」


「おい!その話、詳しく話せや」


「「ああん?」」


 強面の男と人相の悪い男は会話に突然入ってきた声のほうを振り向く。冒険者風の動きやすい格好をした金髪ロングの絶世の美女が隣の席に座っていた。


「おう、えれぇ別嬪さんじゃねぇか」


「ああ、こりゃたまげたぜ」


「てめえらの世辞なんていいんだよ。さっきのハーレム野郎の話だ」


「おう、それがどうした?」


「どんなやつだ?」


「ああ、ここらじゃ珍しい灰色の髪をしたガキだよ」


「灰色の髪ねぇ。そいつは今どこにいんだ?」


「知らねえよ。さっきの話もそうだな、一ヶ月くらい前の話だ」


「たしかに最近見ねえな」


「一緒にいた二人組も最近はみねえ。ちょっと前までかなりの量のアイテムを組合ギルドに持ち込んで荒稼ぎしてたって話は聞いたがな」


「ああ、それは俺様も聞いたな」


「ほう、迷宮ダンジョンのアイテムを大量にねぇ」


「それより嬢ちゃんよお」


「あん?」


「今夜、俺たちとどうよ?」


「はん!鏡でてめえのツラをちゃんと見てから言え」


 美女は席を立ち、そそくさと酒場を出ていく。


「..女はこえーな」


「..ちげぇねぇ」



 ラビスの夜は更けていく。

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