第19話 冒険者登録

 いやー、さっきは本気で驚いた。僕はラビスに到着してすぐに冒険者組合に来たわけだけどそこでまさかのテンプレ展開が繰り広げられていた。

 僕に対してじゃないのが少し残念だが、颯爽と絡まれていた少年を助けたわけだ。

 

 驚いたのはここからでその少年を何となく長年の観察の日々で覚えた【鑑定眼】で鑑定してみると、理不尽女神の加護を技能スキルとして習得してた。

 加護を技能スキルにとかいつの間にって感じだ。効果は分からないけどあとでウォーラ様を問い詰める案件である。


 ということであの少年は大丈夫だろう。勢いで鍛錬服あげちゃったけど、ぜひ頑張ってビックになって欲しいものだ。


 さて、気持ちを切り替えてここが冒険者組合ギルドか。僕は世界を旅するに際し、折角なので冒険者に登録しておこうと思ったのだ。

 冒険者になり、仲間を集め、世界を旅する。控えめに言って最高です。


 ということで早速、受付に向かう前に僕は準備をする必要がある。


(状態表ステータス)


ーーーーーーーーーーーー

ログ

種族:半神

階位:十一

身体能力:

STR:B VIT:A AGI:B INT:A

神術:

水 氷 火 風 土 雷 命 無

技能:

アクティブ

念話 鑑定眼 偽装

パッシブ

剣術 双剣術 大剣術 槍術 斧術

体術 絵画 毒耐性 麻痺耐性

ーーーーーーーーーーーー


 冒険者登録の際には自分の状態表ステータスを見せる必要がある。どの程度の実力があるのかを登録の段階で判断するためだ。

 なので僕のこの人外に足を踏み入れてしまった力を技能スキル【偽装】で隠す必要がある。冒険者には登録するつもりだったので予めテチノロギス様に作っておいてもらった。


 この数十年、僕は年を取ることがなかった。おかしいと思っていたらこれである。種族がいつの間にか『半神』になっていた。事実、僕は人を辞めてしまっていたらしい。

 

 これについてはこの時代に来て最初の頃に遡る。クレディオス様に神力を与えられた時だ。

 あの時すでにクレディオス様の手により、僕は魔改造されていたらしい。時よりクロニア様がため息を吐いていた理由はこれだった。

 

 ただ、素直に感謝しかない。不老の体、最高である。何より魔神達と僕自身が直接戦うことが出来る。僕が元いた時代、最後に襲われたあの悪魔。あいつも必ずこの世界に来るはずだ。その時は感謝の一撃を叩き込む所存である。




 僕は状態表ステータスに【偽装】を施し、受付に向かった。


「こんにちわ。冒険者登録にきたのですが」


 特に順番を待っている人はいなかったので受付の男性に話しかける。


「いらっしゃいませ。ご登録ですね。ではこちらを。ちなみにご年齢は15歳以上になられてらっしゃいますよね?」


「あ、若く見えます?僕は19ですよ」


 受付の男性が木札のようなもの差し出しながら年齢を聞いてくる。冒険者登録には年齢制限があり、15歳から可能になっているからだ。僕は実際アラフォーだが、見た目はこの時代に来た時と変わってないので19歳と答えるようにした。


「ありがとうございます。お若く見えましたので念の為でした。失礼しました」


「いえいえ。お気になさらず」


「次に状態表ステータスを私に見えるように出してもらってもよろしいでしょうか?これから登録のための試験を行いますが、まずは最低限の実力があるかを確認させて頂きます」


「はい、どうぞ」


 僕は状態表ステータスを受付の男性のみに見えるように目の前に表示させる。


ーーーーーーーーーーーー

ログ

種族:人族

階位:四

身体能力:

STR:D VIT:C AGI:D INT:C

神術:

水 命

技能:

アクティブ


パッシブ

剣術 双剣術 体術

ーーーーーーーーーーーー


「..四階位のツ、二属性持ちツヴァイ


 受付の男性が小さな声で呟く。


「何か問題ありました?」


「い、いえ。失礼しました。お名前はログさんですね。特に問題ございません。本当はこのあとに戦いの実力を少し見させて頂くために試験官と軽い模擬戦を行って頂く必要があるんですが、ログさんの能力的にその必要はなさそうです」


「え?問題あるじゃないですか。僕は模擬戦やりたいんですけど」


 ちょっとー。問題ありありですよ。

 試験官との熱い戦い。屈強な元冒険者試験官を倒してしまい、何者だあいつは?と周囲で観察していた冒険者諸君の注目を集める。

 これが冒険者になる時の胸熱パターンでしょうよ。


「い、いえ。ログさんはすでに迷宮で十分に通用する能力をお持ちです。というか中堅以上の冒険者の方々と同等の能力を持ってます。模擬戦など必要ないですよ..」


 えぇ..これじゃあ、おれ何かやっちゃいました?系じゃないか。それは求めてない。この能力で中堅以上って。

 僕は迷宮調整時に迷宮へ挑戦していた人族の皆さんの能力をちゃんと参考にしたんだけど。

 ..あ、迷宮内を十分に探索できる実力だからそれはすでに実力者なのか。迷宮内基準で偽装を調整してしまった..うん、僕やっちゃったよ。


「ということでその木札は必要ないですね。冒険者証を発行してくるので少々お待ちください」


 そう言って受付の男性は受付の奥の部屋に入っていってしまった。



***



 さて、気を取り直して僕は今、依頼掲示板の前に立っている。

 鉄製のドックタグのような冒険者証を受け取り、晴れて冒険者になった僕はどんな依頼があるのか確認するために掲示板を見に来たわけだ。


 冒険者組合の役割は、冒険者の登録、アイテムの買取、アイテム収集の依頼が主なところ。商店へのコネクションがない冒険者のための買取代行、冒険者への依頼の斡旋が主な収入源となっている。


 僕の場合は、ただ迷宮ダンジョン探索をしてもしょうがないので基本は依頼を受けて迷宮ダンジョンに入るようにしようと考えたわけだ。

 人族とのコネクションを築いていくよい手立てである。


 早速、掲示板に貼ってある依頼を確認する。


 『小鬼ゴブリンの鉄製アイテムの納品求む!1アイテムにつき 10,000G』

 『粘魔スライムの治癒薬の納品求む! 1アイテムにつき 5,000G 高治癒薬は応相談』

 『牛頭鬼ミノタウロスの斧の納品求む! 200,000G』


「ふむ」


 まずい。まっったくお金の価値がわからん。1Gがどの程度の価値なのか。


「あの」


 これは一度、街中に戻ってお金の価値をちゃんと把握する必要があるか?


「あのー..」


 そもそも「G」ってなんだよ。ゴールド?


「あの!!」

「うおぁ!?」


 突然、背後で大声が上がり、僕はびっくりしてしまった。何事かと振り向くと、


「あ、ごめんなさい。中々気付いてくれないから」

「・・・」


「お、おおぅ?」


 そこには僕と(見た目が)同年代くらいのプラチナブロンドの髪を肩まで伸ばした美少女と黒に見えるほどの暗い藍色、勝色の髪を腰近くまで伸ばした美少女が立っていた。

 二人の碧眼の瞳がじっと僕を見つめてくる。


「え..っと。僕に何か用事?」


「うん。君、さっき冒険者になったばかりだよね?たまたま登録してるとこを見かけて」

「・・・」


 こ、これは?もしや。


「いきなりで怪しいかもだけど、私たちとパーティ組まない?」

「・・・」


 キター!美少女からのパーティの誘い!待て待て。冷静に冷静に。憧れのシチュエーションに心が躍り、興奮が顔と行動に出てしまいそうになるがグッと堪えてクールに務める。


「いきなりだね。どうして僕と?」


「私たちも先日、冒険者になったばかりなんだけど」

「・・・」


 さっきから金髪の子の後ろに隠れてこっちを無言でじーっと僕を見てくる勝色の子が気になってしょうがないんだけど一旦無視だ。


「知り合いのパーティを追い出されちゃって..」

「・・・」


「な、なんか訳ありそうだね。あ、あそこに座れる所あるからそこで聞くよ」


 近くに運よくテーブル席を見つけたのでそこでゆっくり話を聞くことにした。  




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

TIPS:身体能力の目安

S・・神級

A・・超越者

B・・世界屈指

C・・強者

D・・一般

E・・貧弱

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