第20話 不思議な二人

 僕たちはテーブル席に着き、向かい合う形で腰を落ち着かせる。


「自己紹介からしてもいいかな?」


「あ!そうだったね」

「・・・」


「僕はログ、知っての通り、いまさっき冒険者になったばかりなんだ」


「ログさんね、私はルー。それでこの子は」

「..ラトリ..」


 おお、喋ってくれたと思ったら簡潔。またすんごいじーっと僕を見てるくんですど。


「ラ、ラトリはすごい人見知りなの」


「そ、そうなんだね。ラトリさん、無理しなくていいよ」


 僕は笑顔でフォローを入れる。人見知りなら初対面の人と話すのは辛かろう。


「..ん」


 ラトリさんは頷いて反応してくれた。


「二人はこの街出身の子?」


 さっきの話は気になるけどまずは交流を深めようじゃないか。


「うん。私たちは孤児院出身で幼馴染なの」


 孤児院か。神官達が各街で営んでるのは知ってる。手っ取り早く自立するために冒険者になったってところかな?


「私たちももう17歳だし、神官様のお手伝いで孤児院の子達の面倒をみてたんだけどそろそろちゃんと自立しようって二人で話してて」


「そっか。それで冒険者に?」


「うん。冒険者はすごい稼げるって聞いてたから」


 まあ、その分危険もあるんだけどね。


「ログさんはこの街の人?」


「違うよ。僕は旅をしててね。今日、この街に来た所なんだ」


「旅の人なんだ。私たちと変わらなそうな年なのになんかすごいね」


「そう?目的もなくブラブラしてるだけ。気楽なもんだよ」


 さすがにさっきまで神様達のところにいた引き篭もりですとは言えない。


「それなのに何で冒険者になったの?」


「そりゃ浪漫だからね!」


「そ、そうなの?でも何でこの街で?」


 う、ちょっと勢いで答えてしまって引かれたか?しかもたしかに何でわざわざこの街でって話だよな。


「そ、そりゃあ、冒険者になるならこの迷宮街でしょう」


「そんなもの?」


「うん。そんなもんだよ」

「・・・」


 ラトリさん!ジーッと無言で見ないで!嘘はついてないから。わ、話題を変えるしかない!


「そうだ。さっきの話だけど、パーティ追い出されたって言ってたよね?」


 逃げのためにさっきの話を切り出した瞬間に二人の顔が曇り、シュンと俯いてしまった。


「私たち、冒険者になって運よくパーティにすぐ誘ってもらえて」


「うんうん」


「昨日、初めて迷宮ダンジョンに入ったんだけど、私が失敗ばかりしちゃって」


「うん」


「使えないからパーティから出てってくれって。ラトリは私と一緒じゃないなら居てもしょうがないって言ってくれて一緒にパーティを抜けてくれたの」


「..私は最初からあいつらのこと嫌い。やらしい目で私達を見てきてた」


「ざまぁする?手伝うよ?」


 まったくけしからん。こんないたいけな少女達に下卑た視線を向けるとは。

 それでラトリさんは僕のことをずっと監視してるわけね。でも安心してほしい。二人ともかなりの美少女だけど、こちとら世界の五大美神を相手に美女耐性はカンストしてるのだ。大人の余裕が滲み出てるはずだよ。


「ざまぁ?よくわからないけど手伝ってくれるならパーティを組んでほしいかな?」


「僕としては構わないけど何で僕?」


 ルーさんはパーティを組んでほしいらしい。僕としても仲間がほしかったので構わないけど理由は気になる。


「んー。年も同じくらいだし、なんというかギラギラしてないからかな?」


「..地味で安心」


「直球は人を傷つけることを覚えようね?」


 軽く傷つきつつも、安心感のある印象ってことで納得しとこう。


「まあ、僕も仲間募集しようと思ってたし。いいよ、パーティ組もうか」


「ほんと!ありがとう!」


「..ん」


 ルーさんはパァっと笑顔になる。ラトリさん的にもひとまず僕は合格らしい。


「パーティになることだし、お互いの状態表ステータスを開示しとかない?」


「そうだね。お互いの能力は把握しておいたほうがいいよね!」


「ん」


 ということで早速僕は二人に状態表ステータスを見えるように開示する。もちろん偽装バージョンでだ。


「よ、四階位..」

二属性持ちツヴァイ..」


 二人は僕の状態表ステータスを見て、息をのみながら呟いた。やはりかなり強者な部類みたいだな。


「ろ、ログさんは冒険者になったばかりだよね?」


「そうだよ。ただ、旅をしてたからね。そこそこ強さに自信はある」


「そこそこ所じゃない。これは勝ち組」


 ラトリちゃん?なかなか現実主義なのね。だいぶ流暢にお喋り出来るようになっておじさんは嬉しいよ。


「二人の状態表ステータスも見せてもらってもいい?」


「もちろん!」

「ん」


 そう言って二人が状態表ステータスを見せてくれた。


ーーーーーーーーーーーー

ルー

種族:人族

階位:二

身体能力:

STR:D VIT:E AGI:D INT:D

神術:


技能:

アクティブ


パッシブ

光の因子

ーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーーー

ラトリ

種族:人族

階位:二

身体能力:

STR:E VIT:E AGI:E INT:C

神術:

技能:

アクティブ


パッシブ

闇の因子

ーーーーーーーーーーーー


 ・・・もうさ。これはショタ神事案かな?なんだよ、この謎技能スキルは。しかも二人とも対になるようなものを持ってるね。人の街に来て初日からこうも神々の思惑に遭遇することってあるかね?偶然じゃないでしょ、これ。


 僕はあとで必ずやつらを問い詰めることを心に決めた。


「ふ、二人とも不思議な技能スキルを持ってるんだ?」


「そうなんだよね。でもこれ、私たちもわからないの。特に何も効果を感じないし」


「気付いたら持ってた」


「そうなんだ。まあ、そのうち何かわかるでしょ」


 うん。僕にもさっぱりわかりません。これについては一旦無視しよう。


「ひとまず、迷宮ダンジョンに行ってみますか」


「お、お願いします!」


「よろしく」


 まずはパーティ結成記念ということで迷宮に行くとしよう。依頼表は後日だな。まずはこのパーティで何が出来るのか、お試しだ。ちょっとワクワクしてきたぞ。

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