第6話 ステータス
能力の可視化、いわゆる
自分の能力を可視化することで自身の能力を明確に把握し効率的な成長を図れるようにする。視覚化されると成長意欲も刺激されるし。これは何て伝えればいいもんか。
「えーっと。僕の世界の遊戯では自分の能力、身体能力とかを可視化出来るようにしてたんです。この仕組みを取り入れたいんですが..」
「「「..?」」」
ですよねー。まずい。自分でも何言ってるか意味不明なくらいどう伝えていいかわからん..んー。あ!
「クレディオス様!何か絵とか文字を書けるものはありませんか?」
「ん?それならあるよ」
クレディオス様はそういうとまた件の指パッチンをした。すると横の長さが2mくらいの長方形の黒い石板のようなものが自立した状態で出現し、白いチョークが添えられている。うん、まさに黒板だね。
続けて顎を上げながらクレディオス様がドヤ顔でこちらを見やってきた。クソ!なんて腹たつ顔!何なんだ、この力。ほんと気になる!絶対聞かないからな!
「い、いい感じですね!こ、これならちゃんと説明出来そうです」
「ふむ。中々の忍耐力だね」
なんとかポーカーフェイスでそう返した僕にクレディオス様は残念そうに呟いた。
「ボスは相変わらずよくわかんねーもん色々溜め込んでんなぁ。どこで見つけてきてんだ、こんなもん」
そこにウォーラ様からネタバレギリギリの発言が飛び出す。
ほう。この場で作ってるわけではなくて「溜め込んでいる」とな。ふ、ここまでわかれば僕にとってはある程度パターンを想像出来てしまったよ。自然と口角を上げて笑みが溢れる。
「ちょっとぉ、ウォーラ〜。そういうのはいけないとボクは思うなー。もうー」
クレディオス様も僕にヒントを与えてしまったことに気づき、悔しそうにウォーラ様に注意している。
「あん?何言ってんだ?」
「ウォーラ、気にしなくていいわ。この人達、さっきからくだらない意地の張り合いをしてるのよ」
「「くっ!」」
「そうなのか?よくわかんねーけど大して面白くなさそうだから早く話を続けてくれや」
「「がっ!」」
僕とクレディオス様は二人揃って心にダメージを負う。煽ってきたクレディオス様だけならまだしもなぜ僕まで巻き込まれないといけないのか。と、とにかく気を取り直して説明を続けようじゃないか。
僕は黒板に絵を描きながらまさにゲームのように視界にウィンドウのようなものを表示して自身の能力を見る事が出来るようにしたいこと。
身体能力は、アルファベットのような文字で項目別に強度を表現するのがいいのではと考えていた。腕力、耐久、俊敏、神力との親和性みたいな感じだ。これも鉄板だね。下からE → D → C → B → A → Sの順で表す。
絵で描きながら説明したので神様達もばっちり理解してくれたよ。
「なるほどね。これはわかりやすくていいね。自分の成長を確認できる仕組みになってるわけだね」
「階位の表記はいいけれど、身体能力の強度の設定が気になるわね。目安を定める必要があるんじゃない?」
課題もすぐに理解してくれた。そうなんだよな。どうやって目安を定めるか。
「そうなんですよ。そこはどうしようかと僕も悩んでいまして」
「お?そんなの簡単だぜ。いろんな奴の強度を見比べて定めりゃいいんだろ?」
「そうなんですけど、結構な数が必要だと思うんですよ」
「私に任せとけ!」
お!ウォーラ様が何とかしてくれるらしい!これはちょっと脳筋タイプなのではと思っていたことを反省せねばならないかもしれない。
***
僕たちは今、外に来ている。僕はいままで神殿のような建物の中にいたようだ。初めて外観を見るけど見事な建造物だった。まさに神殿。
神殿の入口付近に立ちながら前を見ると神殿前の広場に100人以上の人族が集められている。どこから連れて来られたのか、その人達は綺麗に整列をさせられ、その前にはウォーラ様が腕を組みながら仁王立ちをしている。
「クレディオス様、あの人達は一体..?」
「あの子達はこの神殿の一番近くの街に住んでいる神官達だね。ウォーラが神託を使って呼び寄せたんじゃないかな」
な、なるほど。神託なんて事も出来るのか。そりゃ神様だもんね。ウォーラ様は整列した神官の皆さんに笑顔で号令をかける。
「よーーーし!傾聴ーー!」
どこぞの軍隊のような語り出しだな。
「これからお前らには一人づつ前に出てきてもらい本気で私を殴ってもらう。そしたら今度は私が殴るから耐えろ」
圧倒的理不尽。神官の皆さんが突然の事に困惑の表情を浮かべてるじゃないか。
「よぉーし!じゃあ端のお前からだ!さぁこい!!」
ウォーラ様は両手を広げ、腰を落として顔を前に差し出すように待ち構えているが明らかに指名された人は腰が引けてる。
「う、うああぁぁ!!」
ペチ!!
「「…」」
叫び声と共にウォーラ様を殴り付けた神官の一人。いかんせん腰が引けてるんだ。パンチに力が乗るわけがない。ウォーラ様の頬を殴り付けるも可愛い音がなったね。
何とも気まずい雰囲気にいま周囲は無言に包まれている。
「全力で殴れと言っただろうがぁ!!」
ウォーラ様の手がブレて見えなくなった瞬間にはゴッという鈍い音を立てて、神官は殴り飛ばされていた。ザァァ!と音を立てて5mほど先の地面に倒れ込む神官。
「ふむ。なるほどな!」
なるほどなじゃねーよ。自分が殴り飛ばした神官をまざまざと見ながらそう口にするウォーラ様。
「クレディオス様。あの神官は無事なんでしょうか?」
「そうだね。ウォーラは武の女神だ。そこらへんの加減とかは大丈夫だと思うよ。気絶しているだけのようだし」
「気絶するのも大概ですけどね。これ、ちゃんとあの人達に見返りとか用意してあげるんですよね?」
「いや、彼らにとってはウォーラに殴られることがご褒美なのかもしれない。よく見てみて。あの子、満足そうな顔で気絶しているよ」
クレディオス様にそう言われた僕は倒れている神官をよく見てみる。
うん、すごい笑顔で白目剥いてるね。この瞬間、僕は彼らの心配をすることをやめた。
..結論から話すとウォーラ様が取った方法は非常に、非常に理にかなっていた。
理不尽な100人組手の中で、殴られる事で相手の腕力を測り、殴ることで耐久を、身のこなしを見て俊敏をといった具合に個性を測っていった。
僕が神力との親和性、所謂力を引き出す、操作するといった意味合いで考えた項目についてはクレディオス様協力のもと、少ない神力を一時的に神官達に分け与えることで測った。
ウォーラ様的にはまだまだサンプル数が少ないということで『
ウォーラ様が最強と自負している自分の身体能力を頂点とした考え方で強度を設定し、それをクレディオス様の力で視覚化する。
(
僕は心の中でトリガーワードとして設定したワーディングを思い浮かべる。
すると僕の目の前にはゲームでも慣れ親しんだ半透明のウィンドウが浮かび上がる。この時点で僕のテンションは引き続き鰻登りである。
「おおお!これ、これです!イメージ通り!」
僕は目の前に現れた
プライバシー保護は大事だ。早速表示されている内容も確認しよう!
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ログ
種族:人族
階位:十
身体能力:
STR:E VIT:E AGI:E INT:B
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ん?なんか表記におかしいところがあるね?
僕は首を傾げながら
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